屋外でメダカを飼育しよう!2000円で始める水換え不要の睡蓮鉢ビオトープ

睡蓮鉢でメダカを飼おう

池がある家に住むこと。子供の頃からそんな夢を持ち続けていました。

しかし現実は厳しいもの。池はおろか庭のある家をもつことすら叶わぬまま、気がつけばおっさんになっていました。池を持つのはもう諦めたほうがよさそうです。

でも欲しいですよ、池。諦めきれませんよ、池。そこで玄関先のデッドスペースに池を作ることにしました。直径50センチぐらいの池を。

「そんな小さな池ができたとして魚は入るの?」入ります!小さなメダカなら何匹も。「水換えとか面倒臭いんじゃない?」大丈夫!ほぼ水換え不要で手間いらず。

睡蓮鉢ビオトープを使って玄関先に池を作る方法を教えます。作ろう俺の池。

  1. 睡蓮鉢ビオトープでのメダカ飼育は手間いらず
    1. 睡蓮鉢でメダカや水草を育てる
    2. 睡蓮鉢以外にもいろいろな容器が使える
    3. そもそもビオトープってなに?
  2. 水換えなしでもメダカが育てられる理由
    1. 屋外飼育は環境が自然に整うから
    2. 水が自然にろ過される仕組み
    3. 自然に酸素が供給される仕組み
    4. エサが自然に発生する仕組み
    5. でも最低限の手間はかけたほうがいい
  3. 睡蓮鉢ビオトープに必要なアイテム
    1. 予算2,000円から始める睡蓮鉢ビオトープ
    2. 飼育容器は容量が大きいほどいい
    3. 底に敷く底床は園芸用の赤玉土が定番
    4. 有能過ぎる水草ホテイアオイ
    5. 適当に浮かせるだけで育つマツモ
    6. ビオトープならいろいろな水草を楽しめる
    7. おすすめしたいメダカのエサ
    8. 飼育水は水道水を使おう
  4. 最初のメダカはこの3種から選ぼう
    1. クロメダカ
    2. アオメダカ
    3. シロメダカ
    4. 安売りのヒメダカはおすすめしない
    5. 屋外で育ったメダカは強い
  5. メダカと一緒に飼いたい生き物
    1. ヒメタニシ
    2. ミナミヌマエビ
    3. 他魚種と一緒に飼うのは慎重に
  6. 睡蓮鉢ビオトープの立ち上げ方
    1. 立ち上げに最適な時期はゴールデンウィークあたり
    2. 日光があたる場所を考えて設置場所を決める
    3. 容器に赤玉土を敷いて水を入れる
    4. 10日ほど屋外で放置する
    5. パイロットフィッシュを入れる
    6. メダカを投入する
    7. 始めのうちは水換えが必要なときも
  7. 屋外のメダカ飼育は季節を楽しめる趣味
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睡蓮鉢ビオトープでのメダカ飼育は手間いらず

玄関先に池を作ると言っても、地面を掘って池を作るわけにはいきません。

ここは睡蓮鉢を使った屋外でのメダカの飼育環境、すなわちビオトープを俺の池とします。

この睡蓮鉢を使ったビオトープは立ち上げ時の手間こそかかりますが、一度環境を整えてしまえば手間いらず。水換えはほとんど不要、エサはこまめにやらなくても大丈夫、酸素供給のためのブクブクが必要ないから電源も不要。

室内での水槽飼育に挫折したようなズボラな人にこそおすすめできます。

睡蓮鉢でメダカや水草を育てる

まずは仕上がりをご覧ください。これが俺自慢の池です。誰が何と言おうとこれは俺の池です。

玄関先に置ける睡蓮鉢の池
玄関先に置ける睡蓮鉢の「池」

メダカ人気が定着した

世はメダカブーム。屋外のビオトープや室内の水槽でメダカを趣味が人気を博しています。一時的なものなのかもと思われましたが、もう5年以上継続しているので定着していると言っていいでしょう。

ブームを牽引しているのは美しい改良メダカ。ニシキゴイや金魚のように品種改良が行われ、色とりどり、姿かたちも様々なメダカがどんどん生み出されています。あなたが小学生のころに育てたかもしれない薄オレンジ色のメダカとはまるで次元が違うメダカもたくさん。

なおこの記事は改良メダカを楽しむというより、屋外の飼育環境を作って楽しむという点に重点をおいています。あしからず。

僅かなスペースとコストで実現できる

メダカならニシキゴイのように広い池は必要ありません。

戸建ての玄関先やマンションのベランダなど50センチ四方の狭いスペースがあれば水槽が置けます。金魚のように酸素供給のためのブクブクも必要ないから、コンセントの位置にも縛られません。

とりあえずどんなメダカでもいいから飼育してみたい。それならお金もたいしてかかりません。メダカ本体を含めても2000円前後ですべて揃います。

そして条件が整えばほぼ放置のメンテナンスフリーで飼育できるから手間もかかりません。水質の問題が起こらない限り1年間ほとんど水換え不要、さらに環境が整えばエサやりすらも不要にできます。これは屋外での飼育だからこそ実現できること。

水草の林の中をスイスイと泳ぐメダカ
水草の林の中をスイスイと泳ぐメダカ

睡蓮鉢以外にもいろいろな容器が使える

睡蓮鉢はその名の通り本来は睡蓮などの水生植物を育てるための容器で、本来は陶器製のものです。

屋外でメダカを育てるための水槽として使われるのが定番となっています。

水が漏れない容器ならなんでも使える

メダカ人気がすっかり定着した今、睡蓮鉢は通販でも買えますしホームセンターでもいろいろな種類が売られるようになりました。プラスチック製のお手軽なものもあります。

しかし必ずしも睡蓮鉢でなければいけないということはありません。いきなりこの記事のタイトルと矛盾してしまいますが、睡蓮鉢は屋外でメダカを飼う容器として選択肢の一つでしかない。

実際のところ、ある程度の水量が確保できる深さと広さ、そして水が漏れない構造であればなんでも使えるんです。なんならバケツやタライでも。クール宅急便でカニなどが届いたときに入れてあるような発泡スチロールとかなら実質無料。お店で譲ってもらえたりもするはず。

栓で底を塞ぐことができるものなら家庭菜園用のプランターでもOK。セメントなどの資材を混ぜるためのトロ舟、プラ舟もメダカ飼育の定番。

立ち上げ直後のプラ舟ビオトープ
立ち上げ直後の40リットルトロ舟ビオトープ

容量が大きいので、暑い季節になればこんな風に植物をたくさん配置した賑やかなビオトープを作ることができます。

植物モリモリのビオトープ
植物モリモリのビオトープ

屋外のメダカ水槽として使えるアイテムはこちらで紹介しています。

そもそもビオトープってなに?

ところで「ビオトープ」ってなんでしょう?

その言葉の意味を調べると、ドイツ発祥の概念とか造語とか、生物学がどうとかいろいろな情報がでてくるはず。本来の意味はそれに違いないので各自お調べください。

現状では屋外でのメダカ飼育環境そのものをビオトープと呼ぶ傾向があり、厳密に言えばそれは間違った呼び方です。しかしそれはそれで今の正解ともいえます。

とはいえたった50センチ四方の小さなスペースで飼育環境が成立するのか?しかも家の玄関先なんかで?そんな疑問はごもっとも。でも環境が安定していくことで、水換え不要、エサやり不要、ブクブク不要という環境ができあがります。

なぜこんな環境が実現できるのか?そこにはちゃんとした理由があります。

水換えなしでもメダカが育てられる理由

屋外飼育は環境が自然に整うから

例えば屋内で魚を飼育するうえで用意しなくてはいけないもの、そして定期的に必要な作業として以下のようなものがあります。

魚の屋内飼育で必要な作業
  • 水が汚れるから定期的に水換えをしなくてはいけない
  • 酸素供給のためのエアレーション装置(ブクブク)を用意しなくてはいけない
  • 定期的にエサやりをしなくてはいけない

しかし屋外飼育のメダカだとこれらの手間がかなり軽減、あるいは不要になります。それぞれの項目に対する理由がこちら。

屋外飼育なら手間が減る理由
  • 水換え不要→水が自然にろ過されるから水換えをしなくていい
  • ブクブク不要→酸素が自然に供給されるからエアレーションが必要ない
  • エサ不要→エサが自然に発生するからエサやりをしなくていい

自然に自然にってそんなアホな?都合良すぎない?胡散臭くない?自然派?スピリチュアル系?

知らなかったらそう思うのも無理はないでしょう。

でも飼育環境が安定しさえすれば、その「自然に」が実現できます。何にでも効く謎の薬品とか謎のありがたい石とかは必要ありません。水にありがとうと話しかける必要もありません。

水が自然にろ過される仕組み

メダカにとっての水は人間にとっての空気のようなもの。健康に生きるためにはメダカの生きる環境に適した水が必要です。

バクテリアと水草が水をきれいにする

屋外飼育でメダカを飼う際に水をきれいにしてくれる2つの要因があります。それが「ろ過バクテリア」と「水草」。それぞれの役割がこれ。

水がきれいに保たれる2つの要因
  1. ろ過バクテリア…毒性が強い成分を毒性が弱い成分に変える
  2. 水草…バクテリアが作り出した毒性が弱い成分を肥料として吸収し無害化する

水の「ろ過(濾過)」と聞くと浄水器やコーヒーフィルターのように目の細かいフィルターを通して汚れを濾し取るイメージが浮かびます。

しかしバクテリアなど微生物の力によって毒性のある成分を無害な成分に変えることもろ過と呼ばれ、厳密にはこれを「生物ろ過」といいます。フィルターなどで濾すのは物理ろ過。

ろ過バクテリアの働きとろ過のサイクル

そもそも水が汚れる原因って何でしょうか?

メダカを飼っていれば当然糞をします。目に見えませんがエラからも体に有害な成分を排出しています。死んで死体になり腐ることもあります。水草も枯れて腐ります。食べ残したエサも同様。これらは微生物によってアンモニアを発生させ、それ自体はメダカにとって毒性が強いものになります。

しかし水槽内に住み着いたろ過バクテリア(ニトロソモナス属のバクテリア)と呼ばれるバクテリアの働きにより、アンモニアを亜硝酸塩という成分に変化させることができます。しかしこれにもまだ毒性がある。

さらに別のろ過バクテリア(ニトロバクター属のバクテリア)によって、亜硝酸塩は硝酸塩に変化します。これでめでたし一件落着と思いきや、これにもまだ多少の毒性が残っています。放置すれば蓄積して水を汚してしまう。通常の水槽では水換えによってこれを除去するわけです。

しかしビオトープ内の水草や植物プランクトンにとって硝酸塩は肥料。特に水草の生長が早い時期だとぐんぐん吸収してくれます。これにてアンモニアを無害化する処理が完了。

水草が生長する時期はろ過のサイクルが成立しやすい
水草が生長する時期はろ過のサイクルが成立しやすい

さらに植物プランクトンはメダカや水生生物のエサとなります。そしてそれがまた糞になり…無害化され肥料になり…そんな処理サイクルが成立します。完全に水に浸かっている水草なら葉から酸素も供給してくれます。

おさらいとしてここまでの過程を図にまとめましょう。

ビオトープ内で水がろ過される過程
  1. メダカのフンや食べ残しのエサなどが原因で有毒なアンモニアが発生
  2. ろ過バクテリアがアンモニアを亜硝酸塩に変える
  3. ろ過バクテリアが亜硝酸塩を硝酸塩に変える
  4. 水草が養分として硝酸塩を吸収し無害化

室内環境だとこのサイクルを完全に成立させるのが難しいため、定期的な水換え作業が必要となる場合がほとんど。しかし屋外なら太陽の光をうけて水草の生長が旺盛になるため、バランスが整えば安定したろ過のサイクルが成立します。

ビオトープでのメダカ飼育は水草飼育とセットになっていますが、こういった相乗効果があるから理にかなっているといえます。

ろ過バクテリアは自然に増える

ろ過バクテリアは空気中のちりなどからわずかな量が取り込まれて徐々に増えるため、十分なろ過環境ができあがるには時間がかかります。これは水温が高い時期ほど短縮されますが、少なくとも1ヵ月はかかると考えてください。

もし既に環境が安定している水槽があるなら、そこからバクテリアが入っているであろう水を新しい水槽に足すのが手っ取り早い。それを”種水”としてバクテリアを増殖させ、早めに環境を整えることができます。

一方、ボトルに入ったバクテリア添加剤なるものも売られています。

これについては私自身で試したことがないので、言及は避けさせてもらいます。私自身は時間が掛かっても自然に任せたほうが面白いなという考えです。せっかくそれが成立しやすい屋外飼育なわけだし。

とはいえ自然だからいいということではなく単なる個人の意向なので、皆さんそれぞれ好きな方法を選ぶのがいいと思います。

ただ、百均で売ってるようなバクテリア添加剤の中には、バクテリアが入っておらず主な成分がアンモニアというものもあります。特定のバクテリアを増やす理屈としては間違ってないけど、生物に悪影響を与える可能性があるので注意はしておきましょう。

自然に酸素が供給される仕組み

一般的な環境だと、ポンプから空気を送って泡をブクブクと出すことで水に酸素を供給します。

あれは泡から直接酸素が供給されるというより、泡が水面に到達して弾けることで空気に接する水の表面積が増え、結果として酸素が水に溶け込む量が増えるというメカニズム。ぶどうの房のような形状で効果的に酸素を取り込む人間の肺胞。それを思い出してもらえれば、イメージがつけやすいのではないかと思います。

だから、泡以外でもなんらかの形で水面をざわざわと動かして水の表面積を増やしてやればいいわけです。

屋外に置いた水槽なら風が吹いて水面が揺れます。それで水の表面積が増えます。風が吹くことでゆるやかな水流が起き、水槽内の水をかき混ぜて対流させる働きもあります。

また、水草を入れておくことで光合成により酸素を供給してくれます。が、これはあくまで副産物的なもの。日の当たらない夜はむしろ酸素を消費してしまうので、たくさん水草を入れておけば酸素供給は大丈夫という期待はしないほうがいいでしょう。

水面を覆った大量の水草は、むしろ酸素供給を阻害する場合もあります。

エサが自然に発生する仕組み

エサが自然発生するとは言っても無から発生するわけはなく、外部から飛来するものに由来します。

緑色に染まる水は植物プランクトンの色

ひとつは植物プランクトン。

バケツに水を入れて放置してたら、いつの間にか絵の具を溶いたような緑色になっていた経験はありませんか?あれは植物プランクトンの色。ではその植物プランクトンはどこから来るかというと、休眠状態で空気中のちりなどに付着して飛来するようです。それが水の中に落ちて増えるというわけ。

水が緑色になった!腐ってる!と思われるかもしれませんが、メダカ飼育においては好ましい水の状態とされることもあります。メダカ界隈ではそれを青水、グリーンウォーターなどと呼びます。メダカにとってはそこら中におやつが漂っているようなものなので、極小のエサが必要な稚魚の飼育にも役立ったりします。メダカの体色を濃くさせる効果もあります。

ボウフラはメダカの大好物

もう一つは飛来する昆虫類。

屋外に水を置いている以上、蚊がそこに卵を産みボウフラが発生してしまうのは避けらません。しかしメダカがいればほとんど食べてしまいます。だから成虫となって飛び立つ確率をかなり下げられます。

じゃあ蚊の駆除になるのでは?と思ったりしますが、当然ながらメダカは水槽から移動できないのでそんな効果はありません。100%残さず食べつくせるわけではないからむしろちょっと蚊は増えるはず。メダカが空を飛んでボウフラの発生源に移動できるなら別ですが…

刺さない蚊そして頭の上に群れる蚊(厳密には蚊じゃないけど)でお馴染みのユスリカも卵を産み、極小のミミズのような形態の幼虫が水底に発生します。それが川釣りのエサでおなじみのアカムシ。

屋外の水槽に必ず発生するアカムシ
屋外の水槽に必ず発生するアカムシ

このアカムシはメダカの大好物。ピンセットでつまんでメダカに与えると、うどんでも食べるかのようにずずっと吸い込みます。

これ以外にも底の土や壁をしきりについばんだりしているので、人間の目には見えない小さな微生物や苔類も食べているようです。なんにしろメダカは雑食なので、植物性のエサも動物性のエサも食べます。

繁殖目的なら栄養価が高いエサをあげるほうが圧倒的に効率良く育ちますが、とにかく死なせずに飼うというだけなら放置でも育ちます。ズボラな人や家を空けることが多い人でも安心。

でも最低限の手間はかけたほうがいい

と、ここまで「手間をかけずほったらかしで飼育できる」ということを強調してきましたが、全くノータッチだとリスクもあります。

減った水の継ぎ足しが必要

放っておくと水は蒸発します。

水上に葉を出す水草を入れているとさらに水が減るスピードが速くなります。となると自然に水を供給できる手段は雨が降るのを期待するほかなく、それ自体は不確定な要素。晴れの日が続けばそのうち干上がってしまうかもしれません。どうしても水の継ぎ足しという作業が必要になります。夏場は特に頻繁に。

継ぎ足す水は水道水で構いません。私はできるだけ大容量のジョウロに汲み置きしてカルキを抜いておき、水位が下がったなと思ったら継ぎ足しています。

バケツでもいいですが、慎重に注がないと底土やヘドロが舞い上がって環境が悪化します。ジョウロなら優しいシャワーで水が注がれるので問題なし。

仮に雨だけで水が供給できたとしても酸性雨が気になるところ。植物プランクトンが増えて緑色になった水が雨上がりに透明になっているなんてこともあります。つまり雨の影響で植物プランクトンが死滅した状態に。酸性に傾いた水はメダカにも他の生物にとっても過酷なようです。長雨のあとにメダカが死んでいたという経験をする人は多いはず。

また、明らかに水が汚れていると分かった場合は、水換え不要にこだわらず素直に水換えをした方がいいです。特に飼育初期は定期的にやったほうがいい。

エサやりはメダカ飼育の醍醐味

エサをあげずに飼育できるのも事実ですが、エサやりをした方が健康に育ち早く大きくなります。長生きもします。繁殖も旺盛になります。痩せたメダカを見るより、プリプリに太った健康的なメダカを見る方がいいでしょう。

そもそもメダカ飼育においてエサやりは最も楽しい作業のひとつ。慣れるとエサの容器を見せただけでメダカが寄ってくるようになります。とてもかわいい。でも気が向いたときにやる程度でも問題なし。もちろん毎日やってもよし。

やっぱりそれなりの手間をかける必要はある

というわけで、実際のところ安定した飼育をするには最低限以下のような作業が必要になります。

安定した飼育のために必要な作業
  • 蒸発して減った水の継ぎ足し
  • 水が汚れているのであれば水替え 特に飼育初期
  • 気が向いたときのエサやり
  • 増え過ぎた水草の除去
  • 水換えを含む年一回程度の環境リセット

水草が増え過ぎると水面を塞いでしまったりメダカが泳ぐスペースを圧迫したりするので、特に夏場は定期的な除去作業が必要。日が当たっていない夜間は水草が酸素を消費するので酸欠になる可能性も。

メダカの糞やエサの食べ残しはエビが食べたりバクテリアが分解したりしてくれますが、ヘドロとなって少しづつ堆積していきます。底土の交換とあわせて年一回程度のリセットも必要になってきます。

たまに水を足す、たまにエサをやる、増え過ぎた水草を除去する。

これは植物を育てる作業と似ています。土が乾いたら水をやる、たまに肥料を足す、不要な枝を落としたり雑草を抜く。メダカの飼育は植物を育てるときと同じぐらいの手間で済むと考えればイメージしやすいかもしれません。

睡蓮鉢ビオトープに必要なアイテム

この記事では「低コストではじめる」ということを重視してビオトープの環境を整えたいと思います。

安定すればわずかな水道代とエサ代ぐらいしかランニングコストがかからないので、環境さえ整えてしまえばこっちのもんです。

予算2,000円から始める睡蓮鉢ビオトープ

ではさしあたり予算を2,000円程度に設定しましょう。

最低限必要なものは以下の通り。

メダカの屋外飼育に最低限必要なもの
  • 飼育容器 … 睡蓮鉢ではなくても水が貯められるならバケツやプランターでも
  • 底に敷く土 … 園芸用の赤玉土が最も安あがり
  • 水草 … まずはホテイアオイだけあればいい
  • メダカ用のエサ … お好みで選びましょう
  • 水道水 … 足し水は屋外に一日置いてカルキ抜きしておく
  • バケツ…カルキを抜いた水を汲み置きしたり水換えの一時避難所にしたり何かと役立つ
  • メダカ … まずは安い品種を5匹ぐらいまで

それぞれ補足していきます。

飼育容器は容量が大きいほどいい

雰囲気がある陶器製の睡蓮鉢だと、それだけで最低2,000~3,000円になってしまいます。とりあえずそれは次の機会にということで、まずは樹脂製の安いものから始めるのがおすすめ。もちろん予算に余裕があるなら陶器製のものを選んでも構いません。

安さ重視で選ぶと、園芸用のプランターで底穴が完全に塞げるものが最もリーズナブル。このように付属の栓で塞げるようになっています。ホームセンターに行けば20リットルぐらいのサイズが500円ぐらいで買えるはず。

栓で底を塞げるタイプのプランター
栓で底を塞げるタイプのプランター

睡蓮鉢の形に近い円形のプランターもおすすめ。

似たような形状でメダカ専用の樹脂製容器もいろいろ売られています。

ここでひとつ重要なポイント。

容器に入る水量が多ければ多いほど飼育環境は安定します。水質の悪化、急激な水温の変化、これらネガティブな要因が進行するスピードが遅くなるからです。

設置スペースが許す範囲で、なるべく水量が多くなるものを選ぶようにしましょう。

また、酸素をたくさん取り込めるよう開口部が広くて水面が広くとれるすり鉢型が最適。加えて、水温が安定するよう15センチ程度の深さが確保できる形状が望ましいです。

100均やニトリなんかで売っているプラスチック製の収納ケースも使えます。こういうやつ。

しかしこれらは屋内使用前提。紫外線に弱く一年も経てば脆くなってしまいます。持ち上げたらバキッと割れて崩壊なんてこともあります。短期間、1~2シーズンが限界の一時的な容器と考えたほうがいいでしょう。

屋外メダカ飼育で使える容器についてはこちらにまとめています。

底に敷く底床は園芸用の赤玉土が定番

睡蓮鉢の底には底床と呼ばれる土や石を敷き詰めると水質が安定します。安定すると水の透明度が上がることも多い。底床を使うことで水に接する表面積が広がり、ろ過バクテリアが定着しやすいことがその理由。

メダカ専用と称したものも売られておりそれはそれでいいものですが、リーズナブルに仕上げるという観点なら園芸用の赤玉土がベスト。ビオトープの底床としては大定番です。

ビオトープの定番赤玉土
ビオトープの定番赤玉土

なぜ赤玉土が定番になっているのかというと、このような理由があるから。

赤玉土がメダカ飼育の定番になっている理由
  • 小さな穴が無数に開いた多孔質でその中にバクテリアが定着しやすい
  • 園芸用土だけど栄養分を含まないから水が汚れないし富栄養化しない
  • 大容量で安い

バクテリアは水槽内側の壁なんかにも定着するのですが、多孔質な材質を使うことでその壁に相当する表面積が増えるためバクテリアも増えやすいというわけです。

ホームセンターならずっしり十数リットル300円ぐらいで売られています。そんな大量にあっても困るという場合は、100円ショップで2リットルほど入ったものがあります。大粒、中粒、小粒という粒のサイズバリエーションがありますが、オールマイティな中粒が使われることが多いと思います。

これを鉢の底数センチぐらいの厚さに敷き詰めればOK。水を注ぐと細かな泥が舞い上がって濁りますが、数日置けば澄んできます。泥が気になるならいったんフルイにかけ微細な粉を落とし、なおかつ水をかけて落とせばかなり軽減できます。

赤玉土は底床のほかにも水草を植える用土としても使えるので余っても無駄になりません。園芸用として売られているものを水槽に使うのは抵抗があるかもしれませんが、今まで色々なメーカーの赤玉土を使ってきて特に問題が起きたことはありません。

赤玉土はデメリットも多い

ただデメリットもあります。

1年ほど使うと小さな穴もヘドロなどで塞がって多孔質素材としての機能が低下します。形もどんどん崩れてくる。形が崩れやすいから普段の掃除もしにくい。基本は1年で交換するものと考えておいた方がいいです。毎年春にビオトープをリセットする際に古い赤玉土を集めるのですが、深い場所にあった赤玉土は崩れて黒くなりドブのようなきつい匂いがします。

リセットの際に天日干しをして再利用をする人もいるらしいですが、干すには広い場所が必要です。ベランダなどでやるのはおすすめできません。

不要になったらどうやって処分するかということも予め考えておいた方がいいでしょう。土は自治体のごみ回収に対応していないことが多いので処分が厄介です。田舎で敷地が広大ならどこにでも捨てられますが、都会のマンションのベランダなどでやるのなら、半永久的に再利用できる大磯砂などのほうがおすすめです。実際私は大磯砂を使っていますが、赤玉土と比べて特にデメリットは感じていません。

ビオトープでは赤玉土を使うのが半ば常識のようになっており、その費用対効果を考えれば理にかなっています。しかし使用期間の短かさ、掃除のしにくさ、廃棄の煩わしさというデメリットはあまり言及されることがないので考慮しておくべきでしょう。

有能過ぎる水草ホテイアオイ

メダカ飼育とベストマッチする水草は間違いなくホテイアオイ。

止水域の水面を埋め尽くすように増える水草で、暑い時期に涼しげな青い花を咲かせることがあります。

夏の日に開花した「青い悪魔」
夏の日に開花した「青い悪魔」

ホテイアオイという和の響きがある名前ですが、実際はバリバリの外来種。圧倒的な繁殖力で水面を侵略するため「青い悪魔」の異名を持ちます。だから不要になっても決して水路や池などに捨てないでください。日本各地で大量増殖して問題になっています。

それはそれとして、メダカ用の水草としてはこれ以上ないぐらい相性バツグン。それにはこんな理由があります。

ホテイアオイがメダカ飼育と相性がいい理由
  • だいたい1株100円ぐらいでめっちゃ安い
  • 日当たりさえ確保すれば肥料をやらなくても勝手に増える
  • 水面下に伸びる根にメダカが卵を産み付けることができ繁殖に役立つ
  • 栄養分の吸収が旺盛なので水の富栄養化を防いでくれる
  • 土に植える必要がなく浮かべておくだけのカンタン管理
  • 水面に葉を広げるので暑い時期の日よけになり水温上昇を防ぐ

複数のホテイアオイと稚魚飼育用の水槽があれば、ホテイアオイをローテーションさせることでガンガン繁殖させることが可能。卵が産み付けられたホテイアオイを稚魚用の水槽に移動して、孵化したらまた親用の水槽に戻すというローテーションを繰り返すのです。

植物だけど肥料をやる必要はありせん。先ほど説明したように、メダカの排泄物などが分解されて肥料になる。栄養分吸収による水質浄化にも大きく貢献します。その是非はともかくとして、池の水質浄化にホテイアオイを導入している自治体もあります。

なお、ホテイアオイは光合成で水中への酸素供給にも貢献するような説明がされている場合がありますが、ガス交換を行うのは主に水上に出ている葉っぱの部分。水中の酸素供給にも消費にもほぼ関係しないはずです。ただし増え過ぎて水面を覆いつくすと酸欠の原因になるので、夏場はこまめに間引きをしましょう。伸びすぎた根っこも枯れた葉もブチブチと適当にむしり取ってOK。夏場ならすぐ再生します。

価格は1株100円ぐらいで買えるリーズナブルさ。睡蓮鉢に1株浮かべておくだけで、初夏以降は倍々に分裂するかのように爆増。そして増えた葉が直射日光を遮って水温上昇を防ぐ。

メダカ飼育初心者にはマストな水草です。まずはこれさえあればいい。

寒さに弱いので冬場は外に出しておくと大部分デロデロに溶けて枯れますが、越冬できなくもない。冬の終わりまで少しでも緑色の個所が残っていればまた4月ぐらいから再生します。

適当に浮かせるだけで育つマツモ

ホテイアオイと並んで初心者におすすめな水草がマツモ。

浮かせておくだけで簡単なマツモ
浮かせておくだけで簡単なマツモ

完全に水の中で育つタイプの水草で、アナカリスなど同じ金魚藻のひとつとして知られています。名前は知らずとも見たことあるという人が多いはず。繊細な細い葉を持った水草で、どことなく和の雰囲気が漂います。

なぜおすすめかというと扱いが簡単だから。根っこがない水草なので土などに植える必要はなく、適当に水中へ漂わせておくだけ。急激な環境の変化があると細い葉ゆえ溶けるようにバラバラになることがありますが、基本的には強い水草です。水温が高くなる季節は適当に千切って放っておくだけで屋外ならどんどん増えます。

栄養の吸収も旺盛で水質の浄化にも貢献します。日中は光合成が盛んで葉に小さな酸素の気泡をたくさんつけます。ホテイアオイと同じくメダカの産卵床にもなる。メダカの隠れ家にもなる。冬場は葉をたたんで底に沈んでしまいますが、寒さに強く越冬可能。春になればまた生長を始めます。

枝の途中から伸びてきた脇目をてきとうに千切って浮かせておけば簡単に増やせる。その増殖能力の高さゆえ、夏場などは定期的な間引きが必要になることぐらいがデメリットでしょうか。

ビオトープならいろいろな水草を楽しめる

5月から8月ぐらいの時期にホームセンターを覗けば、ビオトープ用として売られている水草はホテイアオイ以外にもたくさんあります。

ホームセンターの屋外スペースにある水草売場
ホームセンターの屋外スペースにある水草売場

早いところだと4月から売り場が展開されています。私がメダカ飼育を始めて数年経ちますが、年々目立つところに売り場が展開されるようになってきています。メダカ人気の証。

「メダカ用」として売られている水草も今はたくさんあるので、見た目でお好みのものを探してみてください。水草の飼育もビオトープの醍醐味です。

初心者でも簡単に育てられるおすすめの水草についてはこちらに詳しくまとめています。

ほとんどの水草は育て方もカンタン。ホテイアオイのような浮草タイプの水草はそのまま浮かべるだけ。水中から芽や茎を出して育つ抽水植物タイプの水草はポットに植えられて売られており、そのポットごと睡蓮鉢に沈めるだけ。

ホテイアオイなんかは放っておいてもどんどん増えますし、その他の水草も適当に千切ったり枝を土に挿しておくだけで増やせるものが多い。

睡蓮鉢の名の通り睡蓮を育てるのもおすすめ。温帯性の姫睡蓮なら屋外で冬越えもでき、年に数輪は美しい花を咲かせてくれます。

初夏に花を咲かせた姫睡蓮
初夏に花を咲かせた姫睡蓮

1年ごとに株分けをすれば、どんどん増やしていくこともできます。

株分けされた姫睡蓮
1株の睡蓮も3年かければここまで増えます

おすすめしたいメダカのエサ

早く大きく健康に育てたい、産卵をどんどんさせたいのであれば、やはり市販のエサが有用。

メダカ専用エサはめちゃくちゃたくさんあり、色が濃いメダカの色をより濃くする色揚げ用のエサなんてのもあります。でも普通に飼育するならどこでも売ってる安いやつでOK。

その中でも、長時間水に浮いて水を汚しにくいエサを初心者にはオススメします。その観点でいくとこれが一番おすすめ。

※Amazonは高いから実店舗やヨドバシコムで買いましょう

メダカのエサは選択肢が膨大なので、いろいろ試すのが楽しいと思います。エサによって食いつき方が違ったりして奥が深いものです。やりすぎだけは禁物。

飼育水は水道水を使おう

飼育に使う水は水道水で構いません。

むしろ雑菌や有害な成分の心配がない水道水のほうが、川の水や湧き水、井戸水を使うより安全です。というわけで基本は水道水を使いましょう。

ただし汲みたての水道水には塩素が含まれており、これはメダカにとって有害です。そこでいわゆるカルキ抜き、塩素を抜く作業が必要とされています。

ただ屋外なら太陽光にさらされることで室内よりかなり早く塩素が抜けていくので、わざわざカルキ抜きの薬剤を使うまでもないと思います。

実際のところ私は屋外飼育でカルキ抜きを使ったことがありませんし、面倒な時は足し水をするときもそのまま水道水をホースで注ぐことすらあります。それでメダカに害があるという実感はないというのが正直なところ。とはいえ水道水中の塩素濃度は自治体によって違うはずなので自己責任でお試しください。

のちほど説明しますが、汲みたての水道水には水を浄化するバクテリアがほぼ存在しない状態。塩素が抜けたとしても、その水でたくさんメダカを飼育すると水が汚れてメダカが弱っていく可能性があります。これを回避するにはバクテリアが増えるまである程度の時間経過が必要ですし、水換えも有効な手段です。

最初のメダカはこの3種から選ぼう

肝心のメダカ選び。

観賞魚を取り扱うペットショップやホームセンターなら、今どきどこでも10種類ぐらいのメダカは取り扱っていると思います。最近は地方の道の駅などでペットボトルに入れられて売られているのを見る機会も増えました。

メダカコーナーに行くとたくさんの種類のメダカが売られています。中二病をこじらせたような仰々しい名前の美しい改良メダカ達に目を奪われますが、まずは落ち着いて値段を見てください。そして今は諦めてください。

最初のうちは初期段階で死なせてしまう確率が高いので、まずは安いメダカを3~4匹程度飼うことから始めて飼育に慣れるのがおすすめ。改良メダカは飼育に慣れた次のフェーズになってから。

最初に飼うメダカとしておすすめなのは、クロメダカ、アオメダカ、シロメダカの3種です。

クロメダカ

クロメダカは、メダカ原種となる、もしかしたら昔はその辺の用水路や田んぼにいたかもしれないメダカ。

メダカの中のメダカ 黒メダカ
メダカの中のメダカ 黒メダカ

「黒めだか」といいながら日光にあたると黄金色にみえたりして、地味ながら美しいメダカです。

とはいえ、売られているクロメダカはあなたがお住まいの地域に住んでいるメダカとは遺伝子的に異なるはず。さきほど「原種」と表現しましたが、お店で買ったクロメダカはもう自然に生息しているメダカとはかけなはれた別物と考えるべきです。

だから放流は厳禁。これは改良メダカを含めて市販のメダカ全般に言えること。メダカは在来種で絶滅危惧種だから放流していいというのは大間違い。放流するぐらいならあなたの手で殺すべき。それじゃあメダカが可哀そう?甘えるな。メダカのせいで割を食う可能性がある在来生物の方が可哀そうです。

もちろん本来は最後まで責任を持って飼育するようにしてください。

市販および川などで採取したあらゆる水草やエビなどの生物も同じく安易な再放流はしないでください。もう手遅れという感もありますが、都市部の河川や池に生息している生物や生えている水草は外来種だらけです。命を大切にしたい、生物を増やしたいという思いは尊重しますが、それはしっかりと勉強してからにしてください。

アオメダカ

次に紹介するのは、涼しげな色をしたアオメダカ。

いうほど青くない青メダカ
いうほど青くない青メダカ

アオメダカという名前からイメージするほど青くはありません。

言われてみれば青っぽいかな?という灰色がかった青さと口先から背中を通って尾まで貫く黒いラインが特徴。これはこれで奇麗だと思いますし、繁殖させているうちにラメっぽいキラキラしたウロコを背負う個体も出てきやすい。

シロメダカ

そして名前の通り白いシロメダカ。

結構白い白メダカ
結構白い白メダカ

どことなく上品な雰囲気で、藻が生えて黒っぽくなりがちな睡蓮鉢に映えます。安価なメダカの中で最も美しいメダカといえるかもしれません。

以上の3種なら健康状態がいいメダカがリーズナブルな価格で手に入るはずです。見た目は違えど交配はできますので、混ぜて飼っても繁殖させられます。結果としてどちらかの特徴を引き継いだように見えるメダカが生まれたり、いかにも雑種らしいぶち模様のメダカが生まれたりします。

それぞれの色や特徴を保ちたいなら混ぜずに分けて飼いましょう。それでも一定の確率で意図しない色や形のメダカが生まれますが、それはそれで楽しみたいものです。

安売りのヒメダカはおすすめしない

一方でこの三種よりずっと安い薄オレンジ色のメダカが大量に売られていると思います。

ヒメダカです。

ヒメダカは観賞魚のエサ用として流通することが多く、その場合あまり丁寧な扱いを受けていません。ガリガリに痩せていたり病気持ちだったり。それゆえ短期間で死にやすい…というのが半ば常識になっています。

そして本当かどうか確かめたことがあります。その結果、かなりの割合で死なせてしまうこととなりました。もちろん生き残る個体もいますが。

十分にきれいな色のメダカだと思うので健康な状態のヒメダカが普通に売られていてもいいと思うのですがあまりみかけません。売られているヒメダカがエサ用かどうかは販売している人に聞いてみましょう。正直に答えてくれるはずです。

屋外で育ったメダカは強い

これだけのメダカブームなので、近しい人が屋外でメダカを飼っているかもしれません。屋外の飼育場で育てたメダカを売るショップもあるでしょう。

その場合、ネットやペットショップやホームセンターでメダカを飼うより、その屋外メダカを分けてもらったり買ったりする方がベターです。屋内飼育されたメダカと屋外飼育されたメダカを比べると、屋外環境に慣らされて飼われているメダカの方が当然ながら屋外飼育にむいています。

ビジネスではなく趣味でメダカを飼っている人なら、喜んで分けてくれる人も多いと思います。慣れれば増やすのは簡単ですから。

メダカと一緒に飼いたい生き物

メダカと一緒に飼うことでよりよい環境を作ってくれる生き物がいます。

ヒメタニシ

代表的なものはヒメタニシ。

水をろ過してくれるヒメタニシ
水をろ過してくれるヒメタニシ

摂食ろ過というエサの食べ方をするため、植物プランクトンで緑色に濁った水を吸い込んでは濾し取り、澄んだ水を排出します。ときに鉢の中に生えた苔類もハムハムしながら掃除してくれる、メリットしかないヤツ。

お店では1匹数十円という価格で売られています。何匹か買ってオスとメスのペアが含まれていれば勝手に繁殖します。卵を産み付けず、そのまま貝の形で子どもが生まれてきます。

在来種で寒さにも強いので、屋外の環境でも問題なく越冬できます。冬場は底土に潜りこみがちなので全滅したかと思いがちですが、春になれば元気に活動を再開します。

一方で、タニシを導入したつもりはないのに5ミリ程度の小さな貝がうじゃうじゃ湧いているという経験をする人は多いはず。それらはまとめてスネール類と呼ばれ、買ってきた水草などに意図せずついてきたものが繁殖してしまいます。多くは外来種で基本的には忌み嫌われている存在。

動きや卵が気持ち悪いのでそのうち駆除したくなると思いますが、残念ながら根絶するのは極めて困難です。私はもう仕方ないと諦めています。

ミナミヌマエビ

あとはエビ類。おすすめはミナミヌマエビ。

関西の釣りエサではブツエビとしてお馴染みの完全な淡水エビ。メダカのエサの食べ残しなどを小さなハサミでツマツマ摘まんで掃除をしてくれます。これも数匹入れておけば勝手に繁殖して爆増します。孵化した稚エビはメダカのエサにもなります。

睡蓮の葉の上で逢引するミナミヌマエビ
睡蓮の葉の上で逢引するミナミヌマエビ

ヌマエビはメダカより環境の変化に弱いとされており、弱ったり死んだりすると茹でエビのように殻が赤くなります。メダカと一緒に入れておくことでいち早く環境の異変を知らせるアラートになったりもします。

なお、このエビは苔取り要員として認知されているところがありますが、たぶんあなたが期待するほど苔を除去してくれません。苔取りならヤマトヌマエビのほうが有能ですが、こちらは繁殖が難しいのでどっちもどっち。

寒さにも強いのでこちらも屋外で問題なく越冬可能。

ペットショップなどで買うと1匹数十円ぐらい。川や水路で採取するのも容易で、三方をコンクリートで固められた人工的な用水路でも壁にびっしり群れていたりします。

ただ、売ってるミナミヌマエビも川にいるミナミヌマエビも厳密にはミナミヌマエビではないことが多く、今やほとんどが外来種のシナヌマエビかその交雑種です。たぶんもうグチャグチャです。もちろんこれも放流は厳禁です。

他魚種と一緒に飼うのは慎重に

こうなると他の魚も一緒に入れたいという気持ちがわいてくるでしょう。しかしこれについては慎重になったほうがいいと思います。

例えばお祭りの金魚すくいで掬ってきた金魚。

小さなうちは大丈夫ですが、あっという間に大きくなり、鉢の中を荒らすようになります。実際やってみて失敗したから分かるのですが、金魚は底の土を吸い込んでは吐く習性があり、メダカの鉢の中に赤玉土の泥が舞って見た目がとても悪くなりました。

睡蓮鉢ビオトープの立ち上げ方

さて、必要なアイテムが揃ったところで、睡蓮鉢ビオトープの立ち上げ手順を簡単に説明します。

立ち上げに最適な時期はゴールデンウィークあたり

立ち上げに最適な時期は4月下旬から5月のゴールデンウィークあたり。初心者には間違いなくこのタイミングがベスト。

桜が咲くお花見の時期は意外と寒くて夜間と昼間の温度差も大きい。室内飼育のお店で買ってきた文字通り温室育ちのメダカには負担が大きいです。4月の終わりごろになれば気温の安定と共に水温の変化もゆるやかになります。そして適度な日射もあり安定して育てやすい時期といえます。

気温も日ごとゆっくり上がっていくので、ろ過バクテリアが増えやすい。メダカ関連グッズもお店での取り扱いが増えていく時期で手に入りやすい。とにかく環境が整っている時期。

夏から初秋も長時間直射日光があたるようなことがなければとりあえず大丈夫です。

ただ晩秋から春先、つまり11月ぐらいから3月ぐらいに始めるのだけはやめたほうがいいでしょう。気温が低くてバクテリアも増えず、安定した環境を作るのが難しい時期といえます。メダカもすぐに休眠状態になるので飼育に楽しみが見出せません。

日光があたる場所を考えて設置場所を決める

日当たりはとても重要です。

理想的な設置場所は、夏の午前中に太陽の光がたっぷり入って午後は木漏れ日が射すような場所。

6月前半ぐらいまでは直射日光が一日中当たっていても問題ありませんが、そのまま夏を迎えるのは厳しい。夏の日差しは強烈です。

メダカにとって日光は健康をもたらす重要な要素ですが、夏の直射日光が当たり続ければ水はお湯のようになります。高温に強く水温40度ぐらいになっても平気で生きていたりするメダカですが、ダメージを受けるのは間違いありません。

とはいえ都合よくそんな場所も無いと思うので、夏場、6月後半から9月ぐらいまではすだれを掛けるなどしてしのぎましょう。水草を茂らせるのも水温の上がり過ぎを防ぐ効果があります。

適当な場所が無くてろくに日が当たらない日陰に置かざるを得ない場合があるかもしれませんが、その場合は飼育の難易度がぐっと上がると思っておいた方がいいです。

容器に赤玉土を敷いて水を入れる

設置場所を決めて容器を置いたら、そこに赤玉土などの底土を敷きます。ズザザザザッ。

底に数センチ赤玉土を敷き詰める
底に数センチ赤玉土を敷き詰める

底がみえなくなるぐらいの厚さで適当に広げればOK。スロープ状にしたり変化を加えてもいい。あまり大量に使うと捨てるときに困るのでご注意ください。1年後のリセット時に後悔します。

次に水を注いでいきます。この水はカルキを抜いていない水道水をそのまま使って構いません。1日も屋外に置けばすっかり抜けるからです。そのまま勢いよく注ぐと底土の種類によっては泥が舞って濁りますので、優しく注ぎましょう。コップなどを置いて底に注ぐと泥が舞いにくくなります。

泥が舞い上がらないよう静かに水を注ぐ
泥が舞い上がらないよう静かに水を注ぐ

泥が舞ったとしても、数日置けば沈殿して水は透明になります。

10日ほど屋外で放置する

注いだ直後の水は水道水の塩素が残りますし、バクテリアはゼロなのでろ過機能も働きません。また赤玉土だと初期は水質が酸性に傾いてしまうため、生物にとってはやや過酷な環境となります。急ぐ気持ちも分かりますが、メダカはまだ入れないように。

メダカを入れるまでは水を入れてから1週間ぐらい待ちましょう。そして完全にろ過のサイクルが出来上がるまでは少なくとも一カ月以上かかるという認識で。

ホテイアオイなどの水草があるなら先に浮かべておくといいでしょう。ポットに入って売られていた水草なら、ひとまずポットごと睡蓮鉢へ。これも水道のカルキが抜けてない状態で全く問題ありません。

パイロットフィッシュを入れる

メダカを入れる前にパイロットフィッシュと呼ばれる生き物を入れて様子見をすることもできます。

パイロットフィッシュというのはそういう名前の魚がいるわけではなく、環境をチェックするのとバクテリアの増殖を促進するために入れる生き物全般のこと。表現が悪いかもしれませんが、いわゆる人柱的な役割を担います。

何らかの原因で水が生物に悪影響を与える状況であればパイロットフィッシュが弱って死にます。またパイロットフィッシュを入れることでアンモニアを発生させ意図的に軽く水を汚し、それを処理するバクテリアの増殖を図る効果も期待できます。

パイロットフィッシュとしてミナミヌマエビが使われることが多いですがタニシでもOK。そいつらのエサは茹でたほうれん草などを少量与えればいいです。そもそもメダカが使われることもありますが、やはり環境が整っていないので死ぬ確率は高くなります。

このパイロットフィッシュの投入は、様子見のためといち早く環境を整えられるようにするための保険のような行程なので省略することもできます。

メダカを投入する

さあ、1週間から10日ほど経てばいよいよメダカを投入していきます。

この時点で十分にバクテリアが増えているとはいえないのですが、ただちにメダカが弱ることもないはずです。

まずは数匹だけ入れて様子をみるのがベターです。水1リットルあたりメダカが一匹という目安がありますが、最初は万全を期してそれ以下にしておいたほうがいいでしょう。飼育に慣れれば目安を超えた上限がなんとなく分かるようになると思います。

買ってきたメダカは水合わせをしてあげましょう。

ペットショップなどで買った場合は酸素入りでパンパンになったビニールに密閉されていると思うので、まずはそれをそのまましばらく水に浮かべておいて屋外の水温に慣れさせる必要があります。

袋に入れたまま水に浮かせて水温を合わせる
袋に入れたまま水に浮かせて水温を合わせる

その後、袋を開けてから少しずつ睡蓮鉢の水を注ぎ入れて水合わせをしていきます。これによって異なる水質とpHに慣れさせます。

袋に入っていた水は何らかの病気を持ち込む可能性を考慮して原則捨てるのがセオリー。網ですくうなどしてメダカのみを睡蓮鉢に移しましょう。

それでも最初のうちは何匹か死なせてしまうはず。一気に死ぬのではなくポツリポツリと死んでいくなら、元々その魚に問題があった可能性もあります。仕方ない。

始めのうちは水換えが必要なときも

飼育の初期はろ過のサイクルが成立していないので、薄っすらと白濁りしたり油膜が浮いたりすることがあると思います。なので1~2カ月を経過するぐらいまでは週一回程度の水替えをしておきたいところ。といっても汲み置きして塩素を抜いた水と飼育水の1/3ぐらいを交換するだけです。

飼育水を抜くのが面倒ならそのまま水を注いで水槽から溢れさせる、元々の飼育水を薄めるようなイメージの水換えでも環境にはプラスになります。屋外の飼育だからできる大胆な方法ですね。水がタプタプだとメダカが飛び出てしまうので、満水よりほどほどに減らすのも忘れずに。

また、メダカを投入して順調に飼育しているうち、次第に水が濁ってメダカが見えなくなる場合があります。抹茶みたいに。

グリーンウォーター化して濁った水
グリーンウォーター化して濁った水

この状態は緑水やグリーンウォーターと呼ばれ、藻類や水中の植物プランクトンが増えた状態です。

水の状態として一概に悪いと言い切れず、メダカ飼育ではむしろ意図的にこの状態にする場合があります。特に稚魚を育てる場合は植物プランクトンがそのままエサになるので餓死を防げるから好都合。メダカの体色をより濃くするなどの効果もあります。業者やメダカのブリーダーさんの間ではグリーンウォーターでの飼育が半ば常識になっているようです。

透明な水で飼育するには

ただ、透明な水のほうがメダカがはっきり見える。そもそも透明な方が見てて気持ちいい。濁りを取りたい。私自身はなんとかして透明にしたい派。そこで濁りを取る方法はいくつかあります。

ひとつは積極的に水換えをすること。一週間ごとに半分ずつぐらい、多めに水を入れ換えると次第に濁りがおさまってくることがあります。

もう一つは適度に日光を遮ること。すだれなどで遮光すれば植物プランクトンが減ります。

そして最後におすすめする方法、それは一旦諦めること。一時的に緑色になるのは仕方が無いと諦める。そして、水草、特にホテイアオイなどの生長が旺盛な植物を入れて気温が高くなる時期を待つのです。

夏になればホテイアオイが爆増してどんどん水の栄養分を吸収するようになります。バクテリアが増えるスピードもあがります。抹茶状態だった水が日を追うごとにクリアになり、透明度抜群でピカピカの水になっていくはずです。遮光と水替えを組み合わせればそのスピードはさらに早くなるはず。

屋外のメダカ飼育は季節を楽しめる趣味

睡蓮鉢は季節によって全く違う表情を見せます。

冬の間休眠状態だった水草の新芽が出始める春。活発に動き出したメダカが産卵するようになります。数週間もすると針の先ほど小さい稚魚が泳ぎだすように。

水草が生い茂る夏。小さなスペースにあらゆる生物がひしめきあって生命感に満ちあふれます。

次第に冷え込む秋。メダカの活性が落ち、水草も枯れ始めて休眠状態に向かいます。少しずつ冬の足音が聞こえ始めます。

時には睡蓮鉢の水面が凍ってしまう冬。数か月前はあんなに賑やかだった睡蓮鉢の中が嘘のように静まりかえります。メダカも生きているのかどうか心配になるほど。

そしてまた春が来れば…

たった数十センチ四方のスペースに日本の四季が反映され、それぞれの季節に違った楽しみ方を見出すことができる。これは釣りと同じ「季節を楽しむ」という要素があり、日々の生活にメリハリを与えてくれます。

めっちゃいい趣味だと思いませんか?少なくとも私はそう思います。

慣れてくれば繁殖も容易で、どうしようか困るほどにメダカを増やすことも。

増え過ぎちゃってどうしよう

狭いスペースで安く手軽にできる屋外のメダカ飼育。あなたも始めてみませんか?