釣った魚を自分で調理してたべること。
最初は不安があると思います。素人が調理して食中毒にならないのかと。一方でお店で売ってる魚なら大丈夫という感覚もあるかもしれません。
でも釣った魚とお店で売ってる魚では食中毒のリスクに違いはあるでしょうか?
三枚おろしなどの調理を一切していない丸のままの魚でも、店先にパック詰めされて陳列してあればそれだけで感じる安心感。その感覚はなんとなく分かります。しかし端的に言えばその辺の海で獲れた魚をトレーに置いてラップをかけただけ。釣った魚となんら差はない。
釣った魚、お店で買った魚。入手方法はどうであれ食中毒のリスクはそれ相応にある。これはもう知識を付けて自衛するしかありません。
そこで、釣った魚とりわけ海水魚を食べるにおいて食中毒の原因となりえること、そしてその対策をまとめます。しっかり知識を付けて適切な処理さえすれば食中毒は高確率で防ぐことができるのです。
「火を通したら問題ない」は問題あり
魚の食中毒は主に3つの原因があり、それぞれ有効な対策も異なります。
それらが混同されて一人歩きした結果、単に「火を通せば大丈夫」もしくは「冷凍したら大丈夫」と認識されていることがあります。
でもその認識は「間違い」です。原因よって対策は異なるのです。具体的なことを書いていく前にまずそこを説明しておきます。
加熱や冷凍は万能ではない
日本の大衆食文化には「腐ったり傷んだりした食べ物であっても火を通せば大丈夫!」という通説、思い込みがあります。
確かにウイルスだろうが菌だろうが、火を通せば「ギャーアツイー!タスケテー!」と焼け死んでいくようなビジュアルイメージが浮かばないこともない。それは分かる。確かに多くの菌やウイルスは熱で死ぬ。だから安全かというと、そんなに単純なものではありません。
それは冷凍とて同じ。有効な場合も全く意味を成さない場合もあり得ます。
例えば腸炎ビブリオの毒素は熱で消えない
後ほど詳しく説明しますが、海産物に付着している可能性がある腸炎ビブリオという細菌。
この細菌そのものは加熱することで死滅します。ですが細菌が分泌する毒素は熱に強く、加熱でその毒性は消えない。もちろん冷凍してもダメ。それを摂取してしまうと腸管に作用して下痢をもたらしたり、場合によっては心臓の筋肉細胞を破壊するという恐ろしい結末をもたらします。
一方で冷凍で菌が死ぬという認識も大間違い。ビブリオを含め、短期間の冷凍程度でウイルスは死滅しません。
例えばヒスタミンは熱で消えない
こちらも後ほど詳しく書きますが、サバを筆頭とする青魚系で発生しやすいヒスタミン食中毒。鮮度が落ちた魚のヒスタミンでブツブツができたり吐き気がしたり。
残念ながら一度生成されてしまったヒスタミンは加熱で消えません。
経験上、年配の人にほど「加熱したら平気」という意識が根強く残っているように思います。結果として傷んだサバを食べたらブツブツができたって経験をした人はけっこう多いんじゃないでしょうか?それ以来「俺サバアレルギーだからサバだめなんすよ~、青魚だめなんすよ~」って。
ほとんどの場合サバ自身は悪くない。魚の扱い方が悪いのだ!
そしてやはり、冷凍してもヒスタミンは消えません。ですがヒスタミンが発生する前の新鮮な状態であれば冷凍は有効な予防方法です。
このあたりのことがごっちゃになって間違った認識が広まっているものと思われます。
傷んだ魚は捨てるべき
原因が腸炎ビブリオにしろヒスタミンにしろ、既に傷んでしまった魚は煮ても焼いても揚げても、そしてカチンコチンに冷凍しても食中毒の原因が取り除けません。
傷んだ魚は不味いだけではなく食中毒のリスクが高い食材であることを認識し、潔く処分するようにしましょう。もちろんそうしないために適切な温度管理などをすることが大前提です。
魚は新鮮なうちに適切な処理をすれば食中毒のリスクが下がる
例えば鶏を生で食べる場合、新鮮だから安全という認識は間違っています。
いくら新鮮であろうが、原因菌のいる消化管を傷つけないといったような食中毒を最大限回避する丁寧な処理が食肉加工時になされていないと危険だといえます。そもそもどんな処理をしようが鶏を生食すること自体が危険をはらんでいるという意見もあり、それはそれで間違いではありません。
もし新鮮さを売りに鳥刺しを提供している店があれば疑ってかかりましょう。
しかし、魚の場合は新鮮であればあるほど食中毒のリスクは低くなるといえます。決してゼロにはならないけど。
新鮮な状態で適切な処理をすればビブリオの増殖が抑制できます。ヒスタミンも同様。アニサキスについては諸説あり断言が難しいのですが、一般的には鮮度が落ちると内臓から身に移動すると言われており、その前提でいうと新鮮なうちに内臓を取り除けばリスクを下げることができます。
じゃあ魚を含めたどんな海産物でも鮮度が良ければ食中毒のリスクが下がるかといえばそういうわけでもなく、牡蠣などの二枚貝によくある貝毒やノロウイルスは鮮度が良くても関係なし。いるときは当たり前に容赦なくいる。もちろんその場合生は危険。ちゃんと生食用と表示のあるものにしましょう。
釣った魚を食べて食中毒になる3つの原因
それでは魚の食中毒について具体的に解説していきます。
釣った魚、あるいは売られている魚や飲食店で提供された魚で食中毒になる主な原因は以下の3つ。まずこれを覚えましょう。
これ以外の要因で食中毒になることもありますが、この3つが身近で代表的なものです。ではそれぞれを詳しく見てきましょう。
海水にいる「腸炎ビブリオ」に気をつける
(出典:腸炎ビブリオ – Wikipedia)
海水魚は腸炎ビブリオによる食中毒に注意
魚に表皮に付着している細菌というのは何種類もいるようですが、海で釣った魚を食べるにおいて特に注意しなければいけないのが「腸炎ビブリオ」です。3~4%の濃度を持つ塩水、つまりは海水を好む細菌。海水中には当たり前にいるものと認識したほうがいいでしょう。
かつて重大な集団食中毒事件を引き起こしたO-157などと比べると、食中毒の原因としてほとんど認知されていないと思います。私も釣りをするまで知りませんでした。
実際、2000年代以降は食中毒の発生件数が顕著に減っているようです。
しかし古いニュースを調べると、これが原因の集団食中毒がときおり発生しているのが分かります。
海水が15℃以上になると活発に活動しだし、暑い夏の時期に最も多く食中毒が発生します。症状としては激しい腹痛、嘔吐、下痢、発熱など。いかにも食中毒といった症状。
【ビブリオ対策】真水で表皮をしっかり洗い流す
腸炎ビブリオは真水、酸、熱に弱く、基本的な対処法は表皮を「水道水」でしっかり洗うこと。これ大事。
たいがいの魚レシピ本では、まず始めに魚を水で洗う工程から始まりますが、食中毒予防と臭み取りという点でそれは利にかなってます。
高度に処理された日本の水道水は安全であり、これを誰でも安価で使えるということが魚の生食文化に大きく貢献しているはずです。
魚の身が真水に触れると味が落ちるからといって極力水を使わないような調理工程を紹介している人もいます。でも私は安全が保証されてこそ食を楽しめると思うので、内蔵を抜いて3枚におろす直前まではジャブジャブと水道水を使います。そして皆さんにもそれを推奨します。
洗うということについて、腸炎ビブリオによるとある集団食中毒の記事に以下のような表現があります。(※現在記事は削除されているようです)
県薬事衛生課によると、2日に加賀屋で夕食を食べた24~87歳の宿泊客15人が下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴えた。同課は腸炎ビブリオが原因と断定し、夕食で出た刺し身の洗い方が不十分だった可能性があるとみている。
(出典:高級旅館で宿泊者15人食中毒=和倉温泉「加賀屋」-石川:時事ドットコム)
魚の食中毒について知らない人がこれを読むと、
「刺し身って切った後に洗うものなのか!なるほど”スズキの洗い”って食中毒予防のテクニックなんだね!」
と思ったりするかもしれませんが、切り出した身を水で洗ったら旨みも落ちるので普通は洗いません。たぶん捌く前に表皮を洗うのが不十分だったことを言いたいのかと。
ちなみに刺し身でいうところの”洗い”は、氷水で締めて身の弾力を強くしたり、余計な脂を落とすのが目的。食中毒対策とは無関係です。
【ビブリオ対策】調理までなるべく冷やして鮮度を保つ
ビブリオはある程度の温度以上で活発になり増殖も進んでいくので、釣った魚は釣った直後から調理するまできちんと冷やすことを心がけましょう。
釣り場で釣ったらただちに冷たいクーラーボックスに入れるのはもちろん、暑い時期は調理中もなるべく常温で置いたままにしないこと。処理中でもこまめに冷蔵庫に入れる。さもないと時間ごとに倍々に増えていくぞ!のび太がバイバインで増やした栗まんじゅうみたいにな!(参考:栗まんじゅう問題 – アンサイクロペディア)
真水以外にも、ビブリオは熱にも弱いということになっています。それなら火を通せば問題なしかといえばそうでもなく、傷みが進行してビブリオ菌が毒素を分泌する状態になっていればもうアウト。煮ても焼いてもアウト。「心臓の筋肉細胞を破壊する」という中二男子が考えたような闇の追加属性もゲット。
じゃあ凍らせればええやんと思うじゃないですか?
繰り返しますが、大概の菌は凍結しても死滅しない。それはむしろ冷凍保存で冬眠させ生きながらえさせるようなもの。
ビブリオの二次汚染にも気をつける
しっかり真水で洗ったから魚の腸炎ビブリオは除去できたはず。これで万事問題なし!いっちょ刺身にでもして生で食ってやるか!
いや、ちょっと待った!
もしかして真水で洗う前に魚をまな板に置いたりしてなかった?そしてそのまな板は洗った?まな板を洗わないままツマにする野菜とか切ってない?
せっかく魚の表面にいる細菌は除去できたのに、汚れたまな板を使えばその魚の身にまた細菌を戻すようなもの。また、野菜など他の食材に移って二次汚染を起こしてしまったら台無しです。面倒ですが、生の魚に触れたまな板や包丁は工程ごとに洗ってから次の調理にかかりましょう。水でサッと流すだけでもだいぶ違うはずです。
食中毒対策だけではなく、魚が生臭くなるのを避けて美味しく食べるためにも、こまめな「まな板洗浄」は重要です。自分が刺身を作るといつも生臭くなるって人、ちゃんとまな板を洗ってますか?
青魚に多い「ヒスタミン」に気をつける
(出典:ヒスタミン – Wikipedia)
鮮度落ちが原因でヒスタミンがヒスチジンに変わる
青魚に多く含まれる成分として「ヒスチジン」というものがあります。
これ自体は無害であり、むしろ必須アミノ酸のひとつとされるものでサプリとして売られているほど。
しかし時間が経って内臓が傷むなどすると、魚の内臓にある酵素によってこのヒスチジンが「ヒスタミン」に変わってしまい、食物アレルギーに似た「アレルギー様食中毒」を引き起こします。そうなるとブツブツと発疹ができたり吐き気がしたり熱が出たりという症状が。
「サバの生き腐れ」という言葉があるように、サバに代表される青魚は内臓から鮮度が落ちやすく、それが原因でヒスタミンが生成されやすい。
先ほども書きましたが、このヒスタミンは熱で無効にすることができません。よって一旦ヒスタミンができてしまうと煮ても焼いても揚げても手遅れです。捨てるしかない。
【ヒスタミン対策】冷やして鮮度保持をこころがける
サバの内臓には消化酵素を持つ細菌がいて、サバが死ぬとこの酵素が働きだして内蔵を分解しデロデロにしつつヒスチジンをヒスタミンに変えます。サバに限らず青魚はこの酵素が多いようです。
この働きを遅らせるには冷やして鮮度を保つこと。釣れた魚はなるべく早くキンキンに冷やしたクーラーボックスに入れて氷締めしましょう。暑い時期、死んだ魚をバケツに放置するとかもってのほかです。リスクがどうとか以前に出来るだけ美味しく食べるためにも避けるべきです。
【ヒスタミン対策】血抜きやワタ抜きをして鮮度を保つ
消化酵素が多く含まれる内臓を、釣り場で抜き取る処理をしてしまうのもひとつの手です。これをすることで鮮度維持に大きな差がでます。
例えば私は、25センチを超えるような大きめのサバが釣れたら直ちにサバ折りで首を折り海水に漬けて血抜きをします。一通り血が抜けたらキッチンバサミでエラとお腹を切って内臓を取り出し、中骨の下にある血合いも指で掻き出します。それからクーラーに入れて急速に冷やします。
とはいえ面倒なので何も処理していないサバもとりあえずクーラーに入れちゃったりすることもあるんですが、捌くときにその差は一目瞭然です。とりわけ内臓周りの腹骨。
内臓を抜いて持ち帰ったサバは身にしっかり腹骨が張り付いているのに対し、何もしていないサバは腹骨が身から剥がれてお腹回りがグズグズになっていたり身割れすることが多い。半日程度の短い時間でもこの差がでます。
寄生虫「アニサキス」に気をつける
(出典:アニサキス – Wikipedia)
淡水海水に関わらず寄生虫はいる
「魚を生で食べるのは危険」ってことで真っ先に連想されるのが寄生虫じゃないでしょうか?寄生虫って言葉やその存在自体に嫌悪感があるでしょうから。
「淡水魚は寄生虫がいるから刺身で食べられない」ってのもよく聞く話ですが、寄生虫がいるのは海水魚も同じこと。天然の魚であればどちらも同じぐらいの割合で寄生虫がいるはずです。
ただし淡水魚のほうがタチの悪い寄生虫が多い。
淡水魚には、肝吸虫、肺吸虫、顎口虫など、人間にとって危険な寄生虫がついていることがあります。皮膚の下を這い回って脳や眼球に進入するとか、おおよそ魚の寄生虫に抱いているおぞましいイメージは淡水魚の寄生虫によるものが多いです。
海水魚の寄生虫は害がないものがほとんどだけど
一方で海水魚はウオノエとかウオノコバンとか、大きいため簡単に目視できて見た目のインパクトも大きい寄生虫が多いです。しかしほとんどの場合に人間に悪さはしません。ウオノエなんてシャコとか甲殻類の親戚みたいなもんだし、なんなら食えないこともない。
そんな海水魚の寄生虫ですが、とりわけ気をつけなければいけないのが「アニサキス」。サバやサゴシなどの青魚類、スルメイカなどのイカ類に多い寄生虫です。芸能人がこれで食中毒になったというニュースがたまに流れるので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
胃壁に潜り込んで激痛をもたらす「アニサキス」
アニサキスは寄生虫だからといって人間には寄生することは出来ません。生きたまま食べてしまったとしても放っておいたら数日内に自滅します。しかしこの「寄生できない」ことが人間に害を及ぼすこととなります。寄生して宿主を利用するなら、その時が来るまでおとなしく潜伏するほうが都合良いですもんね。
人間の体内という”アニサキスにとっては過酷な環境”に放り込まれると苦しみのた打ち回るようで、そのどさくさで胃壁などに潜り込もうとすることがあるようです。こうなるとめっちゃ痛い!らしい。幸いにしてまだ体験していないので”らしい”なんですが、そりゃあもう痛いそうです。
そうなってしまうと対処法は胃カメラで摘出するか、死滅するまで痛みを我慢するか。どっちにしろ苦しそう。胃を通り過ぎて腸までいって症状が出た場合は腸閉塞を起こす場合があり、その場合は命に関わる事態になりかねないため外科手術となるケースもあるようです。
【アニサキス対策】確実な対処法は「火を通す」こと
アニサキスへの対処はシンプル。
火を通せば死ぬから煮るなり焼くなり揚げるなりして熱を通せば大丈夫です。死んでも口に入るから嫌?気にするな。ただ、アニサキス自体が食物アレルギーの原因になるということもあるらしく。
こちらはアニサキスアレルギーになってしまった方の記事です。
あまり聞かないレアケースかもしれませんが、こういうこともあるというのは覚えておく必要があります。
酢や醤油ぐらいでは死なない
誤解されがちなんですが、塩や酢や醤油やわさび程度のものでは退治できませんのでご注意を。しめ鯖という調理法は酢でアニサキスを退治できるように思われるかもしれませんが、酢程度で死滅させるのは無理。
このように意外と屈強なアニサキスですが、しっかりと冷凍すればさすがに死滅します。ですがよく聞く基準はマイナス20℃で24時間以上冷凍するというもの。家庭用の冷凍庫程度ではなかなか難しい基準なので、数日間しっかり冷凍しておく必要があります。そうなると刺身としての食味が落ちてしまうので悩ましいところ。
また「よく噛んで食べればいい」という話も聞きますが、どうも眉唾っぽい感じです。実際に食べてみた方がおられます。勇者!
まあ噛み切れなくともちょっとでもダメージを与えておけば、その後胃の中で悪さをするほど長生き出来ないと思いますが、相手は寄生虫なのでなんともいえません。
目視して取り除くということもできますが、見慣れていないと判別が難しいと思いますし、身の奥に潜り込んでいてはどうしようもありません。
【アニサキス対策】身に移る前に内臓を取りのぞく
アニサキスは魚が生きている状態では内臓に生息しているとされています。鮮度が落ちてくると身に移動してくるというのが定説で、その前の新鮮な状態のうちに内臓を取り除いてしまえばリスクを下げることができます。この処理は、前述のヒスタミン対策にもなります。
サバや大きな青魚が釣れたときは、早めに内臓を出しておくと安心ですね。それでも心配ならば、生では食べず火を通す調理を選ぶべきです。
釣った魚の食中毒に対するリスク回避の方法
冷やして保存!真水で洗う!早めに内蔵を抜く!
ビブリオ、ヒスタミン、アニサキス。
これら3つの原因による食中毒リスクを下げるには以下のことに注意しましょう。
こんなところでしょうか。
実際のところ、小アジみたいにジャンジャン釣れる小魚に対していちいち血抜きやワタ抜きなんかしてられませんし、逆にそれが食味を落とす原因にもなりかねません。
小魚の場合、基本は釣れたらそのまま「氷締め」にして家に帰ったらなるべく早く水洗いとワタ抜きの処理する、これでいいと思います。釣りから帰ったら疲れてるだろうけど下処理だけは頑張りましょう。下処理さえすませば、数日は生で食べられます。
氷締めの具体的は方法をこちらの記事で紹介しています。
食中毒対策として有効な魚の下処理方法はこちらの記事をご覧ください。
原因と理由を知れば高い確率でリスクを回避できる
食に対してゼロリスクはあり得ない
脅かすようなことばかり書いてしまいました。
「生で魚を食べるのに多少のリスクがあるのはなんとなく知ってた。でも煮ても焼いてもリスクがあるなら魚なんてもう食べられないじゃないか!」
そう思わせてしまったかもしれません。でもそれはそれで正解なんだと思います。目に見えない細菌なんて完全に除去できるわけがないし。残念ながら完全にリスクを無くすことは不可能です。
それは魚であろうと肉であろうと野菜であろうと同じこと。あらゆる食に対してゼロリスクはあり得ない。
知識という武器でリスクに対抗する
でもリスクが高まる理由や原因を知って適切な対策すれば、私たちは高い確率で食中毒を回避することができます。
かつてこんなことがあったそうです。
いまから数十年さかのぼること1950年代、シラス干しについていた腸炎ビブリオが原因となり、大阪府下で集団食中毒が発生しました。発生当初は細菌が原因であることすら特定できなかったそうです。そのせいで第三者による毒物混入が疑われたとか。
その時代と比べたら、現代に生きる私たちはリスクに対抗できる知識や情報という強力な武器を持っています。鮮度を保つ道具も飛躍的に性能が上がっている。それが無い昔はオバケや妖怪と戦うようなもんだったかもしれませんが、原因や対策が分かっている今はもう菌が目に見えているも同然です。
確かな知識と情報を身につければ、見えないものも認識できる。見えないけど見える。
過信は禁物だけど神経質になる必要はない
はっきり言って魚の食中毒対策は面倒です。
冷やして洗って取り除いてまた洗って、処理する魚の数が増えれば増えるほど面倒。
でも「今まで大丈夫だったから手を抜いても平気。食中毒対策なんて無意味だ。」なんてサボりだしたころに危険が待ち構えてるんじゃないかと思うんです。
まるで「お酒を飲んでるけど、今まで事故ったことないからへーきへーき!」って車を運転するようなものじゃないか。
かといって過度に心配する必要もありません。ちゃんとすれば「ほぼ」大丈夫。
オバケは怖いけど出現条件を回避すれば出てこない。妖怪が出ても対処法を知っていれば大丈夫なのと同じように。「べとべとさん、先へおこし」みたいに決まり事を守ればいい。
疲れていたり体調が悪いなら生食は避けよう
ちょっと今日は体調が悪いとか疲れているとか、抵抗力の低い幼児やお年寄りに食べさせるというなら生食は避けたほうが無難だと思います。そんなときは新鮮な魚でもできるだけ火を通すレシピを。自己責任とか言ってられないから。
どんなに丁寧で完璧な予防をしようが、食に対して100%安全という域には絶対到達できません。でも100%に限りなく近い域には持っていける。
リスクとその対策をしっかり理解したうえで、楽しい、そして美味しい釣りライフを満喫しましょう!
釣った魚を刺身することについて別の視点でまとめましたので、よければこちらもご参考に。