釣った小魚は氷締めにして持ち帰ろう

サビキ釣りはファミリーフィッシングの王道。サビキ釣りを楽しむ人のほとんどは「釣った魚を食べる」という目的で釣りをしているはず。

家族でワイワイ釣りを楽しんで、持ち帰った魚を家で料理して食べるまでがセットになったレジャーといえます。素晴らしい趣味ですね。みんなやったらいいのに。

さて、持ち帰って食べるのなら、できるだけ美味しく食べられるようにしっかり鮮度を保ったまま保存して持ち帰りたいですよね。

そこでサビキでよく釣れる20センチ前後ぐらいの小魚について、最適な保存方法と持ち帰り方を紹介します。

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小魚は氷締めをして持ち帰るのがベスト

魚を締めるということ

釣り初心者であっても「魚を締める」という言葉は聞いたことがあるんじゃないでしょうか?

魚を締めるということは、魚を美味しく食べるために何らかの方法で絶命させる、平たく言えば殺すことを指します。魚を釣ったあとまず最初にやるべきことは、釣ったその人の手で魚の命を奪うこと。残酷ですが、魚を食べるための釣りはそういう趣味ということを理解しそして覚悟しましょう。

グルメ番組などで魚の尾っぽや頭付近に刃物を刺して血を出す光景を見たことがあるかもしれません。大物はそんな感じで血抜きをしたり延髄や脳を破壊するなどして締めることがあります。神経締めというものずいぶんと一般的なものになりました。

小魚はごく冷たい海水で氷締めをする

一方でじゃんじゃん数が釣れる小魚に対して一匹ずつそんな手間はかけられません。

ではどうするかというと、氷で冷やした冷たい海水に漬けることで魚の動きを止めて締める方法が一般的です。これを「氷締め」といいます。そしてその冷たい海水のことを「潮氷」といいます。

凍らせたペットボトル氷で氷締めされたマイワシ
凍らせたペットボトル氷で氷締めされたマイワシ

ちなみにさらっと「潮氷」と書きましたが、これを”しおごおり”と読むのか”ちょうひょう”とでも読むのか実は知りません。各々好きに読めばいいと思います。私は心のなかでしおごおりと読んでいます。

この潮氷を作るため、氷締めをするためには、いくつかのアイテムが必要となります。

氷締めをするために必要なアイテム

氷締めをするために必要なアイテムは以下の通り。

氷締めをするために必要なアイテム
  • クーラーボックス
  • 氷や保冷材
  • その場で汲んだ海水
  • 海水を汲むためのバケツなど

ひとつずつ補足していきます。

15リットル程度のクーラーボックス

潮氷を作るためには、氷温に近い環境を作りそしてその環境を保つためにクーラーボックスは必須になります。ソフトタイプのクーラーや保冷バッグでは海水が漏れてしまうのでおすすめできません。

サビキという釣りはタイミングがいいと無限に釣れ続けるのではと思うほどたくさん魚が釣れる釣り。経験上10リットルのクーラーがいっぱいになる小魚の量だとひと家族で処理できる限界に達してしまいます。料理するほうも食べるほうも。

なんせ小魚の処理は手間がかかるし、食べるほうの胃袋にも限界がある。

よってサビキ釣りを中心にしたファミリーフィッシングには、あまり大きなクーラーボックスは必要ありません。

目安として15リットル程度のクーラーボックスがあればじゅうぶんに事足ります。

15リットルあれば氷を入れていても500ミリのペットボトルが数本入るほどの余裕があります。夏場など、出発時に飲み物や食材なども入れられて便利です。小魚しか釣らないのに15リットルは大き過ぎるかなと思っても無駄にはなりませんし、BBQなどその他のレジャーに使うにも最適なサイズです。

おすすめの15リットルクーラーボックスはこちらで紹介しています。

海水を冷やして潮氷を作るための氷

潮氷を作るためにはもちろん氷が必要。まず候補に挙がるのは角ばった板氷。

だいたい2kg200円ぐらいでしょうか。もちろん釣具屋で売ってますし、酒屋やコンビニなんかにも置いてあります。板氷は表面積が小さいので溶けにくく長持ちします。

一方でドリンクに入れるような細かな粒状の氷もありますが、こちらは表面積が大きいせいで長持ちせず溶けてしまいます。急激に冷やすのには向いていますが、クーラーボックスの保冷剤としてはあまりおすすめしません。

水を入れたペットボトルを凍らせたものでもOK

とはいえ釣りにいくたびに板氷を買うのはもったいないです。

だからペットボトルに水道水を入れて凍らせたものでOK。板氷にはかないませんが粒状の氷よりはうんと長持ちします。

ミネラルウォーターが入っていた2リットルのペットボトルを凍らせたもの

クーラーの保冷性能にもよりますが、ミネラルウォーターが入っているような2リットルのペットボトルなら凍らせたものが1本あれば夏場でも半日程度は溶け切らずにに持ちます。500ミリのペットボトルでも数本あれば事足ります。

ペットボトルの中の氷が溶けて水になったら中身を捨てるだけ。ペットボトル自体も汚れたら捨てられる。水道水を入れているなら最悪の状況になっても飲むことができる。

その他、パックに入った保冷材も同じように使えますが、中にはマイナス10度以下で凍るような強力な保冷材もあります。

それを使った場合は魚の身まで凍ってしまい、かえって悪影響を与える恐れがあります。直接触れないように気をつけるか、もしくは0度付近で凍る一般的なタイプの保冷材を選ぶようにしましょう。

潮氷を作るための海水と水汲みバケツ

潮氷を作るためには塩分を含んだ海水が必要です。

これは釣り場で汲んだ海水をクーラーにいれるだけです。

あまり水が綺麗でない釣り場だと抵抗があるかもしれませんが、持って帰ろうとしている魚もその水の中で生きていたわけです。

それでも気になるなら、あまりおすすめしませんが自宅で海水の塩分濃度程度の塩水を作っておいてもいいでしょう。でもどうせ魚を入れていくうちに汚れますし、塩素が魚の風味を変えてしまう可能性も排除できません。

海釣り公園なんかだとポンプで海水を汲む設備があって自由に使える場合がありますが、基本は自分で汲んだ海水を使います。そのため水汲みバケツは必須。潮氷を作る以外にも水汲みバケツは多方面で活躍しますので、必ず用意するようにしましょう。

水くみバケツは初心者でも必ず持っていってほしいアイテムです。

冷やした海水で小魚を氷締めする手順

では具体的にどうやって氷締めをするか順を追ってみていきましょう。といっても、潮氷を作って魚を放り込むだけです。

氷締めをする手順
  1. 釣りを始める前に氷を入れたクーラーボックスに海水を入れて潮氷を作る
  2. 釣れた小魚を潮氷へ放り込む

釣り場に着いたらまず潮氷を作ろう

釣り場に着いたら仕掛けを用意するより先に潮氷を作っておきましょう。これにより最初の一匹が釣れたらすぐに氷締めすることができます。

潮氷なんて言葉は大げさに聞こえますが、作り方はごく簡単です。

水汲みバケツで海水を汲んで、氷の入ったクーラーにジョボジョボと注ぐ。分量は氷がひたひたになるぐらいで。たったこれだけです。30分も経てばキンキンに冷えていることでしょう。魚が増えて水が足りなくなったらちょっとずつつぎ足しましょう。

しかし、せっかく潮氷を準備したのに一匹も魚が釣れない、ボウズということも当然有り得ます。その場合は全く無駄な準備だった、クーラーを海水で汚しただけだったと落胆しますが、そういう日もあるさと割り切りましょう。

釣れた小魚はそ生きたままま潮氷の中に入れる

サビキならシーズンと場所さえ合えば何かしらの魚が高確率で釣れると思います。

釣れた魚は生きたまま即時クーラーボックス内の潮氷へ放り込みましょう。いちいちビニールに小分けする人もいますが、そんな必要はありません。クーラーボックス内の潮氷へダイレクトイン。

最初はクーラーの中でピチピチは跳ねていた魚も次第に動きが緩慢になって絶命します。残酷かもしれませんがこれでいいのです。都合のいい考えかもしれませんが、命を奪うのであれば美味しく食べてやったほうがいい。

自分の手で死なせるなんて残酷。かわいそう。そうかもしれませんね。でもあなたがふだん食べている食材も誰かが同じような処理をしてくれているのです。牛も豚も鶏も誰かが手を下しています。今度はあなたの番。命に感謝していただきましょう。

よくある氷締めの説明として「潮氷に入れて即死させる」という表現をされている場合があります。しかし即死といっても潮氷に入れて瞬時に動かなくなるわけではありません。魚はそんなに弱くない。しばらくビチビチと跳ねたのち、徐々に動きが鈍くなって死に至ります。

小魚には刃物をいれて締める必要はない

小さな魚でも首を折ってから潮氷に入れたり、あるいは後頭部に刃物を入れて延髄を切断してから潮氷に入れる人もいます。でも私の個人的な経験から言うと、釣れたそのままを潮氷に入れるだけで十分です。むしろ魚の身に傷をつけちゃうと断面が水や空気に触れてそこから早く傷む可能性があります。

私の場合、アジサバなどの青魚であれば25センチを超えたぐらいの大きさならエラを切って血抜きなどをしてから潮氷に漬けます。それ以下はそのままクーラーに入れて氷締めするという独自基準を持っています。小さくてもあんまり暴れて動き回る魚は首を折るなどして動きを止めてから氷締めにします。

締めることは美味しく食べられることにつながる

なぜ「締める」ということが必要なのか

氷締めをはじめとした「魚を締める」という行為、つまりなるべくはやく絶命させるということがなぜ魚の美味しさにつながるのか補足しておきたいと思います。ちゃんと意味があります。

人間はもちろん魚も生命を維持するためのエネルギーが必要。そのエネルギーとしてアデノシン三リン酸、略してATPという物質があります。このATPが筋肉を動かすエネルギー源になっています。もちろん無限にあるものではなく、筋肉を動かせばどんどん消費されていきます。バッテリーみたいなものと考えてください。

このATPは魚の死後に分解されていき、イノシン酸という物質に変換されます。イノシン酸はグルタミン酸と並んで「魚の旨み」たるものを形成している重要な物質。

なるべく早く締めて動きを止めたほうが美味しく食べられる

サビキで釣れる魚は背が青い青魚のたぐい。釣れたてのサバなんかを見てると分かりますが「お前ちょっと落ち着けや!」と思うほど激しくブルブル震えますよね。マッサージ機かよっていう。

サバをはじめとした青魚は総じて運動量が多い。ましてや海中から地上に上がった魚は命の限り筋肉を動かして抵抗します。筋肉を動かすということはつまりATPを消費するということ。ATPが少なくなればイノシン酸の量も少なくなる。そして旨みの少ない魚になってしまう。

弱って絶命するまで放置しておいた魚はかなりの割合でATPを消費しているはずです。そんな魚が美味いかというと…

もう分かりますね。

魚を早めに締めるという行為はつまりATPを温存させることであり、魚をより美味しく食べるために重要なわけです。早めに電源を切ってバッテリーを温存させるイメージを持っておきましょう。

長時間バケツに放置しないこと

もう一点、放置して筋肉を動かし続けた魚の筋肉には乳酸が溜まるらしく。そしたら身が酸性に近づいてしまい、結果として食味に悪影響を与える。

とはいえそれほど神経質にならず、じゃんじゃん釣れる時であれば一時的に水汲みバケツに活かして溜めつつ、数がまとまれば都度クーラーに入れるぐらいでいいと思います。でも水汲みバケツに長時間放置はダメです。特に青魚はバケツの中でも元気一杯に泳ぎますし弱るのも早い。暑い時期は食中毒の可能性、ヒスタミン中毒の可能性も高めてしまうのでなおさら注意。

ガシラやメバルなんかの根魚は青魚に比べると運動量が少なくじっとしているので、比較的長時間水汲みバケツに活かしておけますし、旨みが落ちる割合も少ないと思われます。

冷やすことは食中毒予防にもなる

魚を冷やすということは美味しさを確保するだけではなく、食の安全にもつながります。つまりは食中毒対策。

食中毒の原因菌、腸炎ビブリオ。そしてサバをはじめとした青魚に多いヒスタミン。さらにアニサキスという寄生虫。これらは魚の保存温度が上がることでリスクが上昇します。詳しくはこちらの記事で。

食中毒と聞くと身構えてしまいますが、しっかり魚を冷やして保存すればそれほど脅威になることはありません。コロナなどのウイルスと同じように身の回りにある可能性が高いものですが、対策をすれば高確率で回避できるものです。

 自分のベストな処理方法を見つけよう

以上、小魚をより美味しい状態で持ち帰る方法と、その意味を書いてみました。

小魚であれば、しっかりとクーラーボックス内を冷やし迅速に潮氷で締めるのが重要。

サビキ釣りでは小物だけではなく30センチを越えるような大物が釣れることもあります。時期によってはそれぐらいのサバが連発するときもあります。

それぐらいのサイズになるとくーらボックスの氷締めだけで締めるのは時間がかかる。なので潮氷につける前にピックで締めたりエラを切るなどして締めて血を抜き、そのあとで潮氷につけるのがおすすめです。

なんにしろ、いろいろな方法を試してみて自分がベストだと思う方法を見つける、いや見つけられるのが釣り人の特権だと思います。

今はとにかく臭みを減らすための血抜き至上主義みたいな風潮もありますが、新鮮であれば血の風味だってその魚の個性だったりします。味の好みなんて人それぞれ違って当たり前なんだから、他人にどうこう言われたって自分で美味しいと思えばそれが正解です。インフルエンサーがやっている締め方を杓子定規に再現する必要はありません。

釣り人だから新鮮な魚が食べられるというのはその通りですが、釣ってからの魚の状態を完全にコントロールできることこそが釣り人に与えられた特権だと思います。

ここに書いた方法は安全に美味しく食べるためにある最適解のひとつに過ぎません。これを基本にあなたのベストを探してみましょう。