秋は海釣りのトップーシーズン。最も魚が釣れる時期。
中でも大阪湾で絶大な人気を誇るのがタチウオです。秋になると大阪湾の波止という波止がタチウオを狙う釣り人で埋め尽くされ、関西ローカルの釣り番組もタチウオ釣り一色に。
あらゆるタイプのルアーや様々なエサ釣り仕掛けで釣れるという間口の広さ。それが人気の理由のひとつ。みなさんそれぞれ、自分が得意な釣り方でタチウオを狙います。
そんな数あるタチウオ釣りの中、とにかく最初の1匹を釣りたい初心者に最適な釣り方はなんでしょう?それは「引き釣り」だと私は断言します。
タチウオ釣りに興味を持った初心者釣り人のあなた、まずは引き釣りから始めてみませんか?
タチウオの引き釣りとは?
引き釣りってこんな釣り
まずタチウオの引き釣りをざっくり100文字程度で説明します。
タチウオの釣り方としてはとても歴史が長く、私の実体験をもとにすれば少なくとも40年ほど前に存在していた釣りです。おそらくもっと前からあったはず。
まず映像で見てもらったほうが手っ取り早いので、ダイワ公式のこちらをどうぞ。
タチウオの引き釣りにおいて誰の異論もなく「聖地」と呼べる、武庫川一文字での釣りです。どういう釣りかなんとなく分かりましたか?
テクニック不要!仕掛けを投げて巻くだけ
タチウオ釣り自体、条件さえ合えば高確率で目的の魚が釣れる釣りではあります。でも最低限の慣れやテクニック習得が必要です。
例えば引き釣りと同じエサ釣りであるウキ釣り。この釣りはウキが沈んでからアワセるタイミングが難しくて慣れが必要です。そしてルアー釣り。これはルアーを生きているように動かすためのテクニック習得が必要です。
その点、引き釣りなら仕掛けを前に投げることさえできればまずはOK。あとは一定速度でリールを巻き巻きするだけ。
えっ?まだ釣りに慣れてなくて仕掛けが遠くに飛ばせない?大丈夫。夜なら20メートル程度投げるだけでも釣れる可能性が十分にあります。ちょっと練習すればそれぐらい簡単に飛びます。
もちろん釣果を伸ばすにはテクニックの習得や経験の積み重ねが必要なんですが、リールを巻いているだけで勝手に掛かってしまう「向こうアワセ」で釣れることもしばしば。
さあここで改めて断言します!
波止からの釣りの中で最も簡単確実にタチウオを釣ることができるのが引き釣りだと!私はそう言い切ります。

釣りたての美しい金属光沢をもったタチウオ!これを自分で釣ろう!
引き釣りのメリットはエサとルアーのハイブリッドにあり
引き釣りは、エサ釣りとルアー釣りのいいとこ取りをしたような釣りと言えます。
エサ釣りは生のエサを使うわけですが、匂いや柔らかさなどルアーでは到底勝てないリアルなアピール力を持ってタチウオを惹きつけます。特に食いが悪くなる夜はエサが圧倒的有利。これは生の小魚を使う引き釣りも同じ。
タチウオはタナ、つまり魚が泳いでいる層、水深を探り当てることがとても重要な釣りです。ウキ釣りはそのタナを探り当ててウキからエサまでの長さを調整し、そこを重点的に狙うことができる釣り。しかし、海底に近いような深い層を狙ったり、頻繁にタナを変えていくのは苦手な釣り方。
その点、メタルジグなどの重くて沈むルアーならかんたんにタナを探れますし、海底に近い深いタナを素早く狙うことができます。飛びやすいので遠投もできます。そしてこれは引き釣りも同じ条件。
引き釣りのメリットをまとめます。
- 生エサを使う釣りだからルアーよりアピール力がある
- 仕掛けがすぐ沈むからその日その時タチウオが泳いでるタナを効率よく探し出すことができる
- 仕掛けがすぐ沈むからアタリのあるタナを迅速かつ集中して狙うことができる
- 遠投できるため岸から遠いポイントを狙うことができる
- リールを巻いているだけで勝手にタチウオがかかる(場合もある)
このように、引き釣りはエサ釣りのアピール力とルアー釣りの手返しの良さというメリットを併せ持ったハイブリッドな釣り方といえます。
安い道具でもOK!竿とリールがそのまま使えるかも?
引き釣りをするために高価な専用竿やリールはさしあたり必要ありません。
極端に言えば、15グラム、オモリ4号ぐらいの仕掛けが投げられる釣り具さえあればいい。それでとりあえず引き釣りが始められます。まずはあなたが既に持っている竿やリールが使えるかもしれません。
イチから道具を揃えるという段階であっても、1万円前後で引き釣りに必要な道具が用意できます。これは後ほど解説しますが、引き釣り以外の釣りにも使い回せるのでコストパフォーマンス最高の組み合わせがあります。
波止用タチウオテンヤの選び方とおすすめテンヤ
引き釣りに必要不可欠な波止用タチウオテンヤ。
様々なメーカーからたくさんの種類が売られており、その選択肢は膨大。どうやって選べばいいのでしょうか?
引き釣り用テンヤの選択肢が多すぎる問題
タチウオ釣りの中ではどちらかというと地味で堅実という立ち位置であった引き釣りですが、近年人気上昇の兆しが見えてきました。
それまでは中小規模の釣り具メーカーからしか発売されていなかった波止用タチウオテンヤが、大手メーカーやルアーメーカーから発売されるようになってきたことからもそれがうかがえます。
大手メーカーの例を挙げると、2017年に発売され豊富なバリエーションとサイズ展開で売り場面積を席巻しはじめたダイワの快適波止タチウオテンヤSS。
2020年は、満を持してがまかつからも波止用タチウオテンヤが発売されます。
2019年にはルアーメーカーのジャッカルから波止タチウオテンヤが登場。
タチウオシーズンになると、関西の釣具屋ではこれらの製品が大きな面積を取って陳列されます。選択肢が多すぎて何を選べば良いのやら困るほどに。
迷ったらダイワの快適波止タチウオテンヤを選ぼう
そんな状況の中、とりあえずこれを選んでおけば間違いないという引き釣り用テンヤがあります。それは、さきほども紹介したダイワの快適波止タチウオテンヤです。
その理由はこちら。
- スタンダードなタイプからアピール力が強いタイプまでバリエーションが豊富
- 遠投ができる重いものから超スローに引ける軽いものまでサイズ展開が幅広い
- サクサスというコーティングが施された針の刺さり具合がエグい
- まあまあ安い、高くはない
- どこでも買える
バリエーション豊富
波止用タチウオテンヤの基本を踏襲したノーマルタイプから、頭に蓄光素材のプロペラが付いた変態タイプまで、幅広いバリエーションがあります。
それぞれ違ったアピール力があるので、釣れない時間に使って試行錯誤できます。
でもたぶん引き釣りに慣れていくにつれて「結局ノーマルだけあればいい」という結論に至るとは思います。とはいえ変わり種のテンヤを使って釣るのもそれはそれで楽しいものです。
中でもチャター付きのものは手に伝わる振動でタナのキープがしやすく、初心者の方にはおすすめです。こちらは快適波止タチウオテンヤではなく太刀魚ゲッターを例にした記事ですが、理屈は同じです。
幅広いサイズ展開
重めの23グラムから超軽量の3.7グラムまでサイズ展開が幅広い。
例えばタチウオが沖にいる明るい時間は重いテンヤを遠投し、タチウオの活性が下がった夜は軽量テンヤをゆっくり引いて確実に食わせる。シチュエーションに合わせたサイズの使い分けができます。
めっちゃ刺さる針
ダイワ独自のサクサスという表面処理があり、針先や回転する機構のある釣り具に使われています。
そのため、針先の刺さり具合が他メーカーのテンヤより明らかに良くなっています。このテンヤを使い始めたら、準備中やエサ付けの最中に一回や二回は自分の手に刺してしまうでしょう。そのときに刺さり具合のヤバさを実感するはず!
まあまあ安い!高くはない
そして販売価格。だいたいひとつ400~500円で手に入るはずです。この価格、昔からあるテンヤより高いのは事実。でもシマノの太刀魚ゲッターに比べたら半分。というわけで高くはない!考えようによっては安い!
どこでも買える
日本全国の釣具屋でダイワ製品を取り扱っていないお店はまずありません。
すくなくとも引き釣りのメッカである関西圏の釣具屋なら、どこでも快適波止タチウオテンヤが手に入るはずです。なんせバリエーションが多いので全ての製品は並んでいませんが、よくあるサイズのテンヤなら間違いなく手に入るでしょう。
以上のことから、釣具屋でテンヤ選びに迷ったらダイワの快適波止タチウオテンヤをおすすめします。
ただこれじゃないとダメというわけではありません。引き釣りに慣れたら他も試して自分好みのテンヤを探してみましょう。毎年のように新製品も出ています。
よりカンタンな太刀魚ゲッターもおすすめ
オーソドックスなテンヤとはちょっと違うのですが、シマノの太刀魚ゲッターも人気のある波止用タチウオテンヤのひとつ。
独自の構造でエサ付けのスピーディーさとエサ持ちの良さを両立させた、第二世代の波止用タチウオテンヤです。
ただ、一般的な波止用タチウオテンヤに比べると倍以上の価格。根がかりなどで失くすと財布と心に痛い…。でもその価値はあります。
三宅商店のタッチポン陸も新しいタイプの波止用タチウオテンヤとして人気があります。
どのサイズのテンヤを選べばいいのか?
波止用タチウオテンヤには、同じシリーズ内でもいくつかのサイズが用意されています。
サイズの違いはオモリの重さの違いという認識でまずは問題ありません。仕掛け自体の長さや針の大きさが違うこともありますが、それはいったん置いときましょう。
市販されている最も軽いものなら約3.7グラム、つまり1号サイズ。重いものは約30グラムで8号。
一体どういう基準でどのサイズを選べばいいのか?
時間帯ごとのタチウオ移動パターンを知る
それを知るには、まず1日におけるタチウオの移動パターンを理解する必要があります。そこで昼から夜にかけてのタチウオの行動、移動パターンを図にしました。

昼から夜までの間でタチウオが回遊する域が変化します
昼間は沖の深いところにタチウオがいます。これは陸から狙えないので船で釣るしかない。テレビで見るタチウオの船釣りがいつも明るい時間なのはこういう理由です。
夕方になるにつれてだんだん岸に寄ってきます。そして陸から近い海面付近で積極的にエサを捕食するのがいわゆるタチウオの時合い。通常は日没前後にそのタイミングが訪れます。
朝はこの逆で、日の出前後に時合いが訪れ、その後タチウオは沖の深場に去っていきます。
明るい時間は遠投できて速く沈む大きめサイズ
タチウオは暗くなるにつれて岸に寄ってくる。
ということは、夕方前ぐらいには陸からテンヤが届く射程距離範囲内にタチウオが入り込んでくる可能性があるわけです。そしてこの時点ではまだ海底に近い深いタナを泳いでいることが多い。
これを狙うには遠投ができて迅速に深く沈められるテンヤ、つまり重めのテンヤが有効。
これには20グラム以上のテンヤ、5号から6号ぐらいが最適です。それほど使えるタイミングは長くないですが、周りよりいち早くタチウオを釣りたいなら1つは用意しておきたいサイズ。
朝は沖に去っていくタチウオを追いかけるように、明るくなるにつれ遠投すれば釣れるチャンスがあります。
風が強い日、潮の流れが速い日にも重めのテンヤが有用です。
夜になったらゆっくり引ける小さなサイズ
タチウオの時合いが過ぎ、気が付けば太陽も沈んで真っ暗。
日が沈むとタチウオの活性が一旦落ちてのんびりモードに。こうなると早い動きの仕掛けにタチウオがついてこれなくなる。ゆっくりとテンヤを落とす、そして引くことが有効になります。また、足元で釣れたり意外なほどタチウオが岸に寄ってきているので、あまり遠投する必要もなくなります。
ここでは10グラム、3号相当以下の軽いテンヤが活躍します。
20メートルぐらい沖の場所に軽く投げてから数秒だけ沈め、テンヤが浮いてこないギリギリの低速でリールを巻く。ちょっと止めたり動かしたりトリッキーな動きを混ぜたり。
夜中のタチウオ釣りというとウキ釣り一択というイメージがあるかもしれません。でも軽いテンヤを使えば夜でも引き釣りが通用します。
ここ数年で軽いテンヤへの注目が集まっていて、今まで無かったような小さいサイズのテンヤが売られるようになりました。
万能サイズは15グラム4号相当
というわけで、幅広いサイズのテンヤを用意しておけば明るい時間から夜まで対応可能!夜しか対応できないウキ釣り、昼しか釣れないルアー釣り。引き釣りならすべての時間に対応できるわけです。
だからといってそんな何個も用意できるか!
というあなたは、さしあたり万能に使えるサイズを1つ2つ用意しておきましょう。それは15グラム前後、4号相当のテンヤ。タチウオが最も釣れやすいまずめ時にも最適なサイズと言えます。
ダイワの快適波止タチウオテンヤなら「S」サイズです。
迷ったら15グラム前後、4号相当。これさえ持ってればまずは良し!
なお、根掛かりしたりタチウオの歯に切られたりでテンヤを失うことは普通にありますので、必ずいくつかスペアを用意しておきましょう。

タチウオの時合いをむかえつつある関西の釣り場
引き釣りに使うロッドとリール
どんなテンヤを選べばいいか分かったところで、次はこのテンヤを投げるためのタックル、ロッドとリールを考えていきましょう。
テンヤが投げられるタックルならOK…だけど
極論を言うと、20グラム程度までの仕掛けが投げられるタックルならとりあえず引き釣りをすることが可能です。
例えばサビキ用に使っている磯竿。初心者用チョイ投げセットに入っていた竿とリール。トラブルなくそれが使えているなら、まずはそれをそのまま使うことができます。新しく買うのはもったいないから手持ちの道具で試しにやってみようというならアリな選択です。
そして私自身、サビキに使っていた3号の遠投磯竿で引き釣りをやっていた時期がありました。そしてそれでちゃんとタチウオが釣れてました。長さも4.5メートルあったんで、その辺のルアーマンより遠投できてました。
でも磯竿だと柔らかすぎてアタリが分かりにくい。エサ釣り用としてリールに巻いていたナイロンラインも感度が悪くてアタリが分かりづらい。重いから疲れる。それに気づいたのは、引き釣りに合ったロッドを選び、そしてPEラインを巻いたリールを使い始めてからでした。
リーズナブルかつ万能に使いたいならMLクラスのシーバスロッド
有り合わせのタックルでも引き釣りが出来なくはないですが、やっぱり使いやすいタックルを選んだほうが釣果も上がるし釣り自体も楽しめます。
30年ほど前の昔は投げ竿が使われていましたが、近年の引き釣りはルアーロッドを使うことが半ば常識ととなっています。ルアーロッドも多種多様ですが、ML(ミディアムライト)からM(ミディアム)クラスのシーバスロッドが使われることが多いと思います。
その条件に当てはまるロッドをなるべく低価格でコストパフォーマンスが高いという観点で選ぶと、入門用のルアーロッドとして人気のルアーマチックS86MLがおすすめ。
こちらの記事で詳しく解説しています。
引き釣り以外にもいろいろな釣りに使えるので、今から本格的に釣りを始める初心者なら買って損はありません。
引き釣り専用ロッドというものも僅かながら販売されていますが、それは引き釣りに慣れてからこそ価値が分かるものです。釣り慣れたあとで検討すればいいでしょう。
2500~3000番台のスピニングリールにPEラインを巻く
さっき紹介した引き釣り用のロッドに合うのは2500~3000番台のスピニングリール。他のいろいろな釣りにも応用が利く万能サイズです。
私のおすすめはシマノセドナ2500S。
価格と性能のバランスがとれた、入門機で最もコストパフォーマンスが高いリールのひとつといえます。末尾のS品番はシャロースプールという溝の浅いスプールを搭載したリールで基本的にはPEライン専用。先に紹介したルアーマチックS86MLとの相性も抜群。

ルアーマチックS86MLとセドナ2500Sはベストマッチ
このリールに巻くPEラインも低価格かつ高コストパフォーマンスという観点で選ぶなら、同じシマノのピットブルが第一候補に挙がります。
ナイロンラインに比べてPEラインは高価ですが、最近は安くて十分な性能を持ったPEラインがたくさん出てきています。一流メーカーから発売されているPEラインが1,000円程度で買えるなんて数年前までは考えられなかったこと。
PEラインは扱いが難しそうだから避けたい…というのであればとりあえずナイロンで試してみてもいいと思います。でもナイロンとPEはラインを通して手元に伝わる情報量が桁違い。情報の解像度が違う。ブラウン管テレビとフルHDの液晶テレビぐらい違う。
その違いは釣りの楽しみにつながります。潮の動きや魚からの反応がはっきり分かるようになり、「釣れた」が「釣った」に変わります。
令和版!引き釣り仕掛けの全体図
ロッドとリール、そしてそこに巻くPEラインまで選びました。
その先にある仕掛けのセッティングを見ていきましょう。まずは全体図を見て大まかなイメージをつかんでみてください。

引き釣りの仕掛け例
ここ数年の流れとして、従来は当たり前だったワイヤーリーダーをつけないというセッティングが増えてきました。市販の仕掛けでもワイヤーリーダーがついていなかったり、その代わりに太いナイロンリーダーがついているものも出てきています。
では、リールから出たPEラインの先に付けるものを一つずつ補足していきます。
PEラインの先には極太のナイロンリーダを結束
リールから出したPEライン。
これとテンヤの直結はなるべく避けて、ある程度の伸縮性がある太めのリーダーを結束します。これはキャスト時やタチウオを掛けたときのショックによるラインの破断と、タチウオの歯による切断を避けるため。
リーダーにも素材によって色々選択肢がありますが、引き釣りにおすすめなのはナイロンリーダー。太さは40lbから60lbぐらいの極太サイズを。普段の釣りではなかなか見ないであろう、細麺のパスタぐらいの太さ。
同サイズのフロロリーダーでもいいのですが、ナイロンにはこんなメリットがあります。
- フロロに比べて比重が軽いからテンヤをゆっくり沈められる
- 柔らかいからPEラインとの結束を組みやすくすっぽ抜けしにくい
- フロロよりしなやかだからスナップに結びやすい
フロロに比べると水分による劣化が早く、交換時期が早くなるデメリットが有ります。でもナイロンのほうが釣果を上げられる可能性が上がります。
結束がどうしても苦手でなるべくやりたくないのであれば、長持ちするフロロでも問題ありません。
タチウオの歯による切断に対抗するため40lbから60lbという極太のリーダーを使うわけですが、これでも切れるときはスパッと切れます。そうめったにないけど。どうしても心配なら、この先にワイヤーリーダーを付けましょう。
ただ一般的な見解としては、ワイヤーリーダーがあると食いが落ちるということが常識になっています。ワイヤーの利用は各自ご判断を。
なおPEとリーダーの結束はFGノットが最適です。なにせリーダーが極太なので、リーダーに結びコブができるノーネームノットのような結束は向いていません。ここでは結束方法を省略させてもらいますが、頑張ってFGノットをマスターしましょう。
リーダにケミカルライトを装着
タチウオ釣りの定番アイテムのケミカルライト。ルミカのケミホタルが定番ですが、最近はダイソーでも安く売られています。
これは「タチウオに対して集魚効果がある」ということでタチウオ釣り全般で当たり前に使われているのですが、実際のところその効果のほどはよく分かりません。少なくとも私の実感としては。全く同じ条件で有る無しのテストをしたわけでもないし。
集魚効果の是非は一旦置いておくとして、引き釣りにおいてのケミカルライトは仕掛けの着水位置と水面下の位置を確認する目印として確実に役立ちます。トラブルを避けて釣果をあげるためには、夜間の必須アイテム。
タチウオが釣れる釣り場は例外なく混雑しており、投げた仕掛けが隣と交差することもよくあります。しっかり着水した位置を確認しておかないと、他人の仕掛けを引っ掛けたまま回収してしまうなんてことも。ケミカルライトがあれば着水位置がしっかり分かります。
また、海面直下で陸に近いタナを狙いたい場合、海面下でボヤッと光るケミカルライトをその目印にすることができます。仕掛けの回収時、たとえ真っ暗闇であっても、ケミカルライトが光っていれば安全に回収できます。
ケミカルライトのサイズもいろいろありますが、夜に遠投して視認できるサイズは37以上を目安に。25は遠投するとほとんど見えません。
37か50が実用的です。
透明パイプか専用ホルダーが付属しているので、それを介してリーダー上に取り付けます。取り付け位置はテンヤから50センチぐらいを基準に、シチュエーションによって遠ざけたり近づけたり試行錯誤をしてください。タナと同じく、その日によって正解が変わります。
リーダーに結んだスナップでテンヤと接続
シチュエーションに応じてテンヤのサイズを変えると効果的、それは既に分かってもらえていると思います。
釣れないときはいろんなテンヤを付けたり外したりローテーションして試行錯誤をするべき。そんなテンヤの交換にいちいちラインを結び直してると大変なので、ルアー用のスナップをリーダーに結んでおきましょう。
20kgぐらいの強度があればタチウオ用として十分です。
テンヤにつけるエサの選び方
竿もリールも選んだ!ラインの先に付ける仕掛けも大体わかった!テンヤ選びもバッチリだ!あとはテンヤにエサを付けて海へ放り込むだけです。
その肝心のエサ、何を選んだらいいでしょうか?
最強の引き釣り用エサはドジョウ
引き釣りのエサとして最強なのはドジョウです。
え?海釣りなのに淡水のドジョウを?という疑問は誰しもが最初に持ち、そして試しに使ってみたらばその最強の意味が理解できるはず。その最強伝説を紹介しましょう。
- 全身筋肉ともいえる強靭な身でタチウオにかじられても切れにくく、1匹のドジョウで何匹もタチウオが釣り上げられる。
- 少なくとも関西にある釣具屋でタチウオのシーズンであれば安価で手に入る(1匹100円以下)。
- ドジョウのにおいやうまみ成分がタチウオをひきつけて離さない(らしい)。
- ドジョウのひれやしっぽのゆらゆらがタチウオを狂わせる(らしい)。
地域と時期は限定されますが、必要な時に簡単に手に入ってエサ持ちがいいというは確か。あとはタチウオに聞いてみないと分からない。
しかしドジョウは生きたまま売られるエサ。生き餌を取り扱っていない釣具店にはありません。そしてエサとして使うにはこれを締めて動きを止めてから、ヌルヌルと戦いつつテンヤに付ける必要があります。
初心者にはキビナゴをおすすめ
ドジョウの効果は分かったけど、ちょっと敷居が高い。
そこで、もっとお手軽に引き釣りをしたいならキビナゴをおすすめします。柔らかくてエサ持ちが悪いという以外はドジョウと遜色ありません。

まずはキビナゴから始めてみよう
冷凍のショーケースで凍ったまま売られているエサなので、生き餌を取り扱っていない釣具屋でも確実に手に入ります。値段も1回の釣りで使う分なら500円ぐらいで買えます。
そして魚屋で生のキビナゴが手に入ったなら、ぜひ自家製塩締めにしてください。そうすることでもっと安く、もっとエサ持ちがいいキビナゴを作ることができます。
余った分は再度冷凍すれば次回以降も使えます。
引き釣りの仕掛けに取り付けられるならいろいろなエサが使えますが、まずはキビナゴから始めてみてはいかがでしょうか。
その他、サビキで釣れた小イワシや豆アジなんかも使えます。その日その場で釣ったカタクチイワシなんかは最高のエサになります。そのカタクチイワシを追ってタチウオが接岸するのだから、これ以上ふさわしいエサはありません。
実践!引き釣りの流れをマスターしよう
ここからは釣り場での引き釣りの流れを説明していきます。
テンションフォールでテンヤを沈める
まだ明るい時間、日没前の狙い方から解説します。これを覚えて応用すればどの時間帯にも通用します。
日没前は沖からタチウオが接岸しつつある時間帯。タチウオがどれだけ岸に近づいているか分かりませんが、まずは出来る限りテンヤを遠投しましょう。
海面にパシャッと着水したら、一旦海底まで沈めてしまいます。沈め方には2つの方法があります。
- フリーフォール
- テンションフォール
着水後もそのままリールのベールを開いてラインを放出させつつ沈めるのがフリーフォール。
着水と同時にベールを戻してラインの放出を止め、ラインを張った状態で沈めるのがテンションフォール。
タチウオ釣りにはどちらも有効なのですが、ラインを緩めたフリーフォールはタチウオの歯に切られてしまうリスクが高まります。まずはテンションフォールで沈めてみましょう。

テンションフォールで沈める
テンションフォールなら、次に説明する「底をとる」ということが容易になります。
テンヤが底につくまでの秒数をカウントする
テンションフォールで沈めたテンヤはやがて海底につきます。
その海底についたということを知るのが重要なポイント。これを「底をとる」といい、引き釣り以外にも様々な釣りにおいて必要な情報になります。
底についた時点でラインを通して反応が返ってきます。ピンと張っていたラインが緩む、フッと竿先が軽くなって持ち上がる、手元にストンという感覚が伝わるなど。風が強かったり潮の流れが速かったりすると分かりにくいですが、集中してそれを感じ取ってください。
この底を取った際の反応を得るには、ナイロンラインよりPEラインの方が圧倒的に有利です。
底をとるのに慣れたら、今度は着水から着底までにかかる時間をカウントしましょう。

着水してから着底するまでの秒数を数える
これでそのポイントの海の深さを知るヒントが得られます。とはいえ具体的にそこが水深何メートルかという数字を知る必要は全くありません。
このカウントは水深そのものを測るのではなく、自分なりの物差しを設定する作業と考えてください。
例えば着底まで10秒かかったとしましょう。この時点であなたは水深を10等分する物差しを得たことになります。ちょうど真ん中の中層を狙いたいなら、着水から5秒経った時点でその層に仕掛けが落ちたことになります。海底すれすれを狙いたいなら、8秒や9秒を目安にすればいいわけです。
タチウオを狙うにはタチウオが泳いでいる層、つまりタナを知ることがとても重要。このカウントによって集中的に同じタナを狙うことが可能になります。そして何度もトライすることでアタリが多いタナを見つけ、その日その時に狙うべきタナを絞り込むことができます。
海でも川でも、ルアーをはじめとした色々な釣りに応用できるのが「底をとる」というテクニック。釣果を上げるには必須です。必ずマスターしましょう。
明るい時間は底にタナから探る
まだ日没まで時間が残された明るい時間、あるいは日の出から1時間ほどの時間は、タチウオが沖の底にいる可能性が高い。
この場合、底から狙いを定めていくのが効果的です。ここでカウントが役に立ちます。例えば10秒で着底していた場所なら、着水からカウント8秒9秒ぐらいのタナを狙いましょう。海底スレスレで仕掛けを引くことができます。

明るい時間は底から攻める
2~3回投げてアタリがなければカウントする秒数を減らしていき、段階的に上のタナも狙っていきます。なければまた底に戻って徐々に上げていく。この繰り返しです。
時合い以降は海面に近いタナから探る
日の出日の入り前後は、海面に近く浅いタナにタチウオが回遊している可能性が高まります。
着底までのカウントは一旦忘れて、こんどは着水からの秒数でタナを探っていきましょう。

時合いや夜間は海面から狙っていこう
時合いであれば、着水から5秒以内ぐらいの浅いタナで釣れることが多い。その範囲のタナを集中的に探ってスピーディーに攻めてきましょう。タチウオの時合いは短かければ10分程度で終わります。時間との勝負です。
また、暗い時間は遠投したテンヤを追って足元付近までタチウオが追いかけてくることがあります。最後まで気を抜かず、仕掛けをあげる直前までチャンスがあるということを意識してください。仕掛けをあげた直後に水面を見たら、タチウオがプイっと沖に引き返していってしまう光景をよく見ます。
基本はまっすぐ引いてくるだけ
テンヤを引いてくるタナを決めたら、あとは引き釣りの名の通り引いてくるだけ。
まずは実直に一定速度でリールを巻いてテンヤを真っすぐ同じスピードで引っぱってきましょう。いわゆる「タダ巻き」というテクニックです。同じタナを引いてくる、海底あるいは海面と平行に引くということを意識して。
リールによってラインの巻取り量が異なったり潮の流れで浮いてきたりするのであくまで目安ですが、一秒間にリールのハンドルを一回転というペースがひとつの基準。

まずは愚直にまっすぐ引いてこよう
初心者であればチャター付きのテンヤがおすすめ。振動を感じることで一定スピードを保つことが容易になります。

YouTubeなどで引き釣りの動画を見ていると、名人らしき人が竿先をちょんちょん動かしたり止めたり、いわゆる誘いをかけていたりします。もちろん名人がやって実績を上げているからには有効なテクニックなのですが、まずは一旦忘れましょう。
とにかく初心者は真っすぐゆっくり一定速度で引け!
疑わしきアタリはアワセよう!
見事タチウオが泳いでいるタナを探し当てたとします。タチウオのアタリはどんな感じで手元に伝わるでしょうか?
最も分かりやすくそしてフッキングが成功しやすいアタリは、根掛かりのようなガツンというアタリ。本当に根掛かりしたのかと思うぐらい、ぴたっと仕掛けが止まって動かなくなります。このパターンの場合、すでに針が掛かっている「向こうアワセ」になっていることが多く、高確率でタチウオを釣り上げることができます。
もう一つのパターンはゴツゴツと強い感触が連続的に手元に伝わるアタリ。タチウオがエサを咥えた反応です。惜しくも掛けられず仕掛けを回収すると、タチウオの歯でエサがボロボロになっていることが多いはず。この場合、エサの咥え方によっては掛からないこともありますが、とりあえず竿をあおってアワセを入れちゃいましょう。掛からなかったとしてもそれは運。仕方ない。
そしてこれは感知するのが難しいのですが、テンヤが着底してないにも関わらず、フワッと軽くなって竿先が持ち上がるアタリがあります。タチウオがエサを咥えて上や手前に泳いできているわけです。急いで巻き取ってアワセる必要があります。
とにかく初心者のうちは違和感があればアワセましょう。
ただ、これはどうなんだろう?という小さな違和感を感じるアタリもあります。こういった場合は、ほんの少しの間だけ引くのをやめて「食わせる」間をとってやるとフッキングに持ち込めることもあります。
慣れれば、アワセるべきアタリ、待つべきアタリの判断ができるようになると思います。
引き釣りで1匹目のタチウオを
初心者に最適なタチウオの釣り方として引き釣りを紹介しました。
これでまずは1匹目のタチウオを釣り上げて、その引きの強さ、生きたタチウオの美しさ、そしてタチウオの美味しさを堪能してほしい。どんどんタチウオ釣りにはまっていくことでしょう。
引き釣りに慣れたら他の釣り方にも挑戦してみてください。エサ釣り、ルアー釣り、それぞれ違った楽しみがあります。
ウキ釣りはタチウオを掛けるまでは静かな釣りに見えますが、ウキに反応が出た時点でタチウオとの駆け引きが始まるスリリングな釣りです。これはこれで面白い。
釣ったタチウオは色々な食べ方ができます。塩焼きが定番で、あなたも食べたことがあるかもしれません。でも釣り人だからこそ味わって欲しいのは刺身。ひょろ長い魚だからさばくのが難しそう?いいえ、魚の中では簡単な方です。
とにかくタチウオを釣りたい!そう思ったらまずは引き釣りにチャレンジしてください!