近年は空前のメダカブームです。
もちろん室内の水槽でも飼えるのですが、屋外の環境でメダカ飼育をされている割合も多くなっています。
暖かい地域に住む熱帯魚と違って、もともと四季のある日本に生息しているメダカ。氷が張るような寒い冬から茹で上がりそうな高水温になる夏まで、日本の気候に問題なく順応することができます。だから屋外で飼えるのです。
屋外でメダカを飼う場合は睡蓮鉢を水槽にするのがスタンダートですが、もともと水槽として使われていない容器をメダカの屋外用水槽に転用するということも当たり前になっています。
一定量以上の水が貯められる容器、少なくともその条件さえ満たせばメダカ用の水槽にできる可能性があるわけです。とはいえどんなものでもOKというわけにはいきません。
どんな容器が水槽として使えるでしょうか?実体験をもとに解説します。
メダカビオトープの水槽に求められる条件
まず屋外飼育用の水槽に求められる条件を整理しておきましょう。
- 水が漏れない構造
- 5リットル以上の容量
- 水の圧力に耐えらる強さ
- 日光による劣化に耐えられる素材
- 広い開口部が確保できる形状
結論から言えば、これらの条件を満たす容器なら「メダカ用」として売られていないものでも水槽として使えるということになります。だから選択肢はとても広い。もしかするとあなたの家の物置などに放置されている「何か」が水槽になるかもしれません。
ここでは取り上げませんが、例えばお子さんがいるご家庭ならかつてほんの数か月だけ使ったであろうベビーバス。あれもメダカ用水槽に使えます。ちょっと外に置くのは恥ずかしいし、長期間の使用には耐えられないかもしれないですが。
先ほど挙げた条件を一つずつ補足します。
水が漏れない構造
水が漏れない容器であること。水槽にだから当たり前ですがこれは絶対条件です。
屋外に置くなら多少ポタポタと漏れても問題はないかもしれないですが、水を足さずに放っておくと干上がってしまうので完全に漏れないものを使うべきでしょう。
雨などで水位があがって上からあふれ出るぶんにはあまり問題ありません。メダカが流れ出てしまう懸念はありますが、タオルの切れ端などを洗濯ばさみでとめておくなどしておけば毛細管現象で自動的に水を抜くことができます。梅雨の時期を乗り切るアイデアでもあります。

5リットル以上の容量
水量は多ければ多いほど飼育環境が安定します。
メダカにとって悪影響といえる水の汚れや高水温になるスピードが緩やかになるからです。もちろん水量が多いほどたくさんのメダカが飼えます。
その観点でいえば、少なくとも5リットル以上の水量が確保できる容器を選びたいところ。5リットルという数字に明確な根拠があるわけではないですが、それぐらいあれば2~3匹程度のメダカを安定して飼う余裕があります。
水の圧力に耐えらる強さ
サイズによっては何十リットルもの水を容器に入れることになるので、水槽にはそれ相当の水圧がかかります。
いくら容量が大きくても薄い素材だと水圧でゆがんだり、時には破損してしまう可能性があります。ある程度素材の厚みがある強い容器が必要です。
こちらはその悪い例。ホームセンターで売っているような安い衣装ケースを使っているのですが、見事に側面が歪んでいます。

数十リットルの水ならそれなり重量になりそれ相当の水圧がかかるので、当たり前といえば当たり前。これはだめです。
広い開口部が確保できる形状
屋外のメダカ飼育では基本的にエア―ポンプを使いません。
ではどうやって酸素を水に取り入れるかというと、水面から自然に溶け込ませるかたちで酸素を取り入れます。空気に接する水の面積が広ければ広いほど効率よく酸素を取り入れることができるので、すり鉢状で開口部が広い容器が理想的。その観点でみればメダカ飼育の定番となっている睡蓮鉢の形状は理にかなっています。
いくら水量が多く確保できる容器でも壺や花瓶のように首が細く開口部が狭い容器は不適切です。酸素もそうですし、日光も取り入れにくい。そもそもメダカを鑑賞しにくいし。

日光に耐えられる素材
屋外に置く以上は日光を避けられませんし、そもそもメダカの健康や水草の生長にとって日光は大事です。
必然的に水槽は日の光を直接、そして長時間浴びることになります。屋外設置することを前提としていない樹脂系の素材は驚くほど日光による劣化が早く、屋外に数か月置いておくと柔軟性を失ってカチカチになっていたりします。触ったら軽い力でパキッと割れたり。
期間限定的な使い方をするのなら大丈夫ですが、あまりおすすめできません。
メダカビオトープ用屋外用水槽として使えるおすすめ容器
それではメダカ用の屋外用水槽として使える容器を紹介していきます。
いずれも奇をてらったものではなくメダカ飼育の屋外水槽としてはよく使われているものばかり。そして実際に私自身で試したものです。本来は飼育と別の用途で使われるものなので、ペットショップというよりかはホームセンターで入手しやすいものが多い傾向です。
睡蓮鉢
まずは最もスタンダードな睡蓮鉢。
本来の睡蓮鉢はその名の通り睡蓮を育てるのに適した鉢ですが、同時にメダカ飼育にも適しています。もちろんメダカを育てながら同時に睡蓮を育てて花を咲かせることも可能です。

本来の睡蓮鉢は陶器製。
メダカ飼育専用に用意された樹脂製や発泡スチロール製の睡蓮鉢もあります。
陶器製に比べ高級感など雰囲気は劣りますが、軽くて壊れにくくお手軽。初心者にはいい選択だと思います。
植物用で睡蓮鉢に似た円形のプランターもあり、底に栓ができて水が貯められるものもあります。
先ほども書きましたが、開口部が広いので十分な酸素を取り込みやすい形状といえます。水草も配置しやすく、こだわれば生花のように美しい魅せ方も可能。エクステリアとしても機能します。コンパクトなので置き場所も選びやすいです。
左官用プラ舟
本来は建築資材用としてモルタルを混ぜたりする用途に使われるプラ舟。左官フネ、タフブネと呼ばれることも。これも屋外用のメダカ水槽として今やスタンダードな存在です。

20リットル程度から100リットルを超える水量まで水が貯められ、水量に対する価格を安くできるのがポイントです。やはり安定した飼育に水量は欠かせません。
本来の用途からして屋外でタフに使うのが前提のアイテムなのでとても丈夫。衝撃に強いし太陽光や気温の変化にも問題なく耐えられます。
面積が広いので水草も多く配置できますし、深さもメダカ用としてピッタリの15センチ程度。水量が多く確保できるから水質が安定する。設置場所に問題がないのなら初心者に一番オススメしたい水槽です。
ホームセンターだと建築資材や塗料のコーナーに置いてあったりします。
無骨な見た目がデメリットかもしれませんが、DIYで木枠を作って囲むなど工夫されている方もいらっしゃいます。周りにプランターなどを配置して植物でカモフラージュするのもいいですね。
工具用コンテナケース
繁殖や品種改良を行うメダカガチ勢といえる人たちにとって今やスタンダードになっている工具用のコンテナケース。なかでもNVボックスは定番となっています。
カラーバリエーションが3色ほどありますが、メダカ飼育には圧倒的にブラックが使われる割合が高い。そこには明確な理由があります。それはメダカがもつ保護色の機能を利用できるから。暗い色ほど濃い色のメダカに仕上がる可能性が高まります。赤いメダカがより赤くなるといったように。
園芸用プランター
家庭菜園に使うようなプランターも水槽として使うことができます。
プランターって底にスリット状の穴がたくさん開いてるから水が貯められないのでは?と思うかもしれませんが、プランターに付属している栓をすることでしっかり水を貯められるプランターも売られています。

本来はここにそのプランターのAmazonリンクを貼っておきたいところなのですが、商品が特定できないので割愛させてもらいます。ホームセンターの園芸コーナーで探してみてください。数はそんなに多くないですが、栓を一つするだけで水が貯められるプランターがあるはずです。

これも当然ながら屋外用なので、耐久性は全く問題ありません。他のメダカ水槽には無い横幅ワイドな形状であることが多いので、ちょっと違った見せ方ができるかも。
食品用発泡スチロール
例えば冬にお取り寄せした冷凍のカニ。それは保冷用の白い発泡スチールに入って送られてきたんじゃないでしょうか?その容器は屋外でのメダカ水槽として使えます。
もしかしたらスーパーや魚屋さんと交渉すれば無料でもらえるかもしれません。入手方法次第では、今回紹介する水槽の中で最もリーズナブルといえます。ネットでメダカを注文するとこのような発泡スチロール容器に入れて送られてくることもあります。

もともと保冷保温用の容器なので、水槽内の水温変化を穏やかにすることには優れています。適切に遮光や保温をすれば、暑い日の水温上昇も寒い日の水温下降も緩やかにできる。
屋外用という想定はされていないので、日光や天候による劣化については気をつけたほうがいいと思います。誰しも経験があると思いますが、特に薄い発泡スチロール素材であれば簡単にパキッと割れることもあります。ここまでに挙げた容器に比べて耐久性が低いという点は考慮しておくべきでしょう。
100均やホームセンターのプラケース
ダイソーやニトリ、ホームセンターなどで蓋付きで手頃な価格のプラスチックケースが売られています。理由は分かりませんが、ここ数年で増えてきてサイズもカラーもバリエーションが豊富になりました。

5リットル以上の水量が確保できて大きさと深さもちょうどいいものがあるはず。これもとりあえず屋外水槽としてつかえます。とりあえず。
本来は室内の整理用ボックスなのでもちろん屋外で使うことは想定されていません。
太陽光での劣化については不安が残ります。素材もあまり厚みがなくて水を入れると歪んでしまう。あまり長く使うことは考えず、隔離であったり稚魚用の水槽として一時的に使うのが有効な使い方ではないかと思います。ただ、実体験として1年程度であれば問題なく使えるのを確認しています。
屋外水槽としておすすめできない容器
これは水槽に転用できそうと思っても、実際使ってみると問題が出てくるものもあります。実体験をもとに紹介します。
衣装ケース
先ほども紹介した失敗談。
引っ越しを機に捨てるつもりだった半透明の衣装ケースがあって「これは水槽に使えそう」とひらめいて水槽に転用。なんせ大量の水が貯められるのでたくさんメダカも飼えて迫力あるビオトープができるだろうと。
1年ほどは問題なく使えてたんですが、ある日移動をさせる必要があってケースの端を持ったら見事にパキッと割れて文字通り飼育環境が崩壊しました。やはり室内用の製品を屋外で使うのは無理があります。

透明な飼育ケース
カブトムシを飼うような透明のプラスチック飼育ケース。
お子さんがいらっしゃる家庭には一つ二つあるんじゃないでしょうか?
我が家にも放置されたものがあったので、実際に屋外用メダカ水槽として使っていたことがあります。これに関しては暖かい時期に一カ月ほど使った時点で早々にダメだなと気づきました。
側面が透明で太陽光をガンガン通すものだからコケや藻の繁茂がすごい。水もあっという間に緑色になり、見た目からして腐海チックな最悪のビオトープになってしまいました。晴れている日の水温上昇も急激すぎる。
ただ一方で緑色になった水というのはメダカ飼育において「グリーンウォーター」と呼ばれ重宝される場合があります。緑色というのは植物プランクトンが豊富になっている状態で、美観は損なうもののそれ自体は飼育するにおいて好都合だからです。常にエサがある状態に等しいから。特に稚魚飼育には欠かせません。
割り切ってグリーンウォーターを作るために特化した水槽として使うのは有りかもしれません。
あなたの好みと都合に合わせた水槽を
実体験を通して、メダカの屋外飼育に使える水槽をご紹介しました。
結果的に失敗したものがあるものの、水が貯められる容器であればとりあえず水槽に転用できます。それぐらい屋外のメダカ飼育は自由度が高いと言えます。
水槽が置けるスペースに合わせてとにかく大容量のプラ舟を選ぶのも良いですし、エクステリアの一部として機能させるために美しい睡蓮鉢を使うのも良いですね。
ぜひあなた好みの水槽を探してみてください。まだみんなが見落としているようなものがあるかもしれません。