あの日憧れたサバの刺身を!秋のムコイチで大サバを釣る

グルメ漫画と聞いて思い浮かべる漫画はなに?

孤独のグルメか。あれはいい。突飛な料理や高級料理ではない普通の料理をちょっと面倒くさいおじさんがひとりで食べるだけの漫画。それがいい。誰の心の中にも井之頭五郎が住んでいるはずだ。

将太の寿司か。あれもいい。犯罪レベルの卑劣さと莫大な資金がつぎこまれた妨害に遭いつつ、超展開で全国一へ登りつめるパワータイプの漫画。それがいい。感極まった柏手の安が放つアレはみんなが真似したいはずだ。(パァァン!)

私ですか?

いろいろ読んできたとは思いますが、幼少のころ大きく影響を受け未だその”傷跡”が消えないあの漫画を最初に思い浮かべます。それはグルメ漫画の金字塔「美味しんぼ」。

その初期エピソードでとりあげられ、ずっと食べたいと思っていたあの食材をついに自分で釣り上げて食べることができました。そう「サバの刺身」です。

スポンサーリンク

美味しんぼと私の30年

幻の魚のあらすじ

そのエピソードのタイトルは「幻の魚」。単行本2巻に収録されています。

アニメだと6話。今ならプライムで観れるようです。

Amazonプライムビデオで美味しんぼを観る

こんなあらすじ。

火事で焼けた料理屋の再建パーティーで鉢合わせる山岡と雄山。その席において今まで食べた刺身で一番だったのはなんの刺身かという話題になり雄山がいかにも食通っぽい候補を挙げる中、一番美味しかったのはサバの刺身だと言い切った山岡。ふはは、サバは下魚だ食あたりするわとあざ笑う雄山。

ならば食わせてやると、葉山の根付きサバを自ら釣りに行く山岡と栗田。苦労の末、山岡を差し置いてそのサバを釣り上げる栗田。葉山の料理屋へ呼びつけれて再び会した一同はそのサバの味に驚き、雄山は「こんな器で料理が食えるか」という捨て台詞を吐いてその場から立ち去ったのであった。

料理屋で起きたトラブルから後日もう一度ここに来てくださいというテンプレ、山岡自ら食材を調達にいき困難の末ゲット、ふたたび同じメンバーでそれを味わい相手をギャフンとさせる、初期美味しんぼらしい黄金展開をみせるエピソード。

初期は小物キャラ的な振る舞いも多くこのエピソードでも情けなく去って行った雄山ですが、最後には世話になった葉山の料理屋に自らの陶芸作品をこっそり送るというツンデレな側面も見せはじめる重要エピソードです。私以外にも印象に残っている人は多いでしょう。

サバの刺身はまさに幻だった

この話が初めて掲載されたのは1980年代中ごろ。30年近く前、もうすぐ昭和が終わろうとする時代。

サバなんかを生で食べたらあたるという雄山のセリフがありますが、今でもサバはあたりやすいというのが常識だし、当時ならなおさらでしょう。今でこそサバの刺身は回転寿司のネタにあったりスーパーで見かけることもありますが、これは知識の向上、輸送技術や養殖技術の向上があった結果だと思います。

昔からサバの生食が盛んな北九州辺りで取れるサバはアニサキスが身に移りにくくてあたりにくいらしいと分かった。そこから新鮮な状態で遠方に届けられる輸送技術が使えるようになったからヒスタミン中毒も回避できるようになった。魚の処理技術自体も発展した。そんな進歩と努力のたまもの。

それから少し遅れて私がこのエピソードを読んだのは1980年代末期。平成が始まったばかりのころ。

当時小学生だった私の心に「サバの刺身」が深く刻み込まれました。山岡さんが言うぐらいだからさぞ美味いに違いない。しかし所詮はこどもです。調べるすべも食べられるあてもありません。いつか大人になって食べてみたいと遠い未来に思いをはせたのでした。

そして時は流れ元号も令和に変わった30年後。

3つの時代をまたいでようやくその未来がやってきたのです。

秋の武庫川一文字で大サバを釣る

2021年10月2日土曜日。強い台風が関東沖をかすめて通過した翌日のこと。

関西には直接の影響が無かったものの、そこそこ強い風が吹いていたのでそこそこ海がかき混ぜられたのではないかという期待がありました。つまり海の状況が切り変わったんじゃないかという期待を。

本来なら大阪湾でのタチウオシーズンがスタートしていて、どこの波止で釣れてもおかしくない時期。沖提なら高確率で釣れている時期です。しかし2021年は前年に引き続いて不漁状態。この状況が台風で変わったんじゃないかという期待をもちつつ、ムコイチこと武庫川一文字へのタチウオ釣行となりました。

時代をまたいでサバを釣りに行ったんちゃうんかい?というツッコミもあろうかと思いますが、結果的に釣れたサバは棚からぼた餅的な釣果です。タチウオ釣りまでのすき間を埋めたら釣れた系。狙って釣れたわけではない。本当はタチウオも釣りたかった…今年もどうなることやら。

いつも通りに小サバが釣れる

12時の渡船に乗り2番で下船。

ずっとタチウオの釣果が無かったことと台風明けで様子見する人が多かったのか、秋の週末にしては空いていて快適。天気も快晴。

快晴の武庫川一文字 風が心地よい

快晴の武庫川一文字 風が心地よい

台風の吹き戻しで北風が吹く予報でしたが、実際には強い西南西の風。一文字の外側ではときおり白波がたっているのが見えます。とはいえなんとか釣りはできそう。内側は風も無く静かだったので、まずはこちらで20gのジグを投げて準備運動をします。

やっぱり今日も釣れてくる小サバ。20センチ前後に成長しているのでそれなりに引いて楽しい。

いくらでも釣れる小サバ

いくらでも釣れる小サバ

内側はこんな感じなので今度は外側を狙います。

向かい風気味なので30gのジグでもぜんぜん飛ばない。風に吹かれてラインもたわむから底がとりにくくイマイチ何をやってるのか分かりずらい。ルアーを変えつつなんとなく惰性で数時間ほどやって迎えた16時前。

ジグを変えたタイミングで流れが変わります。

夕方前に大サバ連発!

来る前に買ったジャックアイエースの武庫川渡船監修カラーマズメ濁りスペシャル1号にチェンジ。後方重心なので気持ちよくかっ飛んでいく!せっかくなので同じブランドのジグサビキも追加。

ジャックアイエース 武庫川渡船監修カラー

ジャックアイエース 武庫川渡船監修カラー

いくぶん風はましになって釣りやすくなりました。底もとれる。

ルアーチェンジ直後、底からの巻き上げ直後にヒット。

横に走ってまあまあ重いですが青物ではなさそう。水面を割って見えたのは30センチを超えたサバでした。抜き上げも問題ないサイズでしたが、念のためタモ入れして取り込み。

大サバに近い中サバ

大サバに近い中サバ

35センチ前後で大サバというにはもう一声ほしいですが自分としては過去イチサイズのサバです。早速エラを切りバケツにドボンして血抜き。次いってみよう!

ほどなく同じレンジでもう一匹同サイズを追加。

しばし沈黙のあと今度は中層でヒット。これまでより引きます。最後の突っ込みで波止際に潜り込みますが、何とかかわして無事ゲット。

40センチ近いので大サバと呼ばせてください

40センチ近いので大サバと呼ばせてください

おっ!これはいいんじゃないですか?最近はサイズにあまり執着がなくていちいち正確に測らないんですが、クーラーに貼ったメジャーステッカーを見る限り40センチ近くありそうです。何をもって大サバと呼べるのか確固たる基準はありませんが、これは大サバと呼ばせてくれ!

これにて連発はストップ。いちいち写真を撮ってSNSで報告なんてことをしてなければもっと伸ばせたかもしれないですが、それはそれこれはこれ。楽しめたし満足できたしそれでいい。

いや久々にまともな釣果になった。サバごときで満足してるのかよダッセェと思う人もいるでしょうが、正直言ってサゴシやハマチが釣れるよりずっと嬉しかった。このとき美味しんぼのエピソードがふと頭をよぎり、刺身で食ってやるぞと誓ったのでした。

なお美味しんぼでは「ヒコイワシを使ったフカセ釣り」でサバを釣っています。関西風にいえばカタクチイワシを使ったウキのノマセ釣りでしょうか。1980年代にはそもそもショアジギングなんて釣り方は存在せず、PEラインすらまだ登場しているかしないかの時代。釣りも進化したものです。

タチウオはやっぱりダメでした

大きめのサバを3匹釣って満足したものの、最終便までまだ3時間ほどあります。

そう、今日はそもそもタチウオを釣りにきたのでした。まあ結果的に釣れないのですが、簡単にまとめておきます。

日没まで1時間の17時前、自分のセオリー通り5号の太刀魚ゲッターで最遠投して底を探ります。タチウオが釣れている状況ならこれで一番乗りできる確率が高い。釣れている状況ならね…

日没と共に軽いテンヤにチェンジ…したもののまるで音沙汰なし。

正直釣れる気はしなかった

正直釣れる気はしなかった

ダメもとでやってみるかと誰も狙っていない内側も探ってみます。そしたらめっちゃあたるじゃないですか!

毎投何らしかの反応が返ってきます。タチウオではない何かの。明らかにタチウオではない何かの。サバ?いやそれにしてはキビナゴの尻尾がスパッと切られる。

くっきりとV字の歯形がついたキビナゴ

くっきりとV字の歯形がついたキビナゴ

後にいただいた情報によるとどうやら大阪湾でサバフグが猛威を振るっているらしく、その可能性が高そう。言われてみれば切り口がフグの前歯そのもの。やられた。

最終の20時まで粘ったものの釣果なし。どぉなっちゃってんだよ大阪湾。と、普段なら肩を落としてとぼとぼと帰るところですが…俺は今日大きなサバを持って帰るんだぜ!そうだろ?

なお暗くなってからは、大量のイワシが目を光らせながら波止際を回遊するという、秋によく見る光景がありました。雰囲気は良いんですけど、なぜか回遊してこないタチウオ…

生のサバを味わい尽くす!

あらかじめ釣れたら速攻で血抜きとわた抜きの処理を現場で済ませておきました。ヒスタミンとアニサキスの食中毒対策であり、これは同時に鮮度保持にも繋がり臭みも減らせます。

今回の釣果は30~40センチのサバ3匹

今回の釣果は35~40センチのサバ3匹

帰宅したらネット付きのスポンジで表面をこすってヌメリとウロコをざっと除去、お腹をきれいにしてからキッチンペーパーで丁寧に水分を取って丸魚のまま冷蔵庫で寝かせます。キッチンペーパーのお布団にくるんでおやすみなさい。

翌日三枚におろしましたが、迅速な処理のおかげか身割れはありません。お店で買うサバと比べたら明らかに身がきれい。丁寧にタモで取り込んだから内出血も無いし、すぐに血抜きしたから身が透き通ってて血合いも鮮やか。でかした俺。

しっかり処理出来たおかげがめっちゃキレイな身

しっかり処理出来たおかげがめっちゃキレイな身

この時点で腹骨をすき取り、血合い骨は骨抜きで1本ずつ抜きました。

その時に身を触っていて気付いたのですが、大きければ脂がのっているというわけでもなく、40センチより35センチ程度のサバのほうが身が白っぽく脂がのっている。これは個体差もあるのでしょうが、良サイズのマアジも同じような傾向がありました。

念のためこの時点で注意深く身を観察してアニサキスがいないかチェック。幸いにして見つからず。あとは食べるときに目視で注意することにします。家族にもそう伝えました。皆さんもサバを生で食べる際は各々ご注意ください。

半分はそのまま刺身で、あとはしめ鯖に加工していきます。

ドリップ除去と鮮度保持に保鮮シート

刺身はある程度脱水しておくと旨味が凝縮されるので、本来ならピチットシートを使いたいところ。

でもそれなりに高いからじゃんじゃん使う気になれない。性能に文句はないし、タプタプにたまった水分を触るのが好きだけど。

ということで最近は主にこのシートを使っています。

これはスーパーの刺し身パックの底に敷いてあるシートとたぶん同じもの。ドリップを吸い取って戻さない仕組みになっています。サクにした身を包んで熟成させるのに最適。Amazonは高いからネットならヨドバシで買ったほうがいい。

しめ鯖は砂糖と塩で締める

しめ鯖は以前から気になっていたこちらのレシピを参考にしました。

塩で締める前に砂糖で締めるという方法。砂糖→塩→酢と手間はかかりますが、確かに水分はしっかり抜けました。塩で脱水して酢につける手順が一般的ですが、余裕があるときはこちらがおすすめ。砂糖の脱水能力はなかなかのもので、安いけど水分が多いブラジル産鶏肉で唐揚げを作るときにも有用です。

酢漬けはレア気味にするのが好み。酢をケチって身側10分、ひっくり返して皮側10分漬けたらもう終わりです。

表面が白くなる程度の漬け時間がいい

表面が白くなる程度の漬け時間がいい

あとは水分をキッチンペーパーで拭き取って、そのまま食べる場合は手で薄皮をはぎます。

ペリペリと薄皮をめくる

ペリペリと薄皮をめくる

皮をバーナーで炙る場合、薄皮はそのまま。皮は皮で美味いんだよこれが。というわけで酢漬けをした身の一枚は食べる前に炙ることにします。

美味い!とにかく美味い!

なんやかんやで切ったり盛り付けたりで完成です!いざ実食!

刺し身としめ鯖、そして炙りしめ鯖。

左からしめ鯖、炙りしめ鯖、刺身

左からしめ鯖、炙りしめ鯖、刺身

まずは刺し身から。なお、サバの皮は薄いので、包丁で削ぐより手でむいたほうがきれいにできます。必ず背中側からお腹側へ。

しっかりエッジの立った刺身ができました

しっかりエッジの立った刺身ができました

どうですかこのきらりと光る皮目とサバ模様。そして鮮やかな血合い。身にはほどよく脂肪のサシが入ってます。わさび醤油をつけていただきます。

醤油に浮く脂にも注目

醤油に浮く脂にも注目

はああ、うめえ、ほんとに美味い。美味いよ山岡さん、あんたは正しかったよ。ちょうどいい脂のり具合です。ちゃんとサバの風味もある。

実は以前にもサバの刺身は食べたことがあり、かつて釣りができていた神戸の某所で釣った30センチぐらいのサバでした。

このときのサバはたいした大きさでは無かったのですが、どういうわけか異常なほどの脂のりでこれはこれで美味しかった。しかし今回のサバと比べるとくどすぎたような気がします。

今回のサバは舌で溶ける脂の濃厚さと青魚特有の爽やかな酸味をバランス良くあわせもっていて絶品でした。これは大きなサイズのサバでしか味わえないのかもしれない。

美味しんぼに出てきた葉山の根付きサバは、山岡さんいわく「香りも脂も強すぎないギリギリの線」という表現がされており、もしかしたらこういうことだったのかもしれません。大阪湾に根付きのサバがいるのか、今回釣れたサバはどうなのか。それは分かりません。しかしサバの刺身を食べて感動できたのは確かなこと。

30年前の俺、願いが叶いましたよ。良かったね。色々あるけどまあまあ楽しい人生を送っておっさんになっているよ…

しかし大阪湾には根付きタイプとされているマアジ、通称メクリアジがいるぐらいだから、根付きのサバが居てもおかしくないはず。もしそうなら何かそれっぽい名前を付けてあげてほしい。

さあ、もう勝ったも同然です。優勝は確実なものとなりました。本当にありがとうございます。

じゃあしめ鯖もいっちゃおう。炙ったやつだ。

市販の締めサバでも炙ると一味違います

炙って美味しさ無限大

砂糖、塩で締めることで水分が逃げ旨味が凝縮される。酢も表面が白くなる程度にしかつけないから瑞々しさも残っている。刺し身とはまた違った味わいに。そしてそれを炙ることによる皮の香ばしさと溶けた脂の風味で、掛け算式に美味しさが高まります。美味しさインフィニティ。

いやあ満足。1日では食べ切れなかったので3日ほど寝かせたものも食べましたが、これもまた深い味になっていて最高でした。

過去から今につながる美味しんぼ

今思えば美味しんぼも偏った思想や間違った知識などが色々とあって、子どもにとってなかなか危うい存在だったといえます。

大人になるまで大手食品会社は悪だと思ってたし、化学調味料は舌が痺れて味覚障害になるなんてのも信じてたり。ドライビールはスプーンの裏を舌にあてた味なんてのも忘れられなくて、スーパードライとかバカにしてた気がする。ビールならエビスだけが本物とか。

今はもうなんでもOKで適当なおじさんになりましたが。何食べてもだいたい美味いって最高。

とはいえ食への興味という点で美味しんぼは今に繋がっていると思います。釣りを再開して自分で料理をするようになってからというもの「これは美味しんぼでみたやつだ!」という進研ゼミ的な気づきがたくさんありました。

包丁の切れ味に気をつかうのは間違いなく美味しんぼの影響だし、生簀からすくったばかりの魚を活造りにしても美味いとは限らないという知識も身を持って知った。

ちょっと読み返してみるかな。どこの古本屋でもほぼ全巻揃ってるし100円ぐらいで買えるし。