アナゴの血と粘液には毒があることで知られています。
しかしその毒は熱を通すことで容易に無効化できます。だから天ぷらや煮付けなどの加熱調理が主な食べ方となっているわけです。
しかしアナゴの毒は意外と毒性が低く、丁寧に対処すれば生食も恐るるに足りません。自分で釣ったアナゴを丁寧に処理して刺身にしてみました。
アナゴの毒性は醤油レベル
丁寧に処理すれば危険はほとんどない
「毒」という言葉を聞くとすぐさま「死」を連想してしまいますが、果たしてどれぐらい危険なのでしょうか?
アナゴの血の致死量は成人で血清1リットルとされています。
実は同じようなレベルの毒性を持っていて、なおかつわたしたちの身近にある調味料があります。それは今日もどこかで摂取したかもしれない醤油です。
それを知れば大した脅威ではありません。アナゴの毒に対して正しい知識を持って正しく恐れ、そして適切な対処をすれば刺身で食べることも可能です。
丁寧な処理をしてアナゴを刺身で食べてみた
自分で釣ったアナゴを刺身に
毒性の低さから考えて生で食べても問題ないはず
釣り人たるもの、毒性が高くないと分かれば刺身で食べてみたいと思うわけです。みんなも同じだろう?
釣り場での扱い方や毒に対しての知識をつけたうえで、出来る限り毒を排除する処理をすれば生で食べてもまず問題ないはずです。
というわけで自分で釣ったアナゴを実際に生で食べてみました。
秋の大阪湾でタチウオ釣りの合間に釣れた60センチ級の大きなアナゴです。ポイントは堤防の足元で、釣り方はキビナゴをエサにしたズボ釣り。もちろんその場で締めてエラ切りで血抜きを施し持ち帰りました。
対策を万全にして自己責任で
毒性のある血や粘液を取り除く処理として、以下のような工程をふみました。
- 釣った直後に締める
- 釣り場ですぐに血抜きをする
- 血と同じく毒性があるとされる粘液を丁寧に取る
- ぬめりや血がついたまな板は処理過程ごとに洗う
- 3枚におろして皮を引いた後は身に残った血を水で洗う
- 身を氷水で締める
釣りで生きたアナゴを手に入れられるからこそ実現できる工程です。血抜きせずに売られているアナゴでは真似をしないでください。
ぬめりの徹底的な除去は、酢でぬめりの成分を凝固させることで可能になります。
ここまでやっておけば毒性があるとされる血も粘液もほとんど残りません。
そもそもの毒性の低さから考えて、血抜きをしておけばここまで徹底的にやらずとも問題なく生で食べられるはず。しかしあくまで自己責任でお試しください。おすすめしたいのですがオススメはしません(分かってください)。
アナゴの刺身を実食
体調を崩すことは無かった
そのような処理をして家族4人で食べました。こちらがそのときの写真になります。
大人子どもを含んだ家族構成でしたが、誰も体調不良は起こさず無事に翌日を迎えました。毒に対する知識を得たうえで万全の対策をしたから当然といえば当然の結果といえます。
ジャガイモにだって毒性はある
ソラニンという毒が含まれる可能性があるジャガイモだって、毒がある前提のもと芽や皮の処理をして注意しながら一般家庭で調理するわけです。
致死量は体重50キロの人で0.3g程度だから(出典:厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ジャガイモ)、単純比較すればアナゴの毒よりよっぽど怖い。食中毒発生事例もたくさんある。それでも当たり前に食卓にあがります。
そう考えればアナゴを特別恐れる必要はないはずです。適切な処理する前提であるなら。
アナゴの刺身は美味いのか?
間違いなく美味しい
身の弾力と脂のり そしてアナゴの風味
しかし面倒な処理をしてまで、ゼロとはいえないリスクをおかしてまでアナゴの刺身を食べる価値があるのか?これについては経験者としてはっきりこう言えます。
間違いなく価値アリです!
率直に言ってアナゴの刺身は美味い。サイズにもよりますが、60センチを超える個体なら脂乗りも良く、プリッとした筋肉質な身の食感と濃厚な脂が同時に楽しめます。寿司で食べ慣れたあのアナゴの風味もちゃんとある。青魚や普通の白身魚でこれは味わえません。アナゴだから味わえる他に替えがきかない味。
大きなアナゴが釣れたらしっかり処理したうえで試して欲しい…けどオススメはしません(お察しください)。