釣りをするようになってからというもの、食材の買い物に行くと魚屋やスーパーの魚売場を覗くのが習慣となりました。
そこにはマグロやサーモンなどに交じって、アジ、サバ、イワシ、メバル、タチウオなど、大阪湾の波止釣りでお馴染みの魚たちも。やっぱり目がいくのはそのお値段です。
でも売ってる魚の値段を見ると「安っ!あんな大きいのに安っ!あんないっぱい入ってるのに安っ!」と思うことがほとんどなわけです。エサ代や仕掛け、その他タックルにかけた費用、交通費等と照らし合わせるとまあ赤字です。ほとんどの場合。
釣りの楽しさはプライスレスであり損得勘定だけで釣りをしているわけではないですが、価値の高い魚が釣れればそれはそれで嬉しいもんです。そこで、大阪湾のファミリーフィッシングで釣れる魚についてその市場価値を調べてみました。
大阪湾で釣れるキロ単価が高い魚ベスト10
参考にしたのは平成28年1月から12月における1年間のデータ。詳しくはこちらのリンクを参照ください。
ここには魚種別に1キログラムあたりの価格がデータとして登録されています。なにをもって高級魚と定義するかはいろいろ切り口があると思いますが、この記事ではそのキロ単価の値を高級魚の基準とします。ここから波止釣りではあまり釣れない魚を除外してランキングにしたものを10位から発表!
データには地方名や流通で使う呼び名が使われているようなのでもしかしたら私の勘違いや思い込みもあるかもしれません。その点はご容赦を。
またここで記載しているキロ単価はあくまで市場での卸価格なので、店頭だと利益が上乗せされてさらに高くなる可能性があることをご理解ください。
魚の価格は季節変動がありますので、時期によってはこのキロ単価と大きく異なる場合があるというのも頭に入れつつご覧いただければと。
第10位「タコ」(キロ単価1,551円)
いきなり魚ではないものが出てきてしまいましたがタコです。
タコジグやタコエギなんかを使って波止から手軽に狙えるターゲット。専門に狙わなくてもたまに投げ釣りとかの外道で釣れたりします。
第9位「アナゴ」(キロ単価1,620円)
(出典:マアナゴ (2005.06.26)KOUJI | WEB魚図鑑)
こちらも波止から手軽に狙えるアナゴ。夏も冬も、意外とシーズンを通して釣れるターゲットです。
第8位「タチウオ」(キロ単価1,621円)
大阪湾の釣りでは一番人気の高いタチウオ。
サイズによって価値が変わってくるようで大きいほど高い傾向。指3本サイズほどであればそれなりの価格ですが、指4本半100センチ以上になってくると丸々一本で2,000円近い高値がつけられていることもあります。
タチウオを釣る人にはその理由が分かりますよね。そう、大きいほど美味しいから。さらに大きな指7本サイズとかになると食べたことないんで分かりませんが、指3本サイズと4本サイズを比べても味の差は感じます。
第7位「イシダイ」(キロ単価1,651円)
磯の王者イシダイ。これをランキングに入れるべきか迷いましたが波止から釣れるっちゃあ釣れるので一応。
堂々と「イシダイ」と呼べるサイズはそうそう波止から釣れるものではないですが、その幼魚で20センチ程度ぐらいの「サンバソウ(地方名)」はサビキなんかにも掛かってくるのでわりとお馴染みの魚です。大きくなると縞模様が曖昧になって口先が黒くなり「クチグロ」と呼ばれますがそのサイズは小さいものより美味しいんでしょうかね?
第6位「キス」(キロ単価1,836円)
砂浜から狙う投げ釣りの人気ターゲット。
天ぷらが定番でしょうか。誰からも好かれるであろう上品で淡白な味で納得の上位ランクです。
第5位「シャコ」(キロ単価1,978円)
魚じゃありませんしこれもランキングに入れるか悩みました。しかし投げ釣りの外道で釣れたりすることもあるんで対象に。
私は子供の頃の大好物で、塩茹でを山盛り食べていた記憶があります。昔はもっと安かったのかも。
第4位「アコウ」(キロ単価2,050円)
(出典:キジハタ (2008.09.05)マリトコ | WEB魚図鑑)
高級魚の代名詞ともいえるアコウ(キジハタ)が4位にランクイン。
近年盛んに放流が行われていて数が増えているようです。放流が実を結んだ結果ですね。根魚で成長が遅いはずなので、小さなサイズが釣れたらリリースを心がけましょう。大阪湾のアコウについては28センチ以下はリリースするよう推奨されています。(大阪府/小さな魚は海へ返しましょう)
第3位「サヨリ」(キロ単価2,256円)
意外なことにサヨリがベスト3にランクイン。
でもおそらくこれは30センチを超える大型サイズが価格を吊り上げているものと思われます。釣り場では「ジャンボサヨリ」、流通では「カンヌキ」と呼ばれるサンマみたいなサイズのサヨリです。
20センチぐらいの小型サヨリが1キロあったところでこの価格はつかないんじゃないかな?そのサイズはそのサイズで美味しいんですけどね。
第2位「アオリイカ」(キロ単価2,490円)
魚ではありませんがイカの王様アオリイカが2位。
エギを使って釣るエギングが人気で、バス釣りから流れてきた人も多いんだとか。この写真はサビキに掛かった小魚を狙ったアオリイカがたまたま釣れたシーンです。刺し身にして食べたところモチモチして絶品でございました。高級にランク付けされるのも納得です。
第1位「メゴチ」(キロ単価3,854円)
(出典:ネズミゴチ (2005.10.30) きくやの常連| WEB魚図鑑)
そしてダントツの1位はまさかのメゴチ。
ん?メゴチ?
ここでいう「メゴチ」が果たしてどの魚を指しているのか判断が難しいところです。何種かの形が似た魚の総称として使う”メゴチ”と、正式名称の”メゴチ”がそれぞれ存在しているので。
ですが前者であるなら関東でいうところのメゴチはネズッポ科の魚の総称。関西でガッチョやテンコチと呼ばれるあの魚のはず。そう、キス釣りの外道でお馴染みのヌルヌルしたアイツのはず。天ぷらのタネとしては優秀なアイツ。主にネズミゴチ。
でもこれが1位?
ランキングまとめ
なにはともあれ以上の結果をグラフにまとめました。
(データ出典:東京都中央卸売市場-統計情報検索結果)
やはり「めごち」だけが突出して高いですね。でもこの結果だけをもって「高級魚」とするのは必ずしも正しい見方ではないし違和感もあると思うので、あくまで1つの視点、1つの基準と言うことでご理解ください。
11位以下のラインナップ
参考までに11位以下は以下の通りとなっています。
サビキで釣れるような青魚はやっぱり安い。
釣具屋の煽り文句で未だに「マイワシは高級魚」という記述を見かけますが、それは2006年あたりの不漁のときのことなのでやはりイワシは大衆魚に違いありません。
釣るにおいてコストパフォーマンスが高い魚は?
1キロあたりの価値は分かりましたが、それぞれの魚を1キロぶん釣るための難易度はバラバラです。アコウなんてそうホイホイ釣れるもんじゃありません。魚によって1匹あたりのサイズもバラバラ。
1位の「メゴチ」が高級魚だとして、あんな10センチ台の小さな魚を1キロも釣るには果たして何十匹釣り上げればいいのか、どれぐらい時間が掛かるのか検討もつかない。エサ代もバカにならないはず。500円のイシゴカイをいったい何パック買えばいいのだ?
では魚を得るための手段として「陸っぱりからの波止釣り」を選択した場合、コストパフォーマンスが高いといえる魚は何でしょうか?果たして”元が取れる”釣りはあるんでしょうか?
個体が大きく数も釣れる「タチウオ」がベスト
キロ単価と1匹あたりの大きさと重さ、安価な道具でも釣れること、いい群れにあたれば数が釣れること。これらの要素から考えると、一番コストパフォーマンスが高い釣りはタチウオ釣りでしょう。他の地方ならいざ知らず、大阪湾の波止釣りなら間違いなくベスト。
波止から釣れるレギュラーサイズともいえる指3本半ぐらいから4本サイズ、長さでいうと80~90センチぐらい。だいたいこれが300グラム台です。これを3匹も釣れば1キロ超えするので卸価格1600円ぐらい。消費者としてお店で買えば余裕で2000円を超えることになります。ウキ釣り、テンヤ、ルアーと釣り方によりエサや道具のコストは若干異なりますが、これは確実に「元が取れている」類の釣りになってるんじゃないでしょうか?
釣行ごとのエサや仕掛けのランニングコストはもちろん、竿やリールをそろえるイニシャルコストもワンシーズンで回収出来そうです。ウキ釣りなんてサビキ用の安いタックルで十分だし。
このコストパフォーマンスのよさも、関西でタチウオ釣りが大人気である理由でしょうね。
ジャンボサイズなら価値がある「サヨリ」
阪神間においてはサビキに次ぐ手軽な釣りともいえるサヨリ釣り。
時期さえ掛ければ100匹釣るのもそれほど高くないハードルです。とはいえその時期に釣れるサヨリのサイズは20センチ中盤がいいところでどちらかというと小さめ。いくら釣っても市場価値はそれほど高くないようです。
しかし30センチを超える大型サイズのサヨリになると価値も上がって料亭で使われる高級食材に。そのサイズが狙える時期はシーズン最初期の6~7月、終盤にさしかかった11月~12月、そして真冬の1月~2月。特に真冬の時期のサヨリは脂がのっていてさらに美味しいので価値があるのはその時期じゃないかと思います。そのサヨリが釣れるのは明石海峡付近。ここでのジャンボサヨリ釣りも高コスパといえます。
聞くところによるとここ数年のジャンボサヨリは釣り人と漁師とのいたちごっこ状態だとか。アジュールや平磯でジャンボサヨリの釣果情報が出ると、どこからともなく漁船が現れ、文字通り一網打尽にサヨリを獲り尽くしてしまう。結果、釣り人に残されたのはおこぼれのサヨリが僅かばかり。あちらは仕事、こちらは趣味。漁師が釣り人に配慮する義理はないんでしょうが…ねえ。
皮肉ですが、この状況も大型サヨリの価値が高い裏づけといえます。
貴重な国産「タコ」
スーパーでパック詰めされて売られているタコはほぼ輸入物です。産地を見るとよく「モーリタニア産」とか書いてあります。どこやねんそれ!というツッコミは置いといて(アフリカにある国ですが)、たこ焼きやその他タコの加工品で国産が口に入るのはまれみたい。
タコは意外と手軽に釣れるので何かの釣りの合間に狙ってみるのもいいと思います。数年前、南芦屋浜で大フィーバーしていました。
案外身近に釣れる天然の「ウナギ」
ランキングには入っていませんがもうひとつ。
絶滅危惧種としてレッドリストに掲載されたのも記憶に新しいニホンウナギですが、案外その辺の川とかで釣れるようです。
淀川の下流域なんてメッカですし、なんと中之島のオフィス街でも釣れるらしく。案外あなたがお住まいの近くの川でも釣れるかもしれません。私もやってみたいのですが手が出せないまま今に至ります。まあウナギに関しては釣るのと捌いて美味しく調理できるのとは別問題なので、その辺のちゃんと考えないといけませんが。
また絶滅危惧種だということもしっかり頭に入れておかねばなりません。
安かろうが高かろうが美味いもんは美味い
以上、普段釣る魚の市場価値について調べてみた結果でした。
基本的に高いもんはそれ相当に美味いと思いますが、希少性だったり網で大量に獲れなかったりとかの要因も価値に加味されていると思います。
だからランキングで下位だったりあるいはランク外だったりする魚でも美味しいものはたくさんあるわけです。安いからといって不味いわけではない。私はマダイなんかより大衆魚のマアジのほうがよっぽど美味くていろいろな料理方法で楽しめる万能食材だと思いますし。いやマダイも美味いですよ。でも好みなんて人それぞれでいいはず。
魚を釣った季節によっても美味しさは変わります。その魚の産卵時期によっても味は大きく変わります。市場価値を知るのも面白いですが、釣った魚を美味しく食べられる時期や食べ方を知るのも同じぐらい大事ではないかと。
と、新鮮釣れたて状態のマイワシを刺身で食べて思ったのでした。真冬のマイワシは脂がのって美味い。大衆魚と呼ばれようが下魚と呼ばれようが美味しいものは美味しい。それでいい。
「やっぱり釣りはお得でいい趣味だ」と自分自身に言い聞かせてこの記事は終了といたたします。