関西ファミリーフィッシングの雑記帳

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新鮮?熟成?釣魚の刺身はどちらが美味しいのか

20年ぶりに釣りを再開して3年目。

おそるおそる始めた魚料理にもだいぶ慣れてきました。ですが、オフシーズンはなかなか生の魚に触れる機会がありません。ここにきて、今まで生きてきた中で感じたことが無かった「魚を自分でさばいて食べたい」という未知の感情が湧き出てきました。

これを欲求といえばいいのかフラストレーションといえばいいのか、健全なのか猟奇的なのか自分でもよく分からんのですが。

悶々としていたところ、スーパーの魚売場で25~30cmぐらいのマルアジが3匹298円で売られているのを見つけました。ヒラアジ(マアジ)じゃなくてマルアジだからというのもあるけどこれは安い。”お造りでもどうぞ”とPOPに書かれています。これだ!これでフラストレーションを解消しよう。迷わずカゴに入れてレジへむかいました。

鮮度落ち気味のアジと鮮度良好のアジを比較

鮮度は落ち気味だけど旨みは上々

晩御飯に刺身として出すため早速家に帰ってさばくことに。まずはトレーからラップをペリッと剥がす。うわっ!くせえ!生きた魚も生臭いですが、それからさらに進んだ臭さ。夏場、昼過ぎの魚市場みたいな。

身を指で押してみるとブヨッとしていて弾力がいまいち。そういや目も若干白く濁ってる。お腹を開けてみると内臓が崩れかけていてデロリ。自分で釣った魚は締めてから遅くとも半日以内ぐらいにはさばいていますが、それと比べると鮮度が落ちているのが見た目で明らかに分かります。

これほんまに生で食べて大丈夫かいな?と不安を抱えつつサクをとるところまでくると、身は意外としっかりしている感じ。とはいえ家族に、特に抵抗力が低い子供に食べさせるのは不安もあるので、念のため自分で試食してから数時間様子をみました。そして体調に問題がないことを確認してから晩御飯に。

これが家族には好評で、あっという間に3匹分の刺身が皿から消えました。歯ごたえはイマイチだけど味が濃いというか旨みが強い。何を食ってもだいたい美味いと感じる私の三流舌なので信用なりませんが確かにそう感じました。

新鮮なマルアジとの比較

スーパーで買ったこのマルアジ、産地を確認しておくのを忘れましたが、おそらく前日の朝に水揚げされたものと思われます。少なくとも死んでから24時間以上は経過しているはず。これは鮮度が落ちた状態といえるでしょう。

鮮度という点でこれとちょうどいい比較対象となる鮮度抜群なマルアジを去年食べました。10月に神戸港で釣った30cm超のマルアジです。

獲れた季節が違うので脂ノリなどの基本条件は異なると思いますが、サイズはちょうど同じぐらい。

このときは朝に釣ったマルアジを即座にサバ折りして血抜き(上の写真は既にサバ折りしたあとなのでエラが飛び出てます)、そのあと内臓も抜いて潮氷に浸けた状態で持ち帰りました。それを昼過ぎにさばいてサクを取り晩御飯の食卓へ。万全の鮮度保持対策をした状態で、死んでから10時間以内の新鮮な状態で食べたことになります。

その新鮮なアジも美味しいと感じたのですが、今回食べたマルアジとは食感が違っていました。これら鮮度の異なる2つのマルアジの刺身について、自分なりに食感や見た目を比較してまとめたのが次の表です。

 鮮度がいい状態鮮度落ちた状態
死後 10時間以内 24時間以上 
歯ごたえ こりこりして歯ごたえ良し やわらかくもっちり 
血合いの色  鮮やかな赤色   暗い赤色もしくは茶色
 銀色の残り具合 大差なし   大差なし
 旨み  あっさり  旨みが強い
 身の臭み  気にならない  若干臭みがある
水分量  あまり汁気がない  しっとりした感じ

歯ごたえと旨み?

最も差が顕著なのは歯ごたえと旨み。鮮度がいいものはコリコリしてるというか噛むと繊維をザクっと切るようなしっかりした弾力があるのに対して、鮮度が落ちたものはやわらかくてもっちり。鮮度のいいものはあっさりした旨みに対して、落ちたものは旨みが濃い。

ビジュアル的な美味しさ

血合いの色については釣ってから即座に血抜きしたということも影響してか、鮮度がいいもののほうが鮮やかで見た目にも美味しそうに見えました。見た目という点では、鮮度がいいもののほうが角がピンっとたっていて身の透明感が高いのも美味しそうに感じたポイントです。

皮をひいた後に残る銀色ですが、これも残っていると視覚的に美味しそうに見えます。味にも影響するとも聞いたことがあります。なんとなく鮮度が落ちると残りにくいイメージがあったものの特に差はありませんでした。

臭いはどう?

鮮度が落ちたものの方が若干臭みがあるものの大差はないです。これはもうちょっと時間が経つと腐敗臭が出てくるかもしれません。

身のジューシーさ

最後に水分量と書きましたが、時間が経てば確実に水分は抜けていくので程度の差こそあれ鮮度が落ちたものの方が水分は少ないはず。にもかかわらず、食感では鮮度の落ちたもののほうが水分量が多いように感じました。新鮮なものは身がしっかりしていてドリップがあまり出てこない、鮮度が落ちたものはドリップがでてしっとりと舌に広がる。

鮮度によって刺身の食感や旨みに差が出るのは明らかです。これってどういうことなんだろう?

時間が経つと魚の身はどう変化する?

参考文献「どんな魚がうまいか」

ちょっと用事があって図書館に寄った際、この本を見つけました。ストレートなタイトルに惹かれてパラパラ読んだところ、ちょうど私の疑問を解決してくれそうな章があったので借りてきました。

どんな魚がうまいか (ベルソーブックス)

どんな魚がうまいか (ベルソーブックス)

 

以降、この本の内容を参考にしながら書いていきます。今回初めて知りましたが、このベルソーブックスというシリーズは魚の生態や水産業界、食味についてのテーマなど、釣り人には興味深いシリーズですね。

新鮮な魚の歯ごたえが落ちていく理由

新鮮=弾力

新鮮な魚の刺身は弾力がありコリコリとした歯ごたえが楽しめる。これは新鮮な魚を食べた経験がある人の共通認識だと思います。参考文献の中では、この弾力のことを「破断強度」という用語で表現していました。

想像はつくと思いますが、即殺してすぐ食べる魚、つまり活き造り状態である魚の破断強度が最も強く、時間経過に伴って破断強度は落ちていくとのこと。

死後硬直と弾力は関係なし

ちょっと話が飛びますが、釣った魚を冷やしたクーラーに入れて持ち帰り、さあ料理しようと手に持ったときに魚の身が左右に曲がっていることがあると思います。真っ直ぐにしないと包丁を入れにくいので、曲がりを戻そうとするけど硬くてなかなか戻らない。いわゆる死後硬直というやつです。

私はこの硬直の状態こそが刺身の弾力そのものと思っていたのですが、どうやら違っているらしく、硬直状態の魚肉における破断強度の値は即殺直後よりかなり小さいとのこと。やはり死んだ直後の魚が最も破断強度が高いという計測結果が。

弾力が落ちるわけ

じゃあなんで弾力が落ちるのか。

コリコリ感がなくなるということは筋肉の繊維が柔らかくなるのか?と考えましたがそうではないようです。調査したところ、時間が経っても筋肉の繊維自体にたいした変化は無かったとのこと。

実態としては、時間が経つと筋肉の細胞同士を結びつけるコラーゲンが壊れて劣化してしまうから、筋肉の組織全体がガタガタになって弾力が落ちてしまうということらしいです。これは血抜きをしておくことで劣化を抑えることができるみたい。

血抜きって生臭さをおさえるためにする処理というイメージでしたが、こういう効果もあるんですね。

鮮度が落ちるとなぜ旨みが強くなるのか

グルタミン酸とイノシン酸

魚の旨みたるものを感じさせている成分は、主にグルタミン酸とイノシン酸です。グルタミン酸は味の素とかの旨み調味料に使われている成分なので聞いたことがあるはず。

グルタミン酸は昆布に多く含まれる旨み成分、イノシン酸はカツオやサバに多く含まれる旨み成分。これら二つの旨み成分は同時に摂取することで相乗効果を発揮し、それぞれ単独で摂取したときよりはるかに旨みが強く感じるられるとのこと。カツオと昆布の合わせ出汁ってそういう意味で利にかなったものなんだな。

時間が経つとイノシン酸が増加する

グルタミン酸については時間が経ってもほとんど変化がないようです。ということはもう一方のイノシン酸に旨み変化の鍵があるはず。

参考文献にはハマチを例にした調査結果が挙げられていました。イノシン酸はハマチを締めてからしばらくはほとんど変化が無いものの、5~6時間ほどで急激に増加して14~16時間後に最大値に到達、その後きわめてゆるやかに減少していったとのこと。

先述の相乗効果を考えると、この最大値に達したときが旨みも最大値になるはずです。なるほど時間を置いたほうが旨みが強い、反対に鮮度が高いものはそれに比べて旨みが弱いというのはここで仕組みが理解が出来ました。

水分量も旨みに関係あるのでは?

ちなみに先に書いた水分量についての記述もあり、鮮度が落ちたほうが水分量を多く感じるというのは確かなようです。しかしながらその原因についてのはっきりした記述はありませんでした。

ここからは私の想像ですが、時間が経つことで水分=ドリップを蓄えていた細胞の壁が脆くなってドリップが漏れ出す。だから水分量を多く感じるのではないかと。ドリップが舌の上に広がればより旨みも強く感じるのではないでしょうか?

歯ごたえと旨みはトレードオフの関係

時間の経過と共に下がっていく歯ごたえ、反対に上がっていく旨み。残念ながらどちらの値も両立させながら上げていく事はできません。

刺身で歯ごたえを楽しみたかったら旨みが生成される前に食べなくてはならない、旨みを楽しみたかったら歯ごたえの低下は避けられない。なんとももどかしい。

ただ、両方を最大限楽しみつつ刺身を味わえるベストなタイミングが魚ぞれぞれにあるようです。おそらくプロの寿司職人なんかはこういうことを経験で知っているのでしょう。

我々釣り人はこの時間経過を完全に把握して、なおかつ食べるタイミングもコントロールできる立場にあります。経験を積めば魚の目利きでプロの料理人にも勝てるかもしれない!勝つ必要も勝つ機会もないんですけど。

焼いたり煮たりして熱を加えた場合は?

ここでひとつ疑問が出てくる思います。生のままではなく、焼いたり煮たり蒸したり熱を加えた料理をする場合はどうなのか?

これに関しては、イノシン酸の元となるATPという筋肉収縮のエネルギー源を加熱することでそれが瞬時にイノシン酸に変わるとのこと。なので鮮度が高いことにこしたことはない。火を通す場合には弾力が関係ないし旨みが強くなってからでいいのではと思っていましたが、新鮮なうちに、傷んで臭みが出てくる前にとっとと調理したほうがいいようです。

あ!突然ですがここで繋がりました!魚を暴れさせると不味くなるから早めに締めたほうがいいという話を聞きますが、暴れさせるとATPを消費してしまうから結果的にイノシン酸も減って旨みが落ちるということか!そういうことか!

じゃあ干物に加工する場合は?と次なる疑問が湧いてきましたが、これはまたの機会に調べたいと思います。これはこれで旨みを感じる要素や生成過程がまた複雑な気がする。 

結論としてどっちが美味しいのか?

というわけでこれまでの考察から私が出した結論を書きます。

自分で食べて自分で決める

はい、これに尽きます。自分で食べて自分の感覚で決めよう。(丸投げ)

ネットで調べると「刺身は鮮度が命というのはウソ!熟成された刺身こそホンモノ!」みたいな見出しの記事をよく見かけます。テレビで見ることも。熟成魚というのがちょっとしたブームになっているようですね。

これを鵜呑みにして、自分で試しもせず新鮮な刺身は食べるに値しないと判断するのはもったいない。我々は釣り人。幸いにして、釣りたての魚を食べるも熟成させるも自由にコントロールすることが出来ます。

いろんな魚で試してみて、これが好きという自分なりのタイミングを探せばいいと思います。美味いという感覚なんて人それぞれなんだし、それもその日の心身のコンディションによってコロコロ変わる頼りない感覚です。多種多様なスパイスが効いた本格派カレーが美味い日もあれば、市販のルーをつかった素朴な家カレーが美味い日もある。そして私達は好きなほうを選択する自由がある。

産地から食卓に至るまでの流れを完璧に把握することで、釣り人はトレーサビリティが完璧な状態で魚の味を楽しめる。食料の大半を輸入に頼るような今の日本において稀な食料調達手段じゃないでしょうか?

熟成には十分注意をしましょう

熟成というからには何らかの処理をしてから生の状態のまま数日間保存しておくということになると思います。これは旨みを増やすという反面、腐敗や菌の増殖という危険と隣り合わせにもなります。つまりは食中毒の原因となる場合があります。 

それで体調を崩しても調理した本人なら自己責任で済みますが、自分以外に食べさせるならそうもいきません。

経験上1~2日程度なら問題ないと思いますが、それ以上の熟成となると素人が簡単に手を出していい領域では無いような気もします。

自分で釣った魚は美味い!

というわけで、周りの意見や感想に左右されず自分が美味しいと感じればそれでいいかと思います。同時に他人の意見を参考にするのも自由。ただし安易に他人の美味しいという感覚を否定しないこと。人それぞれ。私はそう思います。

ちなみに私は新鮮でコリコリした刺身も、熟成して旨みたっぷりの刺身も両方好きです。同じ魚で同じ調理をしてもタイミングを変えるだけで意図的に違う味が楽しめる。面白いことじゃないですか。

それに自分で釣った魚はそれだけで何倍も美味い。自分の釣りはそれを感じることが毎釣行ごとのゴールなんです。そんなわけで今年も待ってろ、美味しい魚たち!

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