ここ1~2年の間に釣りをテーマにした漫画が続々登場しました。どちらかというとおっさんの趣味代表として扱われがちな釣りにおいて、どの漫画も女性が主人公。サブキャラもほぼ女性。おっさんはもれなくモブキャラ。
というわけで2017年に単行本が発売された釣り漫画をまとめてみたいと思います。最初に言い訳しておきますが、私はそれほど漫画に詳しいわけではございませんのでその点はご了承を。
放課後ていぼう日誌
まずは私の本命から紹介します。それがこちら「放課後ていぼう日誌」です。
2017年に「月刊ヤングチャンピオン烈」で連載が始まり、その秋に単行本の第一巻が発売されました。2018年4月現在も連載中です。
「放課後ていぼう日誌」はこんな漫画
詳細な舞台は定かでありませんが、キャラが喋る方言から察するに九州地方の港町。田舎っぽいのんびりした背景です。
主人公は高校入学と同時に都会から引っ越してきた釣りとは無縁の女子高生。
当初は手芸部に入部することを考えていたものの、ひょんなことから「ていぼう部」なる釣り部に無理から関わるようになります。
そこで出会う人、出会う魚によってだんだん釣りにのめり込んでいくという、テーマは違えどよくある設定です。だからつまらないというわけではないですよ!
ネットで見れる読み切りをご覧ください
この漫画で私が惹かれたのは絵。
丁寧に書き込まれた背景、魚。実際釣りをする人には分かってもらえると思う「釣り場の空気感」が伝わってくる絵です。
読み切りの一話だけネット読めるので、まずはそれを見てもらったほうが早いですね。こちらをどうぞ。
ちなみにこの話は連載に先行して発表された番外編のようで、単行本には収録されていません。時間軸も単行本一巻に収録されている話よりちょっとだけ先という感じですね。
※追記:この読み切りは2巻の巻末に掲載されました。
わたしがこの読み切りを初めて読んで「これはいい!」と感じたのが9ページ目。堤防によじ登った主人公の目の前にザァァァっと海が広がるシーン。これめっちゃいい。めっちゃわかる。めっちゃワクワクする。
釣り場の空気感の描き方が素晴らしい
日が暮れてからアオリイカが釣れるあたりの「夕まずめ感」も素晴らしくいい。寒くも暑くもない初夏の夕方に感じるあの空気感。日の入り前後に魚がよく釣れる「まずめ時」で、たぶん風が止まっているだろうなと感じさせる凪の雰囲気。海もおだやか。それが絵からありありと読み取れる。
この記事では他にもいくつかの釣り漫画を紹介しますが、釣り場の空気感の表現はこの漫画が群を抜いています。
釣り初心者にもおすすめ
基本的に釣りの素人である主人公が釣りを学んでいくという流れなので、これから釣りを始める初心者にもおすすめできます。初心者向けらしく序盤でサビキ釣りをするエピソードもあります。
毎回必ず釣った魚を食べるところまで丁寧に描かれているのも好感度大で、私自身の釣りのスタイルとも重なります。登場するキャラも個性的に生き生きと動いていて魅力があります。
今後の展開にも期待しつつ、私の本命釣り漫画として「放課後ていぼう日誌」を一番におすすめします。
2巻も発売中!
2018年3月には早くも2巻が発売されました。
2巻には、
- 大量に釣れた豆アジの処理方法
- アラカブ(ガシラ、カサゴ)の穴釣り
- 表紙にもなっている潮干狩りのエピソード
などが収録されています。
中でも自分の印象に残ったエピソードがひとつ。主人公が初めて一人でサビキ釣りに行ったけど何故か自分だけ釣れず、原因は「針のサイズが大き過ぎたから」というエピーソード。これは「初心者あるある」でリアルでした。初夏の豆アジ釣りに7号や8号針の仕掛けは確かに大き過ぎます。
豆アジ釣りには0.5号とか1号を!
2巻からの新キャラとして顧問の女医先生も登場して、お話の幅も広がりました。せっかくのハマグリを横取りする展開はちょっとムッとしましたけどね。
2018年11月には3巻が発売。
今回紹介する釣り漫画の中で、もしアニメ化されるとしたらこの「放課後ていぼう日誌」しかないと思う。「ゆるキャン△」が流行ったんだから、ゆる釣り的なこの漫画も今がチャンスだ!
つれづれダイアリー
続いて紹介するのは、ここ最近いくつかでてきた「かわいい女の子が釣りをする漫画」ブームの先駆けともいえるつれづれダイアリー。
単行本が3巻まで出ています。
残念ながら既に連載は終了しており、2018年春に発売されたこの3巻が最終巻となってしまいました。

つれづれダイアリー 3 (MFコミックス アライブシリーズ)
- 作者: 草野ほうき
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
- 発売日: 2018/03/23
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
「つれづれダイアリー」はこんな漫画
作品中で明示されていたかどうか分かりませんが、舞台は浜名湖周辺です。
こちらも主人公は女子高生。
これまた釣りとは無縁だった主人公が、クラスで浮いている無愛想な同級生「橘さん」を街で見かけて追いかけているうち、少しづつ釣りにはまっていくという…あれ、これも最近良く見るぞという設定です。
私から見た「つれづれダイアリー」
こちらも最初の数話と最新話がネットで読めるのでまずはそちらをご覧ください。
主人公の名前が「アリス」なんですが、つまりウサギであるクラスメイトの橘さんを追って「不思議な釣りの世界」に迷い込むというお話です。
あらゆる釣りに精通している橘さんをストーキングしつつ、初心者であるアリスが釣りを学んでいくという釣りのテキストとしても使える漫画。
やはり序盤にサビキ釣りをしますが、ターゲットはコウナゴ。つまり関西では釘煮としてお馴染みのイカナゴです。大阪湾で釣れるのは聞いたことないですが、浜名湖ではサビキで釣れるんですね。
お話の最後の数ページにその話で釣った魚の料理方法を紹介するなど初心者へのフォローも丁寧。絵もスッキリ洗練されていて読みやすい。
ちょっと気になる描写も
ただ少し引っかかった描写もあったというのが正直なところで、それは単行本の一巻でちょい投げをするエピーソード。外道であるフグを釣った橘さんがそのフグを思い切っきりぶん投げるシーン。
いや気持ちは分かるんだけど、外道とはいえ生き物をそんなぞんざいにあつかっちゃダメでしょうっていう。良い子のみんなはグーフーが釣れてもそっとリリースするんだぞ。
釣りの達人 橘さんのバックグラウンドを知りたい
絵もお話も安定しているので今後はキャラの掘り下げにも期待しつつ連載が続いてほしいですね。あらゆる釣りを高レベルでこなす橘さんのバックグラウンドが何なのかも知りたい。
※追記:…と思っていたものの、あまりキャラの掘り下げがないまま連載が終了してしまいました。ニッチなテーマの漫画が群雄割拠している今、連載を続けるのは難しいものなのかもしれませんね。
おひ釣りさま
この漫画はおそらく月刊誌ではなくWEB媒体だけで連載されてるのかな?2週間ごとに最新話を読むことができます。
2017年の秋に単行本も発売されました。
放課後ていぼう日誌と同じ日に2巻も発売されています。
どちらも秋田書店なので同時購入キャンペーンもやってました。がんばれ秋田書店。ぜひ釣りを盛り上げてください!
「おひ釣りさま」はこんな漫画
舞台は関東周辺と思われる設定。背景としては都会的な描写が多く、のんびりした田舎が中心の放課後ていぼう日誌とは対照的です。
主人公はクールな20代OLさん。
ストーリーや人物の描写に重きを置くのではなく、一話完結が基本で毎回違った釣りを紹介する漫画です。ルアーが中心だけどエサ釣りもあり。
つれづれダイアリーの橘さんと同じく、あらゆる釣りに精通している達人タイプの主人公です。どんな釣りであっても的確に状況を判断をして冷静にターゲットを仕留めるけど、心の中では「たまらん」と恍惚の表情を浮かべ妄想にふけるという、ギャップ萌えってやつですかね?よう知らんけど。
私から見た「おひ釣りさま」
今回紹介する漫画の中では一番ライトに読める漫画です。単行本でもページを飛ばしてどの話から読んでもだいたいオッケー。一話完結でページ数も少なめだから。
タイトルから連想できるとおり、主人公は基本的に「おひとりさま」で釣りに出かけます。無口でクールなキャラというのが相まってやたらと心の声が多く、ページ内のセリフの割合もそれが多くを占めます。
リアルでは無口、心の中では饒舌。これは私がそうなのですごく共感できますし親近感すら湧いてきます。私も1人で釣りをするときは寡黙にやってますが、頭のなかであーだこーだ状況分析したり、脳内で近くの釣り人と釣り談義を繰り広げたりもしています(怖いよね~)。
ただ、周りのモブキャラ(だいたいおっさん)が「あの子ひとりで釣りしてるよ」「あの子1人でどんだけ釣るんだよ」みたいな”女のくせに”というフィルターをかけて見ているのが若干引っ掛かるのであります。漫画的な誇張表現だとは思うのですが。おっさんはそれほど他人を気にしちゃいないぞ。
釣りじゃないけど生き物好きにおすすめ漫画
釣り漫画というわけではありませんが、生き物好きクラスタの住人が好きであろう漫画も一緒に紹介しておきます。
ガタガール
今年の初めぐらいだったか、SNSで反響がなければ連載が終了するという騒動があった「ガタガール」。ガタは干潟のガタですね。
その騒動の結果、惜しくも一定数の反響が得られず予定通り連載が終了してしまったようなのですが、どうやら別媒体で連載が継続しているようです。
飼育少女
タイトルと首輪をつけられた女子高生のイメージカットから、汚い大人はそういう想像をしてしまうかもしれませんが、これはストレートに生き物の飼育がテーマの漫画です。ネットで連載されています。
女子高生と生物教師が主に水生動物を飼育するお話ですが、絵も飼育も非常に丁寧に描かれています。
全体の雰囲気はギャグ寄りで女子高生の妄想が暴走する系。教師との恋愛要素もちらつかせつつ気軽に楽しく読める漫画です。
2018年始めに単行本が発売されました。
あまり生き物クラスタには知られていない気がするのですが、生物飼育の知識も得つつ、コメディとしてもしっかり成立しているので大変オススメの漫画です。
表紙の絵はいらぬ勘違いさせるからもったいないなあと思いますけど。
おすすめ釣り漫画まとめ
以上釣り漫画+αの紹介でした。意図的じゃないんですけど、全部女の子が主人公ですね。
最近よく感じますが、こういうクオリティが高い漫画をネット上で一部タダで読めるってのは素晴らしい。もちろんその後の単行本発売に向けたプロモーションの一環ではあるんだろうけど。
いろいろと厳しい出版業界ですが、本当に興味を持った漫画は単行本を買って応援していきたいと思います。
純粋な釣り漫画ではなく、いわゆるコミックエッセイというやつなんですが、この本もおすすめ。
今でこそ漫画やアニメは「趣味」として堂々と他人に言えるジャンルになってますが、アラフォーである私が青春時代を過ごしていた90年代頃って、なんとなく他人に言うには恥ずかしいものだった気がします。
同世代の方、そうじゃありませんでしたか?
いろいろな影響で「おたく」って言葉が今よりずっと蔑称に近いものだったし、とりわけ漫画よりアニメはその傾向が強かった。アイドルが好きなんて言うのも今より抵抗がありました。
一方私は糞サブカル野郎だったので「渋谷系おっしゃれ~!」「テクノこそ至宝の音楽!」「アートアニメ(チェコアニメとか)こそホンモノ!」みたいな薄っぺらい『センスいい感』を振りまいておりました。いやどれも素晴らしいんですよ実際。
その時代と比べたら今はほんとに趣味や嗜好が多様化していい時代だと思います。SNSを通じて好きなものは好きと堂々と言えるし仲間も見つかる。当の私もおっさんに近づくにつれ何でも抵抗なく楽しめるようになりました。
歳をとるとこだわって固くなるのかと思ったら案外柔らかかった。