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釣れたら即冷!小魚は氷締めにして持ち帰ろう

小魚は氷締めにして持ち帰ろう
初心者向け魚料理特集魚の食中毒対策

堤防や海釣り公園からのサビキ釣りで釣れるアジやサバは、20センチぐらいまでの小魚がレギュラーサイズになります。

小魚といっても立派な釣果。釣ったからにはできるだけ美味しく食べたいもの。そのためにはしっかり締めてしっかり冷やしこみをして持ち帰る必要があります。

その「締め」と「冷やしこみ」が同時にできる小魚に最適な処理方法が氷締めです。

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氷締めは大量に釣れる小魚に最適な締め方

冷たい海水で締めと冷やしこみが同時にできる

迅速に締めて鮮度を保つ処理方法

氷締め

氷締めとは締め冷やしこみが同時にできる最もかんたんな魚の処理方法です。生きた魚を氷のように冷たい潮氷に直接入れて凍死させる締め方であり、同時に鮮度保持に効果的な保存方法も兼ねている一石二鳥な処理方法。

締めとは魚の息の根を絶ち動きを止めること。氷締めは0度以下の冷たい海水に魚を漬けることで魚の生命活動を停止させ動きを止めることができます。迅速に締めることでより美味しく魚を食べることができます。

冷やしこみとは魚の鮮度を保つために魚を冷やすこと。魚の体温を急速に下げて保存することで鮮度をキープできます。魚を美味しく食べられるようにするのと同時に、食中毒のリスクを下げ安全に魚を食べるために効果的です。

なぜ迅速に魚を締めると美味しく食べられるのか?

魚の生命活動エネルギーとしてATP(アデノシン三リン酸)という物質があります。

ATPは魚の死後に分解されイノシン酸という物質に変換されます。イノシン酸はグルタミン酸と並んで「魚の旨み」たるものを形成している物質なので、これを多く残すほど美味い魚になります。

釣った魚を締めずに放置した場合、絶命する間際までATPを消費することになり旨味が落ちることにつながります。特に運動量が多いアジやサバなどの青魚は顕著。

凍らせたペットボトル氷で氷締めされたマイワシ
氷締めされた20センチ前後のマイワシ

小魚がたくさん釣れる釣りに合理的な締め方

サビキ釣りは小魚が入れ食いで釣れ続けることが多いため、1匹ずつ丁寧な処理をしてる暇がありません。1匹ずつ脳締め1して血抜き2して…なんてことをしてたらせっかくの時合いを逃してしまうし、常温でモタモタしてたら魚も傷んできます。

そんなときでも氷締めなら迅速に締めと冷やしこみができるから合理的です。例え数百匹の小魚が釣れてもクーラーボックスに放り込むだけ。

氷締めにした豆アジ300匹
豆アジが300匹釣れても放り込むだけだから大丈夫

氷のように冷たい潮氷を作るのがポイント

保冷剤で海水を冷やすと潮氷ができる

氷締めに使う0度以下の海水のことを「潮氷(しおごおり)」と呼びます。これを用意するのが氷締めの最重要ポイント。特別なものではなく、保冷剤で海水を冷やしたものを潮氷と呼びます。

潮氷は海水中の塩分による氷点降下現象(凝固点降下)により、塩分濃度3%なら理論上はマイナス1.8℃まで凍らずに下がります。色々な要因からクーラーボックス内でそこまで下がりきるのは実際のところ難しいと思われますが、手がジンジンと痛くなるぐらいの冷たさで、魚を取り出すために手を出し入れしていると感覚がなくなってくるぐらい冷たい。

この潮氷を作るために必要なアイテムがあります。

氷締めに必要なアイテム

氷締めをするのに必要なアイテムは、当たり前に釣り場に持ち込んでいるクーラーボックス保冷剤、そして釣り場の海水だけです。

氷締めに必要なアイテム
氷締めに必要なアイテム
  • クーラーボックス
  • 保冷剤
  • 釣り場の海水(水汲みバケツで汲む)

クーラーボックス

投入口付きハードタイプクーラーボックスがおすすめ

クーラーボックスの中に海水を入れて潮氷を作るため、水が漏れないハードタイプのクーラーが必要です。ソフトクーラーでも中に厚手のビニール袋を入れて潮氷を作れないことはないですが、やはりハードクーラーが最適。

小物釣りの場合は蓋に投入口がついたクーラーボックスを使うのがベスト。氷締めは魚が釣れるたびにクーラーボックスの蓋を開け閉めすることになりますが、投入口があれば冷気の漏れを最小限にすることができます。

はじめてのクーラーボックスはメーカー製の15~20リットル

初めてクーラーボックスを買うなら、15~20リットルの釣具メーカー製クーラーボックスがおすすめです。

保冷剤

塩分濃度を下げない保冷剤を

海水を冷やして潮氷にするため保冷剤が必要です。

もちろん板氷も使えますが、氷が溶け出すと塩分濃度が下がり真水に近づいていきます。大量に氷が溶けて潮氷の塩分濃度が魚の塩分濃度3を下回った場合は、魚の身が水を吸収して水っぽくなる可能性があります。

海水の塩分濃度を薄めることがないよう袋に入ったままクーラーボックスに入れるといいでしょう。

魚の塩分濃度と浸透圧と溶けた氷の水分

濃い塩水と薄い塩水が半透膜を隔てて接したとき、濃い塩水に水分が移動する力が浸透圧。

海水の塩分濃度は3%台で海水魚の塩分濃度は1%前後。魚の皮目は半透膜。このためクーラーボックス内の真水で魚を保存した場合は魚の方の塩分濃度が高くなるため、魚の身に水分が移動して水っぽくなります。

ただしクーラーボックスに入れた海水の塩分濃度を1%以下に下げるためには、海水の2倍以上の氷が溶けて水になる必要があります。多少氷が溶けたところで影響はないと考えられます。

ペットボトル氷でも代用できる

ペットボトルに水を入れて凍らせたペットボトル氷も保冷剤として利用できます。冷凍庫の余裕さえあれば実質的に氷代がただになるし、塩分濃度に気を使うこともないので小魚の保存にはおすすめです。

ただし、氷が溶けてくるとペットボトル内に氷と海水を隔てる真水の層ができるため、潮氷の冷え方が不十分になります。袋に入れた板氷も同様に。とはいえ0度前後には保たれるので小魚に対しては十分です。

保冷剤代わりの凍らせたペットボトル
ミネラルウォーターが入っていた2リットルのペットボトルで作ったペットボトル氷

釣り場の海水

水汲みバケツで現地の海水を

潮氷に使う海水は現地で汲んだものを使うのが一番楽です。

釣り公園ではポンプで海水を汲み上げる機械が設置されていることもありますが、堤防では水汲みバケツなどを使って自分で汲み上げた海水を使います。

水汲みバケツは、魚を一時的に活かしたり、手を洗ったり、釣り場の清掃に使ったりと、堤防での釣りにおいて必ず必要になるアイテムです。

潮氷で氷締めをする手順

もう説明不要ですが、氷締めは海水を保冷剤で冷やした潮氷に釣れた魚を放り込むだけの処理方法。特別な知識やテクニックが不要だから誰でも簡単にできます。手順もシンプル。

氷締めの手順
氷締めをする手順
  1. 現地で海水を汲む
  2. クーラーボックスに海水を入れて潮氷を作る
  3. 釣れた小魚を潮氷へ放り込む

現地で海水を汲む

水汲みバケツで海水を汲もう

釣り場についたら竿や仕掛けを用意する前に潮氷を作りましょう。

水汲みバケツを使う場合は、ロープを全て伸ばしてからなるべく沖へバケツを投げ、手間に引いてくるようにすれば海水が入りやすくなります。

オモリが仕込んであるバケツは海面につくと反転して口が下になるので、真下に落としても水が汲みやすくなっています。

クーラーボックスで潮氷を作る

10センチぐらいの深さまで海水を注ぐ

保冷剤はあらかじめクーラーボックスに入れていると思うので、そこに海水を注いで潮氷を作ります。30分も経てば0度以下の水温になっているでしょう。

海水の量は釣れた魚が全て潮氷をかぶるぐらいが理想ですが、そこは経験で判断できるようになればいいと思います。まずは底から10センチぐらいの水量を目安に。

途中で海水を継ぎ足すとせっかく冷やした海水も魚もぬるくなってしまうので、なるべく最初に最適な水量を決めたいもの。しかし釣果ゼロでせっかく作った潮氷が役に立たないこともあります…

釣れた魚を潮氷に放り込む

潮氷に入れても即死はしない

釣れた魚はできるだけ早く潮氷に入れて氷締めをしましょう。

「氷締めで即死させる」と表現されがちですが、潮氷に入れた瞬間に死ぬわけではありません。しばらくピチピチと跳ねていた魚は次第に動きが緩慢になって数分後には生命活動が停止します。

アジやサバなどの青魚は数分もすれば締められますが、カサゴなどの根魚は氷締めをしても長く生きていることがあります。もともと運動量が少ない魚種なので気にする必要はありません。

血抜きはしない

一度にたくさん釣れる小魚を対象としているため、原則として氷締めでは魚の血抜きを行いません。

気になるのであればエラを切ってから潮氷に入れてもいいですが、1匹ずつもたもたと処理をしていると結局鮮度が落ちてしまいます。

20センチ程度までの小型なら即氷締め、25センチを超える中型ならさっと血抜き処理をしてから潮氷に入れるという線引きをするのがいいかもしれません。私はそうしています。

潮氷に入れたまま持ち帰る

釣りが終了して魚を持ち帰る際は、その日のうちに下処理するなら潮氷に魚をつけたまま持ち帰れば鮮度を維持することができます。

クーラーの水を捨てて持ち帰らないと水っぽくなると言及されることがありますが、塩分濃度が落ちないように対策すれば問題ありません。むしろ浸透圧の理屈上は脱水される方向に向かうはずです。

重くて持ち運びに難があったり、釣り場での処理で身が露出しているようであれば水を抜くことも検討しましょう。

潮氷で保存した秋の豊富な釣果<br>
魚の大小に関わらず潮氷は鮮度保持に効果的
氷締めでアニサキスは死ぬのか?

アニサキスを冷却で死滅できる基準は「マイナス20℃で24時間以上冷凍」です。氷締めの環境では全く基準に届きません。

しかし氷締めで魚の鮮度を保ち内臓の腐敗を遅らせることで、アニサキスが内臓から身へ移動するリスクを下げることができます。低温なら動きも緩慢になります。潮氷で冷やしたまま持ち帰り、その日のうちに内蔵を除去することでさらにリスクを下げることが可能です。

釣れた魚はとにかく冷やそう

サビキで釣れる小魚の締め方として氷締めを解説しました。

なにより重要なのはとにかく迅速に冷やすこと。じゃんじゃん釣れるような時合いに遭遇した時は、バケツてんこ盛りになるまで魚を放置しがちですが早めに冷やすに越したことはありません。

常温で放置は確実に魚の鮮度を落とします。結果として魚を不味くするだけではなく食中毒のリスクも上げてしまいます。YouTubeでみた何やら凄そうな締め方を再現するのもいいですが、モタモタしてたら鮮度が落ちて台無しです。

美味しさを追求する以前に食中毒を防いで安全を確保するのが大前提。小魚だろうが大型魚だろうがとにかく迅速に冷やす。まずはこれを心がけましょう。

  1. 魚の脳や脊髄を破壊して魚の動きを止める締め方。ナイフやピックを使用する。 ↩︎
  2. 魚のエラや動脈を切って血を抜き取る処理。鮮度の保持や臭みを抑えるのに効果的な処理。 ↩︎
  3. 海水魚の塩分濃度は人間とほとんど同じ1%前後。これは海水魚でも淡水魚でも大差がなく、脊椎動物に共通な塩分濃度。ただしイカなどの無脊椎動物は海水と同等の塩分濃度を持つため保存時は注意が必要。 ↩︎