魚のぬめり取りは酢を使え!くさみもヌルヌルも取れて美味しさアップ

釣った魚を自分で料理してみたけど、生臭くて食えたもんじゃなかったという経験はありますか?

魚のくさみにはいくつかの発生源があり、それを取り除くことで生臭さを抑えることができます。例えばそれは、内臓だったり血液だったり血合いだったり。こういったくさみの発生源を可能な限り取り除くための下処理をすることで、より美味しく魚を食べることができるようになります。

しかし一筋縄では対処できないくさみの原因があります。それは魚の表皮にある「ぬめり」。

洗っても洗っても、こすってもこすっても一向にヌルヌルが取れない。まるで無限にヌルヌルが湧いてくるかのよう。何かいい方法はないのか?

そこで試してもらいたいアイテムが「酢」です。

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魚のぬめり取りとくさみ取りに酢が最適な理由

釣った魚を自分でさばくようになって数年、今まで何百匹という数の魚をさばいてきました。

カワハギなど一部の例外を除いて、釣ったばかりの新鮮な魚は体中ぬめりで覆われています。ぬめりが多くて糸を引くような魚は鮮度が落ちているなんて情報もネットに落ちていますが、鮮度落ちが原因のぬめりはまた別もの。新鮮であればぬるぬるしている魚がほとんど。

ぬめりは魚を外部から保護する役割をもつのだから当然と言えば当然です。

今までいろんな方法を試してこのぬめりと戦ってきました。そしてようやくたどり着いた最終兵器、それが「酢」だったのです。なぜ酢が適当なのか、実際どうやって使うのかを、周辺知識を交えて解説します。

魚の臭みとなる3つの要因

魚のくさみの主な原因となり得るものはこの3つ。

魚の臭みとなる主な原因
  • 内臓
  • 血液
  • ぬめり

ひとつめは内臓。

魚のお腹を開けてうっかり内臓を傷つけてしまうと、とたんに悪臭がただようことがあります。そのときに魚が食べているエサによっては、胃袋を破ってしまうと耐えがたい悪臭がすることも。時間が経って腐敗するとさらにとんでもない悪臭になります。

私は調理直後に内臓を冷凍庫で凍らせてからゴミの日に出すようにしています。

もうひとつは血液。

釣りたての魚の血はそれほど臭いませんが、時間が経つにつれてくさみが増していきます。これを防ぐために血抜きの処理をするわけです。背骨の下に張り付いている血の塊のような血合い、つまり腎臓もくさみの原因。魚をさばくときに指先や歯ブラシなどでこすってしっかり取り除きましょう。

そして釣りをして生きた魚に触れると最初に、そして最もダイレクトにくさく感じるのが魚の表皮を覆う粘液、ヌルヌル、ぬめり。

釣れた魚を手づかみで回収していると否応なく実感するはずです。ひとしきり魚を釣ってから、粘液がカピカピに乾いた手をにおうと、耐え難いにおいになっている。しかもそれがなかなか落ちない。石鹸で洗っても。

ちなみに特定の洗剤や男性用の洗顔料で洗うとよく落ちます。

塩はぬめり取りの定番アイテムだけど

初心者にも簡単に釣れる魚で特にぬめりが多いのは海だとサバ、淡水だとニジマスが代表格。

釣った魚を調理しようとキッチンで水を流しながらぬめりをこすり落とそうとしても、無限かと思えるほどぬめりがでてきて取り切れません。洗っても洗ってもきりがない。

ぬめり取りの定番としてよく知られているのは塩を使った処理。塩を振りかけてこすればぬめりが落ちるとされています。確かにそのまま水で流すより確実にぬめりが落ちます。でも実際やってみると分かりますが、期待したほどの落ち具合ではないはず。根気が必要。

また、3~4%の塩水で洗えばぬめりが落ちるなんて情報を書いているサイトがたまにありますが、これも正直言って役に立ちません。それだったら海水魚はみんなツルツルやで。

熱を加えるのが確実だけど

魚が生臭くなる原因として知られている物質のひとつがトリメチルアミン。ぬめりが生臭くなる原因もこの物質によるものです。

実はこれを取り除くはカンタン。熱を加えればいい。生魚より焼き魚や揚げ物のほうがずっと生臭みが少ないのは焼いて熱を加えているからです。

その原理を利用したくさみ取りの方法として、熱湯をかけたり熱湯にくぐらせたりする「霜ふり」という調理テクニックがあります。お湯をかけて表面のぬめりを凝固させ、表面に浮いた白い付着物をあらえば臭みが軽減できるというもの。

しかしこれだと少なからず身に火が通ってしまうので、生魚特有の食感やなめらかな舌触りが失われてしまいます。風味も変わってしまう。それを利用して皮ごと刺身を味わったりするのに有効な調理法ではあるのですが。

酢ならぬめりにもにおいにも対処できる

そこで試してもらいたい身近なアイテム。それが今回使う酢なのです。

どこのご家庭にでも常備されているであろう、調味料としての酢です。皆さんのお家にもミツカンやタマノイの酢があるんじゃないでしょうか?

酢にもいろいろ種類がありますが、味付けに使うわけではないので安い穀物酢で構いません。

魚のぬめりに酢をふりかけてしばらく置くと、ぬめりが凝固して魚の表面が白く膜をはったような状態になります。お湯をかけたのと近い状態。その白い膜を包丁の刃先やスポンジなどで擦り落とせばぬめりが除去できるわけです。

もともと酢は魚の身の水分を抜いて締めると同時にくさみを取る効果もあります。しめ鯖には酢をつかいますよね。

酢を使えばぬめりもくさみも取れて一石二鳥。

でもそれじゃあ酢の風味が魚に移って酸っぱくなるのでは?という懸念があるかもしれません。でも魚をさばく前に、身が露出する前に酢をかけるぐらいなら影響なし。洗い流せば酢は落ちます。

もちろん、さばいたあと身に直接酢が触れるような状態だと身が白くなり酢の風味も移ってしまいますので、酢を使うなら必ずさばく前にやりましょう。

酢を使えばアナゴだって目打ちなしでさばける

魚のぬめりに対する酢の効果の素晴らしさを実感したのは自分で釣ったアナゴをさばいたときです。

ご存知の通り、アナゴといえばヌルヌルした魚の最上位に位置する魚です。

そのままさばこうとしても粘液で滑るため、通常はウナギと同じように目打ちという釘のようなもので頭をまな板に固定してさばきます。しかしうちには樹脂製のまな板しかありませんでした。そもそも目打ちもない。普通のご家庭にはないですよね。

他に方法がないか調べたところ、お湯をかけてぬめりを凝固させる方法、そして酢でぬめりを凝固させる方法を発見。そこからお手軽そうな酢を使ったところ、これが効果てきめんでした。

下の写真はアナゴに酢をかけたところです。表面が白く膜をはったように見えるのが分かるでしょうか?

酢によってヌメリが白く凝固したアナゴ

火を通したわけではありません。これは酢の力でぬめりが凝固したもの。

この凝固した白いものを包丁の刃先でこそげ取るとすっかりぬめりが取れ、そのまままな板に置いても滑ることなく包丁の刃を入れることができました。結果として普通の魚と同じように、普通のまな板の上でアナゴの三枚おろしや開きにすることが可能となったのです。

酢でヌメリを落とせばご家庭の調理道具だけでアナゴがさばける

目打ちを使わないアナゴのさばき方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

実際に酢でぬめり取りをやってみよう

ぬるぬる魚の代表格ニジマスで

それでは酢を使ったぬめり取りを実践してみましょう。ここではぬめりが多い魚として代表的なニジマスを例に下処理をしていきたいと思います。

ニジマス釣りは観光地のアトラクションとしてよくありますし、専用の釣り堀、いわゆる管理釣り場でも釣れる代表的な魚です。釣り初心者が釣る食べられる魚として、淡水魚では最もメジャーな魚。

手でつかむのに苦労するほどぬめりが多い魚なので、今回のサンプルとしてうってつけといえるでしょう。

ちなみのこのニジマスは大阪の服部緑地にある冬季限定の管理釣り場「服部緑地ウォーターランドフィッシングパーク」で釣りました。

記事中でもふれていますが、お世辞にも綺麗とはいえない水質でして、釣ったばかりの魚はそれなりの生臭さを放っていました。酢でぬめりと生臭さを攻略しましょう。

ウロコと汚れをしっかり落とす

ぬめりを取る前に、まずはしっかりと丁寧にウロコを落とします。

ニジマスならペットボトルの蓋を使うと手軽で綺麗にウロコを取ることができます。流水をかけながら尾っぽから頭に向かってやさしくスライドさせてウロコを落としていきましょう。

ウロコの間にあるヌメリや汚れも生臭さの原因です。

なおペットボトルでのウロコ取りは、ヒレが柔らかくて棘がないニジマスのような魚じゃないとお勧めできません。気をつけないと怪我をするからです。

酢につける

いよいよ酢を使っていきます。

魚をボールやバットなどの容器に入れて酢を振りかけていきます。ビニール袋にいれて酢をかけてもいいですが、ヒレに棘があるような魚だと簡単に破れますのでご注意ください。

ヌメヌメの魚に酢を振りかける
ヌメヌメの魚に酢を振りかける

酢はそのままの原液をつかって問題ありません。薄めたりしないで濃いほうがぬめり取り効果が高いと思います。

便宜上「酢につける」と書きましたが、どっぷり漬けなくても構いません。表面にまんべんなくまぶす程度で数分置けばOK。

白くなったぬめりを擦り落とす

酢につけてしばらく経つと魚の表面に白い膜がはったようになります。

酢を振りかけると表面に白い膜がはる
酢を振りかけると表面に白い膜がはる

この膜はぬめりの成分が凝固したものです。

この時点でぬめりが取れるわけでないですが、ぬめりが可視化されたということになります。これを取り除けば同時にぬめりも取れる。包丁の刃先などでこそげ取っていきましょう。

魚のぬめりが凝固したもの
ぬめりが凝固したものを包丁でそぎ取る

こそげ取るのにそれなりの手間はかかってしまいますが、その分すっきり取れるはずです。

なお、この酢でのぬめり取りを「魚のぬめりを一瞬で落とす」とか紹介してるサイトがあります。もう理解してもらってるとは思いますが、酢をかけて一瞬で落ちるわけがありません。また魚のぬめりが溶けだすとか書いてますが、溶けるわけがなくむしろ固まります。

あくまで凝固させて落としやすくするだけ。落とすにはそれなりに根気がいります。

包丁ではなく流水をかけながらスポンジなどでこすり取るのもありです。私は100均で売ってるネット付きのスポンジが6個ぐらい入ったやつを魚料理用として幅広く使っています。汚れたら躊躇なく捨てれますし。

あらかた取り終えたら汚れを水で洗い流して、キッチンペーパーなどで水分をなるべく取り除きましょう。水分の除去はヌメリ取りにも鮮度保持にも大事な工程です。

そして表面を指で触ってみてください。完璧とは言えずとも、あれだけしつこかったぬめりの大部分が除去できているはずです。

水分を除去するだけでもぬめりは減らせる

ここでは酢を使うぬめり除去方法を紹介しました。

とはいえ私自身、ここまで手をかけてぬめり除去することはめったにありません。アナゴなど、どうしてもぬめりを取らないと処理すら出来ない魚のときだけです。あとは釣った段階でどうしても臭みが気になるレベルの魚とか。

ではどうしているかというと、焼き魚や煮魚にするときはざっとこすり洗いする程度で、徹底的に除去するというレベルまではやりません。熱を加えたら気にならなくなるから。どうせ火を通すんだからという前提の料理は、熱湯をかけていわゆる霜ふりの処理もします。

熱を加えずに刺身にしたい場合は、出来る限り水分を除去するという方法も有効です。表面の水分を取り除くだけで、大部分のぬめりが減らせます。キッチンペーパーなどを惜しみなくじゃんじゃん使って、魚の表面に残った水分を取り除くのです。

ケースバイケースで、手間や料理方法にあったぬめり取りの処理をしていきましょう。あくまでその方法の一つが酢ということです。知っておいて損はありません。

ぬめりとくさみを攻略して美味しく食べよう

私自身、酢を使う方法を知らないうちはぬめり取りに苦労しました。

流水をかけつつひたすらスポンジでゴシゴシこする方法を続けていましたが、酢の効果を知ってからはだいぶラクになったと思います。

せっかく自分で釣った魚。できる限り美味しく食べたいもの。なるべくラクな方法でぬめりを取るために「酢」をお試しください。