ショアジギングはブリやサワラなどの青物やタチウオがメインターゲットとなりますが、狙っていた魚以外が釣れるのも楽しみのひとつ。ヒラメや大きな根魚なんかが釣れたらラッキー。
そんな中、ショアジギングで釣れる魚としては定番中の定番、しかしまったくもって喜ばれない魚がいます。その名は「エソ」。爬虫類っぽい独特の見た目で気持ち悪いと感じる人も多く、多くの場合は即リリースされる悲しい魚。
しかしこのエソ、ちゃんと処理すればとても美味しい魚なんです。
エソは美味しい魚である
かまぼこの原料として使われる
高級かまぼこの原材料になる
エソが鮮魚として丸のまま売られているのは見たことがありませんが、加工食品の原料としてはメジャーな魚です。なんの原料に使われているかというと、かまぼこを筆頭にした練り物が代表的。
スーパーで安く売ってるかまぼこのほとんどはスケトウダラが原料なので、エソが使われているかまぼこはちょっと高いやつ。意識せずに食べたことがあるかもしれません。
エソは高級魚ではない
エソはイワシ並みに安い魚
ネット上では「エソは高級魚」という表現をされがちですが、調べる限り基本はキロ単価100円以下のようです。この数字を基準にすればイワシより安い魚といえます。
あくまでエソを加工した食品、とりわけ加工の手間がかかるかまぼこなどが高級なのであって、エソ自体は安い魚に違いありません。
でも安いからって不味いわけではない。それはどんな魚にでもいえること。
郷土料理の材料になることも
エソは地方の郷土料理に使われることもあります。
大分のごまだし
大分では「ごまだし」という調味料の主原料として使われ、うどんの上にのせてお湯をかけることで出汁のベースとなるそうです。
愛媛のふくめん
愛媛では、エソの身をそぼろにしたものなどを彩りよく盛り付けて、祝いの席で出す料理に「ふくめん」になるとか。
盛り付けると聞いて当然のようにご飯の上に盛り付けると思ってたら、ベースになる食材は糸こんにゃくらしい。
どこでも釣れるけど愛されている魚
タチウオ釣りの外道として
タチウオ釣りの外道としてはお馴染みなので、沖堤だろうが波止だろうがどこでも釣れる魚だと実感してる人も多いはず。
ショアジギングの外道として
長くショアジギングをしている人なら、いろいろな場所で釣った記憶がないですか?オイオイまたコイツかよと。
こらこらまたお前かと…
あーはいはい、分かってますよ。
青物とは違う単調で弱い引き
青物狙いのエサ釣りとして定番であるのませ釣り、泳がせ釣りでもよく釣れます。
青物とは明らかに違う単調で弱い引きなので、回収している最中に「これはエソっぽいな」と気づけるようになります。最初のアタリでおっ!と期待するんですがぜんぜん引かなくて、これほんとに魚ついてる?と半信半疑で巻いたらエソがこんにちは。
タチウオの引きとも似てるが…
小さいタチウオの引きと似ているところがあるので、こんな明るい時間に釣れたと喜んだもののエソがこんにちは。
不味い魚ではない
経験の長い釣り人からしたらありふれた魚ですが、狙って釣る人は聞いたことがありません。でも地方ではそれなりに愛されているわけです。
このことから、少なくともまずい魚ではないということがお分かりいただけるはず。
いや美味しいんです!
あまり食べられない要因は小骨の多さにある
身に食い込んだ上神経骨が厄介
変な位置にある小骨
もしエソという魚を知らずに初めて釣り上げたのなら、その姿に驚くでしょう。色や形など他の魚にあまり似ない姿をしているから。
どうしたものかとその場に居合わせた釣り経験者に「これ食べれますか?」と聞いたなら、ほとんどは「小骨が多いから食べられないよ!」という答えが返ってくるはず。
そう、確かにエソは小骨が多い魚。なんとか三枚におろしてみたものの、身を触ると変な位置に小骨があると気づく。その骨は上神経骨という小骨。
上神経骨は処理が難しい
小骨が多いとされている魚は、だいたいこの上神経骨がある魚です。
この小骨は青魚の血合い骨と同じように切り取って処理することができません。だからその小骨の処理方法を知らなければ「小骨が多くて食べられない魚」という認識になるわけです。
だいたい内臓が入っている範囲と同じ、肛門付近までこの骨がずらっと身に食い込んでいます。しかも変な角度で。
エソにはあらゆる小骨がある
それだけならまだしも血合い骨もあるし、もちろん内臓を囲む腹骨もある。上神経骨、血合い骨、腹骨。図にするとこうなります。本当はもっと平べったいのですが。
特に体の前方は骨だらけ。しかも身が柔らかいから一本ずつ抜くのも大変。たとえ苦労して抜いても身がグズグズになってる。
不味いのなら苦労して食べる必要はないですが、どうやら美味しい魚らしいということは確かなわけで。ということで、この小骨をなんとか攻略して食べてみましょう。
エソの身をすり身にして食べる方法
ではエソを何とかして食べてみようということで、ここでもう一度エソをおろした画像を見てください。
しっかり血抜きをしたせいもあるんですが、めちゃくちゃ奇麗な白身じゃないですか?まるでタイやヒラメみたいな。これは美味しいに違いない。
今回はこのエソの身を骨ごとフードプロセッサーなどで挽き、すり身にすることで小骨を攻略したいと思います。
とりあえず三枚におろして皮を引く
大名おろしで三枚に
エソは細長い魚なので、腹背背腹という順番の三枚おろしではなく、大名おろしで三枚におろすと簡単です。
皮引きでボロボロになっても大丈夫
三枚におろせたら皮を引きます。
身が柔らかいので、ちょっと皮が引きにくいかもしれません。そんな場合は、無理に皮を取り除こうとせず、スプーンなどで身をかきだしましょう。どうせ今回はすり身にするんだから、身がボロボロになってしまっても何ら問題なし。
骨に残った身もスプーンでカリカリとかきだします。
なお、エソからは非常に旨い出汁がとれます。残った頭と骨は捨てずに煮込んで出汁をとることをおすすめします。
身を細かく刻む
フードプロセッサーがあるなら適当でOK
皮を引けた身は、包丁でたたいて小骨ごと細かく刻みましょう。
ここで徹底的に小骨をどうにかしようとする必要はありません。このあとフードプロセッサーなどで処理しやすくなるよう、適当に細切れにする程度で大丈夫。
フードプロセッサーですり身にする
専用の調理器具があればカンタン
フードプロセッサーやハンドブレンダーがあれば、それを使ってすり身にしましょう。
私はたまたま家にあったハンドブレンダーを使いました。離乳食をつくるため、子どもが赤ちゃんのころに買ったもの。茹でた野菜を鍋に入れたままポタージュに加工できたりするので便利です。
フードプロセッサーとなると本体も大きくて収納場所に困るのですが、ハンドブレンダーならコンパクト。3,000円ぐらいで買えるし。
挽き具合はお好みで。骨を感じたくないなら徹底的に、骨の感触も楽しみたいのなら粗めに。
もしこれらの調理器具がなければ、包丁でなるべく細かくしたのち、すり鉢ですり身にしましょう。すり鉢もないのなら、徹底的に包丁で叩くことでなんとかなります。多少骨が残っても、それはそれで食感として楽しめます。
すり身を味付けする
味付けはお好みで
すり身にできたら味付けをしていきます。
基本は塩。下味になるのはもちろん、塩を添加することで粘り気がでます。
あとはお好みで酒、みりん、ネギや生姜などの薬味を加えても美味しいすり身になります。より弾力をつけたいなら片栗粉を加えるのもあり。つなぎとして卵白を加えるのも良し。
この編のレシピは探せば色々と出てくるはずなので、お好みの味付けをしてください。
まんべんなく混ざればすり身は完成。すぐ調理してもいいですし、冷凍して使いたいときに使うこともできます。
あとはお好みの食べ方で
すり身は煮るなり焼くなり揚げるなりお好きな食べ方を。とりわけ汁物との相性は抜群です。
みそ汁やすまし汁の具として
すまし汁や味噌汁の具として、適当な大きさにして茹でればプリプリの弾力を持った食感と旨味が楽しめます。
おでんの具として
すり身なので、もちろんおでんの具としても有能。
真っ白できれいな身なので、どんな料理に使っても上品に映えます。
さつま揚げにしても美味
酒、味醂、塩などで味付けてしてニンジンなどの野菜を加えてから揚げるとさつま揚げになります。そう、さつま揚げって自作できるんです。
揚げたてなら、ほくほく熱々プリプリで超美味い!
エソについてのエピソードと詳しいさつま揚げレシピは「放課後ていぼう日誌6巻」をご参照ください。
捨てずにいちど食べてみよう
ほとんどの場合、エソは釣ったそばからぽいっと海に捨てられる魚です。
もし一度調理をしてみて、やっぱり処理が面倒くさいしその手間に見合うほど美味しい魚じゃないという判断をしたなら、これからもリリースすればいいと思います。
でも、食べたことがないのにも関わらず食べる価値がないと思っているなら、いちどチャレンジしてみてください。美味しい魚だと感じてもらえるかもしれません。そしたらエソを見る目も変わるでしょう。価値のない外道から美味しい食材へ認識がアップデートされます。
あと、エソは見た目が気持ち悪いから嫌われているという側面もあると思います。可愛い顔してると思うんですけども。