一番美味しい魚は何か?
そう問いかけられたなら迷わず「マアジ」と答えます。
アジなんて安い魚だろうと軽く見ている人がいるかもしれないが、美味いもんは美味い。必ずしも値段に比例して魚が美味しくなるわけではない。安い大衆魚だろうが美味いもんは美味いのだ。
そんなマアジですが、わが大阪湾には「メクリアジ」と呼ばれる至高の、いや究極のマアジが存在するという。
自分で釣って食べて確かめないといけません。これはメクリアジを求めて大阪湾を奔走した初夏の記録と考察です。
そもそもメクリアジってどんな魚?
メクリアジとは
メクリアジとは何なのか?まず100文字程度で説明します。
メクリアジは大阪湾北部から明石海峡周辺で初夏に釣れる20~30センチ程度のマアジで、全国各地でブランド化されている瀬付きアジと同じ特徴を持ち、口の中で溶ける脂と豊潤な旨味が絶品
メクリアジを定義する
メクリアジという名前の魚はいない
大前提として知っておくべきこと。
メクリアジという呼び名は大阪湾、その中でも明石海峡周辺や神戸沖などの北部で用いられるマアジの地方名だということ。それらのマアジの中で「ある特徴」を持ったマアジのことを指します。
メクリアジという独立した種のアジがいるわけではありません。
初夏に大阪湾で釣れる瀬付きタイプのマアジ
かつては釣りサンデー、今はビッグフィッシングでお馴染み、関西釣り界の重鎮今井さん。その今井さんが2012年に書かれた記事の内容を引用します。
毎年、初夏になると大阪湾に入ってくるマアジなんですが、いわゆる瀬付きタイプと呼ばれている奴です。大きくても30㎝まで、体高が高く、各ヒレが黄色くて、全身が黄金色に輝いて見えるため、黄アジとも呼ばれます。このマアジは、3枚に下ろしたあと手で皮をめくってから刺身にするため、明石周辺ではメクリとかメクリアジと呼ばれているのです。マアジの産卵は春ですから、産卵を終え、すっかり体力を回復した初夏のころが一番美味しいといわれています。刺身にするためにお腹を開いたとき、腹腔に真っ白い脂がべっとりへばりついているようなアジは、間違いなく絶品です。
出典:関西の沖釣り名人 今井浩次の「今日も釣り気分」|関西最大級の釣り情報サイト「関西釣り百選」
この記事からメクリアジについての重要なフレーズを拾ってみましょう。
- 初夏になると大阪湾に入ってくる
- 瀬付きタイプのマアジ
- 黄全身が黄金色に輝いて見えるため黄アジと呼ばれる
- 皮を手でめくれるからメクリアジ
- 開いたとき腹腔に脂肪がべっとり
これらの情報から、大分県の関アジや島根県のどんちっちアジなど、日本各地で黄金アジなどと呼ばれブランド化されている瀬付きのマアジと同じタイプのアジであると推測できます。
メクリアジの特徴
メクリアジについて分かっている情報をこの段階でまとめます。
実際釣ってみることでこの情報に確証が得られるかもしれませんし、さらに追加できる情報が出てくるかもしれません。
実際に釣って確かめました
いずれにせよ通常のマアジとはちょっと違う特別なマアジが大阪湾で釣れるわけです。
そしてそれは美味しいということも確からしい。マアジこそ最高の魚と言うからには自分で釣って確かめないといけません。
というわけで実際に狙って確かめてきました。それぞれ、船、沖提、地続きの波止での釣行です。
5/21 船から神戸沖のメクリアジを狙う
2022年の5月後半に船からメクリアジを狙いました。
4月中旬ぐらいから12月まで「メクリアジ」狙いの便が出ている須磨の純栄丸さんに乗船。メクリアジ狙いの船としては有名どころです。4月というのは波止で釣れるよりずっと早いタイミングですね。
当日、この船から狙った主なポイントは3か所。いずれも須磨からそう遠くない神戸市沖。
神戸空港周辺のポイントでアジを釣る
5/21の午後0時。赤くてレトロな旧和田岬灯台付近から出航した船は僅か数分で最初のポイントに。
須磨沖のポイント
まだ灯台がはっきり見える程度に近い須磨沖です。何の変哲もないポイントに見えましたが、終了間際にもここに寄ったのでおそらく海底に瀬があるなど周囲の地形に比べて変化がある実績ポイントなのでしょう。結果的にここでは船内ほとんど釣果なし。
メクリアジの定番 神戸空港の誘導灯
続いて向かったのは神戸空港西側にある誘導灯の周り。後々知ることになりますが、神戸沖のメクリアジとしては鉄板のポイントです。
誘導灯を支える4本の柱がそのまま延長線上に広がって海底まで続いていると思われます。いわゆるストラクチャーなので魚が居付きやすいポイント。
ここでようやく最初の釣果にめぐまれました。上がってきたのは30センチ近い丸々としたマアジ。
波止で釣れたらガッツポーズするであろう良サイズ。厳密には27~28センチというところ。ここではアタリが途絶えるたびに次々と違う柱へ船を移動してくれて、2時間ほどの間コンスタントに釣果が伸びました。
神戸空港の連絡橋下
午後3時を過ぎて向かったのが神戸空港北側にある連絡橋の橋脚。
ここでもすぐに釣果がありましたが、サイズが一回り下がった20センチ弱の群れになったようです。
ここでもポロポロと拾えたものの、次第にアタリが遠のいていき終了時間も迫ってきました。最後にもう一度須磨沖のポイントで竿を出すものの釣果は出せず午後5時帰港。結果16匹。取り込み時のポロリ多数。
美味い!しかしまだポテンシャルを秘めている
刺身で食べてみよう
さて、メクリアジ便で釣れたマアジなのだからこのマアジもメクリアジに違いない。どう食べる?そりゃまずは刺身やろ?ということで数匹分をまとめて刺身にしました。
さばいているときの感触で分かっていましたが、なかなか脂がのっています。血合いが白濁してピンク色になっていることからも脂の強さがうかがえます。
そして美味い!確かに美味い!しっかり美味しいマアジだ。ご飯がすすむ。
メクリアジと呼ぶにはちょっと足りない
実はもう過去にしっかり脂ののったメクリアジを食べたことがあり、それには及ばない脂のりであることも確かでした。
あの指先で溶けてヌルヌルになる、舌の上でトロリと溶ける脂ののりではない。もっとポテンシャルがある。まだ変身を2回残している。なぜだ?
産卵時期がキーになる
先ほど引用した今井さんの記事に『マアジの産卵は春ですから、産卵を終え、すっかり体力を回復した初夏のころが一番美味しいといわれています』とありました。
一方で今回釣ったマアジにはもれなく白子か真子が入っていたことから産卵前だと思われます。
ここから産卵を終え体力を回復し、初夏に脂のりがピークになるのだろうと推測されます。そういえば乗船前に常連さんらしき人が「まだメクレてない」というキーワードを発していました。早すぎたんだ…
脂がのってなくてもマアジは美味しい
私自身は脂のり至上主義者ではありません。
脂がのってようがのってなかろうがマアジは美味い。脂がどうあれそれぞれの味わいが楽しめる。そういうスタンスです。ツバスだって工夫して食べれば美味いと思う。
今回のマアジは漬け丼にもしたのですが、脂が強くてタレが十分に染み込まずイマイチでした。これは脂控えめなアジのほうが適切といえます。適材適所。
なにはともあれ、もう少し夏に近づいたマアジも狙わねば。
7/5 武庫川一文字で夕マズメのメクリアジを狙う
梅雨らしい梅雨、梅雨過ぎる梅雨が続く2020年の7月。(船で狙った時と時系列が前後していますがご了承ください)
武庫川一文字でメクリアジの釣果が入り始めました。荒天が続き渡船中止が相次ぐ中、ようやく週末に晴れるタイミングが。ここを逃せばいつ行けるか分からないということで、夕まずめをねらって渡堤することに。
対メクリアジ用アイテムを用意
メクリアジ対策として、ムコイチの大型アジでは定番になっているハヤブサの蓄光スキンを数種用意。
これまた定番の鉄製カゴも調達。これで迅速に底まで落としてサバやイワシを避けます。
2020年恒例のサバ地獄とタコ
広い範囲の船着き場を選択できる武庫川渡船。今日は2番の位置を選択。
アジの時合いになるであろう夕方までは時間があるので、その間色々な獲物を狙ってみます。
新型コロナによる非常事態宣言解除(この年は新型コロナが流行しはじめた最初の年でした)ぐらいから大阪湾各地で釣れまくっている小サバは当然ここにも。サビキだと収拾が付かないぐらい釣れるので、適当にジグやジグサビキを投げてぼちぼち楽しめる程度に釣り上げます。どんなルアーにも食ってくるのが楽しい。
時間があるので色々な釣りを試そうと持ってきていたタコジグで堤防のすき間付近の底を叩くと、持ち帰りサイズのタコゲット。
人が少ないので周辺のすき間をくまなく探るも後が続かず。
15時を過ぎると少し夕方の気配が出てきたので、ぼちぼちサビキを開始します。
しかし足元は表層から底までサバ地獄。買ったばかりの蓄光スキンサビキが一瞬で絡んで使用不可に。
足元はそんな感じなのでウキをつけて近投、かけあがり付近のベタ底をねらいます。でもやっぱりサバ。どこ投げてもサバ。2枚目の蓄光サビキも光の速さで糸くずに。
自分史上最大の波止マアジ
もういいやといつもの安ピンクサビキに変えたところ、サバとは違う直線的で重い引き。足元に見えたのは丸みのある魚影。アジだ!マアジだ!しかもデカイ。
慎重に抜き上げて計測。えっ!デカッ!
全体的に黒っぽいのが気になるけどこれがメクリアジなのか!?サイズは27~28センチというところ。体高も高くて厚みがある。よっしゃどんどんいくぞ!
しかしこれ以降アジは釣れず。周りも特に動きはなくサバばかり。どんどん日が傾いて良い雰囲気になってくるも風が強さを増していきます。
そして時合いがくるならこれからだろうという18時前。近づいてくる渡船から「注意報発令のため引き上げ」のアナウンスが。無念。
またしてもメクリアジではなかった
持ち帰って早速マアジをさばくと…あれ?特に脂がのってる感じではない。
例の内臓脂肪みたいなものも入ってません。これはメクリアジと言えないよなあ。とはいえマアジであることには変わりないので刺身でいただきました。釣った直後に血抜きをしておいたせいもあり、これはこれでさっぱりした風味で美味しい。やっぱりマアジはどうやっても美味しい。
マアジには大別して2種類のタイプがあり、ひとつは今回狙おうとしているメクリアジのような「瀬付き型」のマアジ、通称黄アジ。もうひとつが「回遊型」のマアジ、通称黒アジ。
今日釣れたタイプどちらかというと回遊型の特徴も持っていました。残念だけどこれはメクリアジではない。
7/18 波止から夕マズメのメクリアジを狙う
武庫川一文字での釣行から2週間後の週末。梅雨末期。再び晴れ間が期待できる日が訪れます。
漂流物多数で釣りづらい
しかし増水による障害物が多数漂流してるらしく、前回と同じくムコイチは早い時間の引き上げになるというお知らせが。どうせなら日没前後を狙いたいし、土用の丑の日用にウナギの代用としてアナゴを調達したかったので、渡堤せず阪神間で地続きの波止から狙うことにします。
やはり明るい時間はサバ地獄。そして漂流物が多くて釣りづらい。右から左へ、木の枝、丸太、ボラの死体、鯉の死体がどんぶらこ。濁った潮と澄んだ潮が頻繁に入れ替わる荒れ具合。
ついにメクリアジが…
こりゃ今日もきついかなと思いながら夕まずめを待ちます。
今年は豆アジをろくに釣っていなかったので、3号ぐらいの小さいサビキを置き竿にして待っていると、日没30分前に強いアタリ。水面に見えたのは20センチ強のマアジ。キタキタ!っと抜き上げるもポロリしてオートリリース。
そうか、これは魚のサイズに対して針が小さすぎるんだ。
慌てて仕掛けのストックから7号のサビキを取り出して交換したところ、次のアタリで取り込みに成功。やっぱりサビキは針のサイズが大事です。底まで沈めたら毎投掛かるペースでしたが、わずか10分足らずで時合いが終了。20センチ強のマアジが全部で7匹。
この日の釣果はマアジ7匹、豆アジ2匹、サバ数匹(リリース多数)、カタクチ&ウルメイワシ数匹、ガシラ数匹。アナゴは釣れず。
波止から釣るにはそこそこサイズのマアジといえますが、前回よりサイズダウンしてしまいました。
見たところサイズの割には体高が高くて身も厚く小顔。全体的に黄色っぽい気もする。果たしてこいつらが噂のメクリアジなのか?さばいて確かめねば。
結論からいうと、これこそがメクリアジと呼ぶにふさわしいアジでした。
実食!メクリアジを刺し身で食べてみた
脂のりがすごい!
改めてもう一度観察してみます。
うーん、普通のマアジといえば普通のマアジ。分からないのでさばいて白黒つけましょう。
(処理中…)
…あっ!これは!当たりじゃないか?
内臓はグロく写ったので自主規制するとして、三枚におろした後に残った骨をご覧ください。
腹腔の脂肪
赤丸で囲んだところ、腹腔の終端あたりに脂肪の塊のようなブヨブヨが見えると思います。お腹を開けると同じものが内臓を囲んでいました。そもそも、中骨に残った身が妙に白いのがお分かりいただけるはず。
さばくときもヌルヌル滑ってやりにくかった。これは明らかに脂がのっている証拠。7匹さばいたところ、多少の差はあれどみんなこの状態でした。
刺し身が絶品
これをどう食べるかって?そりゃ刺し身でしょ!
というわけで7匹全部を盛った皿がこちら。
ではわさび醤油で食べてみるとしましょう。やっぱり普通のアジと比べたら身が白いしちょっとサシも入ってる。血合いまで白っぽい。
醤油皿に脂が浮いているのが見えますね。では実食!
口でとろける脂
こ、これは…美味い!
今さら言うまでもなくめっちゃ脂がのってる。普通のマアジとは別次元で脂が口の中でとろける。かといって養殖の魚みたいにくどいこともなくどんどん食べられる。これは最高!
定義はどうあれ、これはもうメクリアジということでいいでしょう。世界よ、これが大阪湾のメクリアジだ!ひれ伏せ!ひざまづけ!命乞いをしろ!(小僧から石を取り戻せ)
今回はすべて生で食べましたが、一夜干しにしたり塩焼きで火を通して食べるのも美味しそうです。夢が広がります。
脂がのってなくてもマアジは美味い
なお、私は醤油、味醂、酒で作ったタレに刺身を漬けて漬け丼を作るのが好きなんですが、メクリアジで同じことすると脂がタレをはじいてしまい通常の分量では上手く漬かりません。醤油を多めにするか、盛り付けた後で追い醤油をするなどして調整しましょう。
そもそも漬けで食べるならこれほど脂がのったアジではなく、ごく一般的なアジで作る方が美味しいかもしれません。
適材適所。結論としてマアジはどんな状態でも美味い。
メクリアジを検証する
ということで、どうやらメクリアジらしいマアジを釣って食べることができました。そしてその美味しさにも納得しました。
ここで巷に流れるメクリアジの情報と今回の実体験を合わせて検証してみたいと思います。
沖堤や釣り公園で釣れているのは本当にメクリアジなのか?
メクリアジが釣れるのは間違いない
武庫川一文字やその近くにある尼崎釣り公園ではメクリアジが釣れているという釣果情報を出しています。これ本当?客引きのためだけにその名前を使ってない?
これに関しては、全てがメクリアジではないけどメクリアジと呼べるアジも釣れているという解釈でいいんじゃないかと思います。メクリアジの定義を「大阪湾で釣れる脂がのったマアジ」とするなら。
個体差がある
大きなアジは釣れるけど、その全てがメクリアジ的な脂のりを持ったマアジかというとそうでもなさそう。船で釣ろうが波止で釣ろうが個体差がある。だけどその中にメクリアジが交じるというのは間違いないでしょう。
実は過去にも波止からメクリアジを釣ったことがありました。ちょうど豆アジの時期に妙に脂のりが良くてサイズもいいマアジが釣れたのです。その時はメクリアジという存在を1ミリも知らずに。
当時は経験も浅く、例の内臓脂肪も「崩れた白子」だと思ってました。でも今までマアジでは味わったことのない脂に驚いた記憶が鮮烈に残っています。
大きければ脂のりがいいというわけでもない
30センチに近いような波止から釣れるにしては特大サイズのマアジは脂がのっておらず、どちらかというと20~25センチぐらいのサイズの方が脂がのっている傾向にあるようです。サイズがいいほうが脂がのっているイメージがあったのでこれは意外でした。
2020年の大阪湾では初夏以外の季節でも比較的大きなマアジが釣れる機会がちょくちょくありました。それもやはり30センチ近いサイズより20センチ台前半ぐらいのマアジの方が脂のりがいい傾向にありました。
初夏限定の釣りものとして
最近は大阪湾近辺で釣れた良型のマアジであればどの時期に釣れてもメクリアジと呼ぶ傾向があります。
脂がのってようがのってまいがどの季節に釣ろうが、良型のマアジが釣れたらメクリアジが釣れたぞと。正直これにはちょっと違和感を覚えます。初夏に釣れる脂がのったアジこそをメクリアジと呼んだ方が有難みがあるなと。例えば秋に釣れた鯛を桜鯛とか言うのは違和感あるじゃないですか。
季節の恵みを享受できる有難みを噛み締める、それが釣りの楽しみの一つと私は思います。
メクリアジは皮がカンタンにめくれるのか?
本当に皮がめくりやすい?
皮下脂肪が多いから手で皮がカンタンにめくれる。だからメクリアジと呼ばれる、そういうことになっています。
しかし、そもそもマアジは手で皮をめくることができる類の魚です。少なくとも私は10センチ以下の豆アジから30センチ程度のまで手で皮を剥いで刺身にすることも多いです。
どちらかというと手ではメクリニクイ
実際にメクリアジを刺身にすべく皮を手でめくってみたところ…
むしろメクリアジは脂で手が滑るし、身が柔らかいから手で皮が剥ぎにくいという。これ、メクレナイアジですやんっていう。確かに普通のアジよりは剥がれやすいんだけど滑りやすい。結局のところ、手ではなく包丁の背を使って皮を剥ぐ方がかんたんかつ綺麗にできると思います。包丁の方が銀皮も残ります。
目がクリクリしてるからメクリアジという説
一方で目がクリっとしてるからメックリアジと呼ばれ、それが後にメクリアジになったという説もありました。
真偽はどうあれこの説は嫌いじゃないです。マアジは目がクリっとしてて可愛いですもんね。え?分からないの?真剣にマアジと向き合ってよ…ちゃんとマアジのことだけ見ててよ…
ほんとうに高級料亭におろされているのか?
真偽不明な料亭情報
メクリアジ関連の記事で見かける『漁獲されたメクリアジは高級料亭に降ろされて市場には出回らない』というフレーズ。
これもよくあるメクリアジの説明なのですが真偽不明。
調べても釣り人発信のソース不明な情報しか見つかりません。貴重な食材のはずなのに釣り界隈以外で聞いたことがないのもやや不自然です。飲食の現場では別の呼び名があるかもしれませんが、現段階で私が知る限り、噂が独り歩きした眉唾情報と判断するしかありません。
大阪湾が誇れる魚
これだけ美味しいアジなら関アジみたいにブランド化して売り出せば人気が出るだろうと思うんですが、今のところその動きはなさそう。大阪湾名物になれば日本中に誇れる魚になるのになあ。メクリアジって名前もキャッチ―でいいのに。
多くの人にとっては、汚くて死んだような海という認識が強いであろう大阪湾。実は海産資源が豊富で美味しい魚がたくさんいることを知るきっかけになればいいのにと思います。
メクリアジの釣り方はどうすればいいか?
サビキの素材チョイスで大きな差が出るときも
メクリアジを狙うなら仕掛けはもちろんサビキ。
サビキの素材は基本のピンクスキンでもいけますが、波止では薄暗い日没付近に時合いがくることを考えると、ムコイチで定番になっている蓄光サビキが確かに有効かと思われます。
昼間でも濁った潮のときは蓄光が有効になる可能性があります。むしそれしか通用しないというシチュエーションも。
まだ太陽の光がある時間かつ潮が澄んでいるのならケイムラ発光する素材も有効。5月の昼間に船で釣った際はこの仕掛けが最初から最後まで通用しました。
沖堤防にしろ船にしろメクリアジのポイントは水深が20メートルまでなので、潮が澄んでいれば太陽光、ケイムラ素材を発光させる紫外線が届く範囲だと思われます。ケイムラが有効という根拠になるかもしれません。
複数のサビキ素材バリエーションを用意しておこう
いずれにせよ透明度などその日の海の状況で正解となるサビキが変わる可能性があります。色々な状況に対応できるよう異なる素材を何種類か用意しておくと保険になります。
狙うタナは波止でも船でも底が基本。マアジ釣りのセオリー。サバやイワシなどの外道を避けるため底まで迅速に仕掛けを落とせる、そのタックルで扱える範囲で最大の重さのコマセカゴを使いたいところです。神戸沖の船釣りであれば30号の鉄カゴ、いわゆる鉄ドンブリカゴがデファクトスタンダード。
堤防からの釣り方
堤防から狙う場合、群れを追ってポイントを移動する船に比べて釣れるチャンスはずっと小さくなります。早朝や夕方に一瞬だけ通過する群れを狙うイメージ。釣れ続く時間は短いと5分以内ということも。アミエビで足止めするのにも大きな期待はできません。手返しの早さが求められます。
うまくさばけるなら竿を2本出しておいて、それぞれ違うタナや違うサビキ仕掛けでバリエーションをつけておくと確率は高まります。なんにしろ周りにたくさんサビキ釣りの釣り人がいたほうが、魚も寄せやすいですし情報の共有もできていいと思います。
船からの釣り方
船で狙うのであれば実績のあるポイントに移動しながら回ってくれるので、堤防より釣れる可能性は高くなります。お金はかかりますが、結果的にコストパフォーマンスが高くなる可能性もあります。
もちろんタイミングが悪ければ貧果もあります。水潮っぽいような重油のような色の潮のときはどのポイントに行っても全くダメということがありました。でも自然が相手だから仕方ない。
船でもサビキ自体は波止用のものが使えますが、短い船竿でも扱いやすいように6本針を半分にして3本針にするなど工夫すると手返しよく釣れます。船用のサビキは針と針の間の幹糸を長めにとってあるので、仕掛けの2分割がやりやすいです。
とにかく取り込み時のポロリが多いので、短い仕掛けで迅速に船に取り込めるようにしたいところ。
渋いときはサビキのカラーもシビアで、特定の素材、特定の針サイズ、特定のハリスにしか掛からないなんてこともあります。船であれば事前に聞いてみるのがいいでしょう。船内販売もたいていはやってます。
メクリアジはどうやって見分けるのか?
一般的な瀬付きアジの特徴
果たして自分の釣ったマアジがメクリアジなのかノーマルなマアジなのか?気になりますよね。
体高が高かったら、小顔だったら、全体的に黄金色っぽかったら…というのが、メクリアジを含む瀬付きアジの見分け方としてよく聞くものです。
さばいてみるまで確定できない
確かにその傾向はありますが、結局のところさばいてから身や内蔵脂肪を確認しないと確定できないなというのが実際のところ。魚のプロなら分かるのかも知れませんが、我々釣り人はさばいてからのお楽しみということにしておきましょう。
初夏に釣れるという条件を満たして、その中からアタリのアジをひけたらラッキーです。
ただし前提としてマアジとマルアジは見分けられるようにしておきましょう。ポイントは尾の近くにある小さなヒレ「小離鰭(しょうりき)」です。
釣り人だけが味わえる食材として
メクリアジを釣って食べたいという目的は達成しました。そしてその味が絶品だということも分かりました。
未来永劫釣れ続けるのか分かりませんが、今後もこの時期に狙っていきたいと思います。初夏を感じる味として深く記憶に刻まれていくことでしょう。
もしかしたら数年後、メクリアジの名がブランド化して大人気になってる可能性も否定できません。それはそれで嬉しいこと。でもそれまでは釣り人だけが知る、そして味わえる絶品食材として楽しんでいきましょう。