ゴールデンウィークが過ぎ、日に日に夏へ近づいていく時期。
地域によって前後すると思いますが、6月のプール開きを前に学校のプール清掃が行われる時期です。
そんなある日、小学校低~中学年のお子さんがいらっしゃるご家庭で「プールで採れたヤゴ」を子どもが持ち帰ってきて扱いに困った経験はないでしょうか?あるいは今まさにそれに直面している最中かもしれません。
幼少の頃は昆虫や魚の採集に明け暮れ、生物の飼育についてはそれなりに詳しいつもりだった私。しかし子供が突然持ち帰ったヤゴを前に「で、これどうすんの?」と困惑。ちゃんとした育て方を知らない…しかしあれこれ試行錯誤して、無事に羽化までこぎつけました。
私と同じように突然家でヤゴを育てると言われて困っているお父さんお母さんに向けて、ヤゴの飼育についてまとめたいと思います。必要な道具からエサ、羽化を成功させる秘訣などを紹介します。
やるなら出来る限り羽化の成功率を高めて欲しい
手っ取り早くヤゴのエサについて知りたいなら
まずはじめに。
この記事はヤゴのエサについての情報はもちろん、羽化させるまでの飼育全般について書いています。
おそらくヤゴの飼育で一番困るのがエサやりだと思われます。検索してここにたどりついた場合もエサについて知りたいということが大半だと思われますので、お急ぎの方は途中の記事をとばして下のリンクからエサについての記述をご覧ください。
長い記事で申し訳ないですが、お時間のあるかたは以下を順に読んでいってもらえると有難いです。
生で見る虫の羽化は美しい
ヤゴに限らず虫の羽化というのは神秘的で美しいものです。
サナギあるいは幼虫から全く姿形が異なる生物が現れる様子。それは大きな感動を与えてくれます。映像ではなく生で見るならなおさらのこと。初めて見る子どもにとって強く記憶に刻まれる光景であることでしょう。
だからぜひとも羽化を成功させて欲しい、なるべく成功する確率を高めて欲しい。その一心でこの記事を書くに至りました。
ヤゴではありませんが、下の写真はセミが羽化する瞬間です。夕方に採取したセミの幼虫を自宅の網戸で羽化させました。

自宅の網戸で羽化するセミ
この世のものとは思えない色、美しさ。そしてこの美しい瞬間はあっという間に終わるという儚さ。ヤゴの羽化、つまりトンボの羽化も同じぐらい美しいものなので、飼育するからにはぜひ生で見て欲しいと思います。
どんなに頑張っても羽化の失敗は起こりえる
そしてその美しさと表裏一体、羽化に失敗したときのビジュアルはかなりショッキングです。
殻から出てこれないまま体が乾いて固まってしまった。落下や落水をして体の一部が伸びきらないままになってしまった。そんな風に、何らかの原因で羽化に失敗することがあります。
あえてそういう表現をしますが、召喚や合成に失敗したモンスターのようなビジュアルになるといえば映画や漫画好きの方に伝わるでしょうか。
羽化に失敗すると、そもそも飛べないしろくに動くことすらできません。エサを食べることもできません。残酷な表現ですが、異形の姿をしたままただ死を待つのみの存在となります。 しかしこれは自然界でもいくらかの確率で起こること。家での飼育でもそれは同様に起こり得る。
でもなるべく失敗する確率を下げ、羽化の成功率を上げて欲しい。だからそこにポイントを置いて記事を書きます。それゆえ、一般的なヤゴ飼育方法と書いてることが少し違う点があるかもしれません。
とはいえ羽化を失敗させてしまうこと、それもまた子どもにとっては貴重な経験の一つです。そうなったらそうなったで、ちゃんと子どもをフォローしてあげてください。一生懸命世話をしてきた子ほどショックを受けて落胆するでしょうけど、くれぐれも「自分のせいで失敗した」という気持ちにはさせないであげてください。
繰り返しますが羽化の失敗は自然界でも普通に起こること。仕方ないんです。
ヤゴを持ち帰って来たその日の対応について
とりあえず水さえあればいい
ヤゴの飼育には飼育容器やエサなどいろいろな準備が必要です。でも予告無くいきなりヤゴを渡されても、普通のご家庭ではすぐに用意できませんよね。でもね、予告なく突然持って帰るんですよ、子ども。持って帰らせるんですよ、学校。
しかし慌てなくて大丈夫です。
ヤゴは比較的生命力が強い生き物なので、水さえあればエサをやらなくても2~3日ぐらいは問題なく生かせます。たぶんビニール袋やペットボトルに入れて持って帰ってくると思うので、まずは適当な入れ物にその水ごと入れとけばOK。なるべく多くの酸素が取り込めるよう、口の広い容器がいいでしょう。
袋やペットボトルの封をしたままだと酸欠で死んでしまうので、お皿でもなんでもいいから必ず移し替えること。
その他、持ち帰ってきたその日の対応についてまとめます。
今後のため塩素を抜いた水を用意しておく
先ほども書いたようにヤゴは生命力が強く、環境的な変化にもタフです。とりあえず水道水に入れておいてもそう簡単に死にません。しかし塩素を抜いた水道水で飼育するにこしたことはないので、今後の飼育に備えて初日に下準備をしておきましょう。
家で魚を飼っているようなご家庭には塩素を中和するカルキ抜きを常備されていると思いますので、それを使えばすぐ飼育用の水が用意できます。
なければとりあえずバケツなどに水を汲んで屋外に置き、太陽光にさらしてください。太陽光に当てずとも1日放置すればだいたい塩素が抜けます。
さきほども書きましたが、塩素を抜いていない水道水にヤゴを入れたとしても、直ちに死ぬことはほとんどありません。だからそれほど神経質になる必要はないです。飼育初日に塩素を抜いた水を用意するのは難しいと思うので。
もし持ち帰ったときに入っていた水だけで足りない場合は、蛇口から出したそのままの水道水を多少混ぜてもさしあたり問題ありません。
定期的に水を交換する
プールなどでしっかりエサを食べていたヤゴはモリモリと糞をします。
どんどん糞が溜まって水が汚れ水中のアンモニア成分が高くなると、タフなヤゴといえど苦しい環境になってしまいます。汚れたなと思ったらきれいな水に交換しましょう。
汚れ具合は水の量によって左右され、飼育水が多ければ多いほど汚れる早さは遅くなります。だから一概に「何日おきに交換」とはいえないのですが、明らかに水が汚れているようなら速やかに交換してください。
水が透明だからと言って問題がないわけでもなく、透明なまま静かにアンモニアの成分が増えている場合もあります。一見きれいなように見えても数日おきに水替えをした方がいいでしょう。
アクアリウムの知識があるなら水のろ過についてもご存じだとは思いますが、水替えをせずに水質を維持できる環境を成立させるのはある程度の期間経過が必要です。バクテリアの繁殖や養分を吸い上げるための水草も必要になります。
数日はエサをやらなくても大丈夫
そのヤゴの状態にもよるでしょうが、2~3日エサをやらなくても大丈夫。
あわてず翌日以降に準備できるようにしておきましょう。しかしながらエサやりはヤゴの飼育において最も大きな課題の一つ。エサについては後ほど詳しく解説します。
ヤゴは共食いをするので、数を減らしたくなければ早めに用意してあげたほうがいいですね。エサが潤沢にあっても共食いするときはしちゃいますけど。
羽化の失敗もそうですが、共食いも自然界では当たり前のこと。昆虫や魚は生まれたばかりの自分の子さえ躊躇なく食べてしまいます。共食いで無残に千切れたヤゴを見るのは子どもにとって結構ショックなことですが、そういうもんだと教えてあげましょう。仕方ないんだ。
ブクブクでの酸素供給は必須じゃない
ヤゴは水中に溶け込んだ酸素を取り込んで呼吸をします。いわゆるエラ呼吸をする生き物。
エラはどこにあるかというと魚のように頭の後ろではなく体内の直腸にあるようで、お尻から水を出し入れして酸素を取り入れます。ヤゴを観察していると、お腹部分の蛇腹を伸縮させて水を出し入れし、呼吸しているのが分かります。
そうなるとエアレーション、いわゆるブクブクが必要だと思うかもしれません。しかし、水の流れがほとんど無いプールや池で獲れるような種類のヤゴは使わなくても大丈夫です。水面から水に溶け込んだ酸素量でじゅうぶん呼吸ができます。
飼育容器はなるべく水面、表面積が大きいものを選択すると、溶け込む酸素の量が多くなります。かつ屋外に置けば風によって水面が揺れて表面積が増えるため、さらに酸素の量が多くなります。
ただ、エアレーションをした方が水質の維持につながるので、可能であればやっておくにこしたことはありません。
最後まで面倒をみるよう子どもに話しておく
熱中してしまうと子どもそっちのけで親が飼育してしまうような状態になるかもしれませんが、主役はもちろん子どもです。大人はあくまでフォローの立場。環境を整えてあげたらあとは子どもに日々の世話を任せましょう。小学校もそれを狙ってヤゴを持ち帰らせているはずです。後ろから見守ってあげてください。
繰り返し書きますが、ヤゴの飼育でいちばん大変なのはエサやりです。エサの調達やエサやりは根気がいる作業。低学年の子供にはなかなか難しいことなので後ろから大人がフォローしつつ、きっちり最後まで世話をすることを話し合いましょう。
ヤゴはどれぐらいの期間でトンボに羽化するのか?
早ければ数日後に羽化する
飼育するのはいいけど、一体いつまで水換えやエサの調達を続けないといけないのか?子どものためとはいえこの苦行にいつまで耐えねばならないのか?
それを知るためには、まずヤゴの種類を知ることが必要です。
なぜかというと、ヤゴの種類、つまりトンボの種類によって羽化の時期がある程度決まっているからです。プールで採取される代表的なヤゴは以下3種で、だいたい羽化の時期もかぶります。
とはいえこの3種のヤゴ、非常に見た目が似てるので区別はつきにくい。なのでヤゴの段階ではなんのトンボか見分けるのは諦めて「プールで採れたヤゴはだいたい9月ぐらいまでには羽化するんだな」ぐらいの理解をしつつ希望を持っておきましょう。
最も遅い場合が9月というだけで、早いヤゴだと一週間以内に羽化して大空へ旅立っていくものもいます。なんにしろ羽化するまでの期間限定飼育なので、ヤゴの飼育には明確なゴールがあります。それは思ったより近いのかもしれません。
いつまで経っても羽化せず、やっと羽化したらもう夏休みが終わってましたってパターンも有り得るので、それはそれで頑張って最後まで付き合いましょう。
羽化の直前になると水面から出てきて木によじ登ったりするようになります。水面近くに顔を出して上の様子をうかがったり。同時にエサをとらなくなります。これによって数日前に羽化を予測することができます。

羽化直前 止まり木にのぼるヤゴ
そういう状態になったらなるべく環境を変えずに見守るようにしましょう。ゴールは近いはずです。
羽化は暗い時間か早朝に始まる
ヤゴの種類、トンボの種類にもよると思われますが、羽化の時間帯は基本的に夜間の暗い時間に始まります。その場合、朝方には体が乾いてすっかりトンボらしい見た目になっているはずです。なのでなかなか羽化の一部始終を見届けるのは難しい。
私たちが飼っていたヤゴのうち一匹は都合よく早朝に羽化したようで、起きた時には殻から出て羽を乾かしている最中でした。

殻から出て体を乾かしている途中
子どもが帰宅するころにはすっかり乾いてカーテンに捕まっていたそうです。

羽化後カーテンにつかまっていたウスバキトンボ
もう一匹飼っていたヤゴは夜間のうちに羽化を完了させたようで、屋外に置いていたため朝見たときは文字通りもぬけの殻状態でした。同じ種類でも個体差がありそうですね。
ヤゴにはどんなエサをどうやってあげるのか?
ヤゴは活きエサを食べる肉食の昆虫
困ったことにヤゴは、基本的に「動いているエサ」しか食べてくれません。
なんとなく苔とか藻とかをかじって食べているイメージがあるかもしれませんが、いわゆる肉食の生き物です。
ヤゴの飼育環境を整えること自体はお金も場所も掛からず簡単なんですが、このエサの用意とエサやりが最も大変です。これが上手くいかずにヤゴを餓死させてしまうご家庭は多いようです。
上手くやれば死んだ状態のエサも食べてくれますが、金魚にエサをやるようにばら撒いておけば勝手に食べてくれるということはあまり期待できません。
ベストなエサの選択肢は「活きた赤虫」
もっとも確実に食べてくれるエサは活きた赤虫です。赤虫はごく小さなミミズような見た目で体長1センチぐらいの小さな虫。普段は川や池の底に生息している昆虫です。
川や池などの淡水でテナガエビや小魚釣りをする際にポピュラーなエサなので、近所に活きエサを売っている釣具店や釣り餌店があれば入手できます。売場ではミミズなどと一緒に縦型透明冷蔵庫へ陳列され、価格は1パック200~300円ぐらい。その値段で数十匹入ってます。

釣具屋で買ってきた赤虫
この赤虫をピンセットなどでつまんでヤゴの近くに放ってやれば、勝手にウネウネ動いてヤゴにアピールをしてくれます。お腹のすいたヤゴであれば高確率で食いつきます。
ひとつのパックで羽化までもっていけるほど十分な量が入ってますが、きっちり冷蔵庫で保存しても赤虫は一ヶ月も生きられない。なので飼育が長引くなら何回か買い足さないといけないかもしれません。コストパフォーマンス的には悪いエサです。
それに「冷蔵庫に虫を入れる」ということに抵抗がある人もいるでしょう。もし自分は平気でも家族の理解を得ないといけません。
ちなみにこの赤虫というのはユスリカという虫の幼虫です。見た目は蚊っぽいけどハエに近い種らしい。万が一放っておいて成虫になったとしても人を刺さないので安心してください。ユスリカはよく川原や運動場なんかで遊んでいると頭の上に群れて「蚊柱」を作るあいつです。
なお、赤虫は赤虫でれっきとした昆虫。トンボと同じくサナギにならず不完全変態をする昆虫です。だからヤゴと同様にいきなり幼虫から成虫へ羽化します。トンボやセミのような優雅で美しい羽化ではなく、水面付近で僅か数秒のうちに終了するスピード感がある羽化で、見ていて面白いです。
冷凍や乾燥の赤虫なども使えるがなかなか食べてくれない
熱帯魚などを飼う人にはおなじみかもしれませんが、冷凍された赤虫やイトミミズもエサとして使えます。
同じく乾燥させた赤虫やイトミミズもエサにでき、いずれもペットショップで手に入ります。値段もたいして高くありません。一つ買えば羽化まで十分に足りますし長期保存もききます。
では「保存が利くからコストパフォーマンスがいい」かというと一概にそうとも言えず。
先述の通りヤゴは活きて動いているエサしか食べてくれません。しかし冷凍させたり乾燥させたりしていればもちろん死んでいます。解凍しても生き返りませんし水で戻しても生き返りません。だから動きません。
じゃあどうするかというと活きているように見せかける必要があります。具体的にはピンセットでつまんでヤゴの前でユラユラさせてヤゴの食い気を誘う必要が。「ほらほらエサだぞ~」って。
でも正直言ってこれはかなり根気がいります。ピンセットをヤゴの前にもってきただけでヤゴに警戒され逃げられることばかり。それでも根気よくエサを動かし続けて食うか食わないかはそのとき次第みたいな感じ。
なので活きた赤虫が手に入るのであればそれを選択するのをおすすめします。
その他に有効なヤゴのエサ
その他私が試して成功したエサを挙げます。
生まれたてとおぼしき小さくて細いミミズであれば食べてくれます。釣りエサにつかうような太さのミミズだとヤゴが怯えて食べてくれません。
あと食べてくれたのは小さなヤゴ。弱々しいイトトンボのヤゴは食べました。いずれも売っているものではないので自分で獲りにいかないといけませんが。
小さな魚も食べるかな?と思って川で採取した何かの稚魚を入れておきましたが、ヤゴがいわゆるアカネ系の小さいものだったので食べてくれませんでした。ギンヤンマなんかのヤゴだと大きいのでメダカサイズの魚ぐらいは食べると思います。
メダカを飼育してる人であれば、生まれたばかりの稚魚、いわゆる針子サイズのメダカをエサにするという手段もあるっちゃあります。エサとしてはうってつけです。繁殖させている人ならかんたんに手に入るはずですが、エサとして使えるかどうかは気持ち次第。私は否定も肯定もしません。
屋外飼育なら自然とエサが発生する
メダカの飼育方法として、大きな睡蓮鉢にメダカを入れて屋外に設置する方法があります。
飼育し始めたときはエサをやる必要がありますが、ある程度気温が上がって飼育環境が安定してくるエサをあげる必要がほとんどなくなります。
なぜならエサが自然発生するから。
もちろん「無」からエサが発生するわけではなく、外部から飛来したものが要因となります。その代表的なものがボウフラ。つまり蚊の幼虫。蚊が水中に産卵してボウフラが生まれます。形態は違いますが、先ほど紹介した赤虫と同じような生き物です。メダカはもちろん、これはヤゴにとっても大好物。
赤虫も屋外で水を放置しておけば高確率で勝手にわきます。何も生き物を入れていないはずのバケツの底に細長い泥状の糞のようなものがあればビンゴ。それ、赤虫の巣です。

稚魚メダカ飼育容器の底にわんさか湧いていた赤虫
もしエサに困ったら、家の周りにあるかもしれない放置された容器をチェックしてみてください。水が溜まっていれば高確率で赤虫がいるはず。戸建ての人なら外構にいくつかあるだろう雨水枡の中を探してみるのもあり。持ち手用の穴が空いた蓋に「雨水」って書いてあれば、高確率で赤虫がいます(それを捕食するクモなどの昆虫も同居してるので注意)。
ボウフラにしろ赤虫にしろ、僅かな水溜りがあれば簡単に発生します。屋外で蓋をせずに飼育容器を置くと、暑い時期であれば高確率でわくのでエサ代いらず。飼育環境も安定するので、ヤゴを育てる水槽は屋外設置がおすすめです。
とはいえ、ヤゴが食べきれず羽化しちゃうと当然蚊になって人を刺すようになります。広い一戸建ての庭でやるというならまあいいでしょうけど、マンションベランダなんかだと、近隣に迷惑をかける可能性があります。注意しましょう。
ヤゴはどんな入れ物で飼えばいいのか
羽化を成功させるには側面がツルツルした素材の水槽などを
2匹程度であればヤゴを飼う容器は百均で売ってるような小さなプラスチック水槽で問題ありません。こういうやつ。 安いもので構いません。
大きければ大きいほど水質は安定しますし、ヤゴの共食いが起こる確率も下げられます。
ある程度の大きさと深さがあって水が漏れない容器ならぶっちゃけタライでもなんでもいいと思います。可能であれば側面がツルツルした、ヤゴが登れない素材の容器を選びましょう。
ツルツルした素材を選ぶというのは、冒頭で書いた「羽化の成功率」を上げるということにつながります。
ザラザラした素材の容器だと、羽化のときにヤゴがどんどん側面を登っていってしまい水槽から脱走、水槽から離れた場所で羽化したりします。脱走して適当な場所をヤゴが見つけられない場合や途中に障害物がある場合は羽化に失敗してしまいます。
冷凍食品が入っているような深めの発泡スチロールの容器は、魚やエビの飼育にぴったりなんですが、上記の理由でヤゴの飼育にはおすすめしません。飼育自体には適しているのですが、羽化失敗の確率が高まります。
ヤゴが登れない素材を選ぶかわりに、羽化のときヤゴが登ってこれる止まり木の準備は必須となります。これは後述します。
水槽の設置は屋外がおすすめ
羽化には気温の影響も考えられるので、水槽の設置は可能な限り屋外がおすすめです。先程もかきましたが、屋外であれば自然と蚊が卵を産みつけるので、しばらく経てばエサが勝手に供給されます。
しかし長い時間直射日光が当たる場所は避けましょう。どんどん日差しがきつくなっていく季節なので、簡単に水の温度があがってヤゴが死んでしまいます。難しければ100均で売ってるすだれなんかを利用するのもいいですね。
2Lペットボトルでも
わざわざ水槽を買うのも勿体無いということであれば、ミネラルウォーターが入っているような四角型の2Lペットボトルを使うこともできます。
ヤゴの飼育について調べると、2Lペットボトルを横に倒した状態で側面を切り抜いて水槽にするアイデアを良く見ますし、飼育に関してはそれでもいいと思います。しかしそれだと羽化に使う木の棒などが水槽の外にはみ出てしまい、そこからヤゴが転落や脱走をして羽化に失敗することがあります。私は実際に経験しました。
なのでペットボトルを使うのであれば真ん中あたりで横に真っ二つに切って、ペットボトルを立てた状態で水槽にするのもおすすめです。それだと羽化用の木の棒なども水槽からはみ出ずに設置できるはずです。せいぜい1匹しか飼えませんけど。
ヤゴの飼育環境はどうやって作ればいいのか?
全体としてはこんな感じ
実際の写真が用意できればよかったのですが、あいにく間に合わないのでこれで代用させてください。小学生に大人気のマインクラフトで作りました。上から見るとこんな感じ。

マイクラで作ったヤゴ飼育環境
これじゃ余計分かりにくいという意見もあるかと思いますが、気にせずこのまま続けますよ。水槽の中身も見ていきましょう。

水槽内に必要なアイテムなど
リアリティに欠ける点は気にしないで。あくまで雰囲気。イマジネーションで補完。それがマインクラフト。これでも作るのに一時間ぐらいかかったんだぜ。
ではひとつつずつ補足していきましょう。
羽化用のとまり木
ヤゴの羽化を成功させるために絶対必要です。割り箸でも構いませんし、その辺で拾った木の枝でもいいです。とにかくヤゴがしっかり登れる素材で、羽化に必要な長さがあれば大丈夫。
ヤゴが羽化前になれば自然と高い場所を見つけて登ってきます。その際、ヤゴの体重で倒れてしまわないようしっかり固定するのが大変重要です。ほんとここ重要。濡れたヤゴは意外と重いので、ちゃんと固定していないと割り箸程度なら簡単に倒れます。結果として羽化に失敗してしまいます。
石で囲ってしっかり固定させると安心です。また脱走防止と羽化の失敗を避けるために、とまり木の先端が水槽からはみ出ないようにしておくとベターです。なのである程度深さのある水槽がおすすめ。
このとまり木につかまってヤゴが羽化するというイメージをしっかりもって、少なくとも水面から木の先端までヤゴの体長の2~3倍以上の長さがあるか、余裕を持って羽化できるか確認しましょう。少なくともヤゴの体長の5倍以上は確保したいところです。

羽化をイメージして必要なサイズを考えよう
身を隠すための石を用意する
自然の状態では、ヤゴは石の下に隠れたりして生きています。同じように石などで隠れる場所を作ってあげましょう。
適当な大きさのものを拾ってきてもいいですし、植木鉢の欠片とかでも構いません。
水草があれば入れておく
水草はなくても大丈夫ですが、あれば酸素の供給と若干の水質改善効果を期待できます。無ければわざわざ買ってまで用意する必要はありません。
身近に調達できる環境があれば入れてあげてください。意外とその辺の用水路なんかに群生してたりします。都会の水路でよく見かける水草の多くはオオカナダモと呼ばれる外来種の水草。ヤゴの飼育が終わっても川に戻さないようにすることが望まれます。

これはオオカナダモではなくマツモ
砂利はあっても無くてもいい
さきほどあげた画像には砂利をしくと書いてますが、これは特に無くても問題ありません。とまり木の固定用として役に立ちますが、水替えの手間が増えるので無きゃ無いで問題ないです。ヤゴがツルツル滑って大変そうに見えますが。
例えばメダカの飼育など長期間にわたる飼育であれば、砂利や土をしくことでそこに水を濾過するバクテリアが住みつき、水質の改善維持に効果を発揮します。

砂利を敷くかどうかはお好みで
ですがヤゴの飼育は短期間で終わることがほとんどなので、バクテリアが住みつく前に飼育が完了してしまうことが多いはず。
水はほどほどの量でOK
水はヤゴの体高の4倍程度あれば十分、魚を飼うわけではないのでそれほど必要ありません。ヤゴが羽化するのに十分なスペースが確保できるよう水の高さを調節しましょう。
水が汚れてきているようであればその都度塩素を抜いた水に交換しましょう。常にバケツに汲み置きしておけばいつでも使えて便利です。
水が少ないと汚れやすいですし、上手くエサを食べてくれないため残ったエサが水を汚しがちなので頻繁な交換が必要です。うまくバランスをとりましょう。
水槽に蓋は必要か?
羽化したヤゴ、もといトンボが掴まれるような網素材になった蓋であれば蓋をしておいたほうがいいと思います。せっかく羽化させたのに飛び去ってしまっていて、残されたのは抜け殻のみ。文字通りもぬけの殻というのは結末として悲しいので。
トンボがとまれないようなツルツルした素材の蓋だと、羽化したトンボが水没しかねないので避けたほうがいいでしょう。蓋をすることでヤゴが羽化するスペースが圧迫されるようならあえて蓋をする必要はありません。
ヤゴの飼育まとめ
ざっくりではありますが、私が実際にヤゴを育てて羽化させた経験を元に記事をまとめました。
最初にも書きましたが、トンボに限らず虫の羽化というのは総じて神秘的で美しいものです。見た事が無いという人がいればぜひ見てほしいし、子どもにも見せてあげてほしい。
それにヤゴの飼育は子どもに達成感を感じさせてあげるのにうってつけ。飼育という過程の先に羽化という明確なゴールがあるので、他の虫や生き物を飼うよりもそれは大きいと思います。その辺で捕まえてきた魚や虫の飼育って意外と難しくて、最終的に死んだから終わり、それがゴールだったってことが多いですから…
初夏に子どもがヤゴを持って帰ってきたら、それはあなたにとっても子供にとっても貴重な機会だと思ってぜひ挑戦してみてください。