観光地や体験施設にあるアトラクションのひとつとして、マスの釣り堀が設置されていることがあります。普段釣りをしなくてもやったことがある人は多いだろうし、それが初めての釣りだったという人も居るはず。
釣ったもののどうやって食べればいいんだろうと困るかもしれません。マスなんて普段から食べる魚じゃないんだし仕方がない。アジやサバと比べたら超マイナーであることに間違いないのだから。
そこで定番のマス料理を4つ紹介します。いずれも定番で簡単な調理方法です。
そもそもマスってどんな魚?
釣り堀で釣るマスはほとんどがニジマス
あなたが釣ってきたマス。漢字で書くと鱒。
厳密にいうとマスという名前の魚はいません。マスは特定の一種類を指す名前ではないのです。では改めてあなたがマス釣り場で釣ってきたマスは一体なんなのか?
それはほとんど場合「ニジマス」です。
イワナやヤマメと違って日本には本来生息していない外来種であり、基本的には養殖された魚。養殖場で養殖されたニジマスが、各地の釣り堀に運ばれて放流されているというわけです。
ニジマスは在来のマス類に比べると警戒心が薄くて釣りやすいため人気があります。初心者が狙う魚としてはうってつけなわけです。
念のため写真で確認しておきましょう。ここに入ってる魚はすべてニジマスです。
サイズや個体によって色や模様が違って見えます。見た目の個体差が大きい魚なので、慣れていないと見分けにくい魚といえるかもしれません。
ちなみにニジマスの「ニジ」を漢字で書くとそのまま「虹」。英名はRainbow trout。体が虹色だからニジマスと呼ばれる…ということになっていますが、それほど虹を連想される配色ではありません。一般的には背中側に集中する小さな黒い斑点と体の側面にある淡いピンク色の帯を目印にすれば判別できます。
小さいニジマスの側面にはマス類特有である縦長で小判型のパーマークが並んでいることが多く、ヤマメやアマゴと混同することがあるかも。
サイズが大きくなると全体的に黒っぽい色でピンク色の帯が濃くなり、顔つきもサケのようにいかつくなります。口先も曲がってきます。
同じ釣り堀でイワナやヤマメが放流されていることもありますが、警戒心が強くあまり簡単には釣れないので、釣り堀で釣ったマスはほぼニジマスと思って差し支えないでしょう。
その他の養殖マスについては全国養鱒振興協会のサイトをご確認ください。
養殖されたニジマスは美味しい
そもそもニジマスって美味しいのか?今まで食べたことがないから分からない、そんな人がほとんどのはず。
結論から言うと間違いなく美味しい魚です。
食用のため明治~大正時代から養殖され今に至っているのだから不味いはずがありません。美味しいから日本の文化に100年近く根付いてるわけです。
淡水魚は脂がのっていなくてパサパサというイメージがあるかもしれませんが、それは野生の淡水魚の話。養殖で栄養豊富なエサを食べたニジマスは、大きなサイズになるほどしっかり脂がのってきます。
ネットで簡単に調べられる範囲では臭みがあるとか水っぽいとか書かれがちですが、他の魚に比べて特別そんなことはありません。確かに多少水分が多い身ではありますが、海の魚でもそんな魚はいます。「これだから淡水魚は不味いんだ」とひとくくりにして決めつけず、いろいろな食べ方で試してみたいものです。
そうかと思えばクセも臭みも一切ないなんて書かれたりもしますが、そりゃ魚なんだからそれなりの臭みはあります。クセ、つまり味の個性だってあります。
ニジマス=サーモントラウト
実は知らず知らずのうちにあなたもニジマスを食べている可能性があります。しかも好き好んで選んでいるかもしれない。
それは回転寿司で大人気のサーモン。アトランティックサーモンが使われていることも多いですが、サーモントラウトという名前がついている場合、それは海で養殖されたニジマスのこと。アトランティックサーモンよりさっぱりした味わいが特徴です。
いや、でもサーモンは身が赤いはず。自分が釣ったニジマスは身が白いから違うのでは?と思われるかもしれませんが、ニジマスは大きくなるにしたがってエサの影響で身の色が赤くなっていく傾向があります。おおむね40センチを超えたニジマスは身が赤くなっていることが多いです。
淡水養殖と海水養殖の違いはありますが、もとは同じニジマス。みんなサーモン好きでしょ?サーモン美味しいでしょ?
最近では養殖技術の向上もあって、全国各地でご当地サーモンの養殖が盛んになっています。それらはほとんどの場合がニジマスを大きく育てたもの。ニジマスはこれからどんどん伸びていく魚種になるかもしれません。今のうちに覚えておきたいところ。
ということで、定番のニジマス料理を紹介していきます。
ニジマスの下処理 下ごしらえ
料理に入るその前に、まずはニジマスの下処理について説明しておきます。
釣ったときに気づいているとは思いますが、魚の中でもかなりヌルヌルした部類の魚です。このヌメリは臭みの原因となりますので、できる範囲で取り除いておくとより美味しく食べることができます。
順を追って説明します。
ウロコとヌメリを取る
ニジマスには小さなウロコがあります。
塩焼きやムニエルなど火を通す場合はパリパリになりますので、無理に取り除く必要はありません。ただ、ウロコ取りをすると同時にヌメリもある程度取れますので、余裕があればやっておいたほうがいいでしょう。
ウロコ取りがあるならそれを使ってもいいですし、ペットボトルの蓋でも十分代用できます。尾から頭の方に向かって動かし、ウロコを削ぎ落としてください。
野外のBBQで釣ったそばから塩焼きにするなんてときは、わざわざウロコもヌメリも落とさなくてOK。直火で焼いたらどちらも気にならなくなります。
どうしてもヌメリが気になるなら酢を使う方法があります。
実際のところそんなに気にしなくても大丈夫。キッチンペーパーなどで拭いて水分を除去すればかなり軽減できます。
内蔵を取り除く
基本的にニジマスの内臓は食べられません。どんな料理をするにせよ、取り除いておいた方が美味しく食べられますし、日持ちもします。
なるべく早く、内臓だけは釣ったその日のうちに取り除いておくことをオススメします。
その場で焼いて食べるなど、なるべく簡単に早く内臓を取り除きたい場合は「つぼ抜き」という方法があります。包丁などの刃物はいらず、必要なのは割り箸一膳だけ。
それぞれ一本ずつを口に入れて、エラの外側から内臓の入っているお腹に突き刺します。中ほどまで突き刺さったら、二本の割り箸を掴んでぐるっとひねりを加えます。何度かやるうちに内臓がお腹から切り離される感触があるので、割り箸をつかんだまま引き抜くと、そのまま内臓とエラが一緒に取れます。血合いなど取り切れなものが残りますが、バーベキューなどその場で素早く処理をしたい場合に便利です。
包丁やキッチンバサミなどの刃物があるのであれば、それでお腹を開いて内臓を掻き出しましょう。
より臭みを減らしたい場合、下処理した状態で調理までしばらく保存しておきたい場合などは、刃物を使った丁寧な処理をおすすめします。
調理するまでしばらく保存したい場合は、内臓を抜いたうえでニジマスの表面とお腹の中をキッチンペーパーなどで拭いて、なるべく水分を除去しておきましょう。臭みを減らして鮮度を保つコツです。冷蔵庫なら2~3日程度問題なく保存できます。
下処理が済んだニジマスは色々な料理に使えます。では代表的な食べ方を4つほど解説します。
その場で召し上がれ!「ニジマスの塩焼き」
レジャー施設のアトラクションとしてニジマス釣りが出来る場合、ほとんどの場合はその場で調理して食べさせてくれるオプションサービスが用意されています。
唐揚げにする場合もありますが、多くはそのまま炭火などで焼く塩焼き。
マス釣り専用の管理釣り場でも川を区切って釣り場が設けられているような釣り場なら、その場でBBQが出来ることも多く、もちろんそこでニジマスを塩焼きにして食べることができます。
釣れたてのニジマスを串に刺して豪快に焼いて食べるのは最高の贅沢。焼いているうちにポタポタと落ちて焦げる脂の匂いも食欲をそそります。
ニジマスの塩焼きレシピ
ご家庭で焼く場合は、コンロのグリルを使ってじっくり焼いてください。
大定番!「ニジマスのムニエル」
魚の生臭い感じが苦手。そんな人も多いと思います。仕方ない。臭いもんは臭いもんな。
奇麗な水で養殖されたニジマスはそもそも臭みは少ないですが、やっぱり魚である以上はそれなりの生臭さがあります。養殖の際に与えられているエサによっても変わってくるという話がありますが、個人的な経験の範囲でいうと臭いニジマスにあたったことはありません。(※臭みの感じ方には個人差があります)
そんな魚が苦手なあなたでも食べやすいのがニジマスのムニエル。牛乳で臭みを取ることができ、バターの香りで上書きされるので、魚独特の生臭さも気にならなくなる調理方法です。
ニジマスのムニエルのレシピ
焼き始めの段階からバターを入れると焦げやすく香りが飛んでしまうので、あくまで仕上げの風味付けとして最後に入れるのがコツ。
詳しい作り方はこちらの記事で紹介しています。
サーモンそのもの!「ニジマスのお刺身」
釣り堀や管理釣り場で釣れるニジマスのサイズは20センチ台が大半。塩焼きでもムニエルでも使い勝手のいいサイズで、簡単な竿や仕掛けでも釣りあげられます。小さくてもよく引くので十分に釣りが楽しめます。
しかし時には40センチを超えるようなビッグサイズのニジマスが釣れることも。釣り堀を分けて大物だけが狙える場合もあります。
20センチ台のニジマスとは見た目が異なる、黒っぽくて鮭のようにいかつい顔をしたニジマス。引きも強烈ですが、釣りあげたときの達成感もたまりません。
大型のニジマスが釣れたらぜひ試して欲しい食べ方。それはずばり「刺身」です。
いやいや、ニジマスを刺身にするなんてとんでもない、ましやて淡水魚を生で食べるなんて!
うん、分かります。私も最初はそう思いました。淡水魚を生で食べたらあかんやろ、寄生虫がヤバイやろと。しかしいろいろと調べた結果、養殖されたニジマスは寄生虫の心配がないことが分かりました。
普段から海の魚を釣っては刺身にして食べているので、ちゃちゃっとさばいて刺身に。まず見た目が鮭の赤身と同じで驚きました。そして恐る恐る食べたところ、真っ先に思い浮かんだ味の感想は「サーモンやん!これ」というもの。めっちゃ美味しい。見た目も味も淡水魚とは思えない。
それもそのはず、回転寿司などでサーモントラウトという名前で食べられるサーモンは、そのものずばりニジマスだということを後で知りました。そりゃ美味いはずだ。
というわけで、40センチを超えるような大きなニジマスが手に入ったら、刺身にして食べることをおすすめします。
ニジマスの刺身のレシピ
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
たくさん釣り過ぎたら「ニジマスの一夜干し」
ほとんどのマス釣り場では、持ち帰ることができるニジマスの数が制限されています。制限がなくても、1匹あたりとか100グラムあたりで追加料金が必要だったり。
しかし稀に持ち帰り放題の釣り場も存在します。川を区切った釣り場で、地元の漁協なんかが運営しているゆるい釣り場だとこのパターンが多い。私は釣れたら釣れた分だけ躊躇なく持ち帰ります。
しかし何十匹も持ち帰って数日で食べきれるかというと、朝昼晩食べてると1日で飽きてきます。
そんなときは保存がきくよう一夜干しにするのがおすすめ。つまりニジマスの干物です。
干せば冷凍保存が出来るようになりますし、いざ食べようってときも冷凍庫から出してコンロのグリルで焼くだけ。忙しい夕飯時にも手軽に一品追加できます。
干物なんて素人が作れるのかと思うかもしれないですが、やってみれば意外とカンタン。かいつまんで言えば、塩水に漬けて乾かすだけ。
ニジマスの一夜干しのレシピ
一夜干しの詳しい作り方はこちらからどうぞ。
ニジマスはあらゆる料理に使える万能食材
基本的な4つのニジマスレシピを紹介しました。ニジマスはくせのない白身のため、これ以外にもいろいろな料理に使えます。
お酢を効かせたマリネとか。
ごま油と薬味であえて塩ユッケとか。
いろいろなタイプの料理に応用がきくと思います。淡水の魚だからと軽く見ず、いろいろな料理に挑戦してみてください。