未だ記憶に新しい2018年の台風21号被害。
強風と高潮によって大阪湾北部にあるすべての釣り公園が被害を受け、一時的あるいは長期的に閉園せざるを得ない状況になりました。沖提への渡船施設も大きなダメージを受け、しばらくの間渡船中止となりました。それ以外の釣りができる波止や護岸も大きな被害を受けました。
多くの釣り場は台風通過後に急ピッチで復旧が行われ、ほとんどが元通りに。
そんな中で気になるのは、台風上陸直後からずっと閉鎖され立ち入り禁止となっていた南芦屋浜ベランダです。台風被害から数年経っても再開のめどが立っていませんでした。
しかし2019年末から本格的な護岸改修工事が開始。途中で工期の延長などがあったものの、徐々に具体的な見通しがついていきました。釣り場としてみる改修工事完了後南芦浜ベランダについて、現段階で分かる情報をまとめます。
この記事は2024年3月現在の芦屋市ウェブサイトの「南芦屋浜における高潮対策」および「ビーチ護岸・南護岸(一部を除く)の供用開始のお知らせ」、兵庫県阪神南県民センター尼崎港管理事務所高潮対策推進課の「高潮対策 南芦屋浜護岸改修工事(工事終了後ドメイン失効)」に掲載されている情報および現地取材した情報に準じて構成しています。
また、記事の内容は試験解放が開始される前に構成したものです。スケジュールの変更が多く発生していたため情報が錯綜した状態のままで読みにくいと思います。記事自体は参考程度にご覧いただき、現在の状況は記事冒頭の「現在の状況について」を参照してください。
今後も南芦屋浜ベランダを釣り場として使えるのか?
阪神間で釣り禁止場所が増える中で
かつて釣りができていた阪神間の釣り場に釣り禁止の波が押し寄せています。釣りが黙認されていたような場所にも明示的に釣り禁止や立入禁止のメッセージが掲げられるようになりました。
ゴミの放置やマナーの悪化、釣り人の間ではそれらが禁止の原因になったという見解を持っている人が多くいます。しかし私はそれに関する公的な発表をみたことがないので憶測であれこれ書くつもりはありません。仮想敵を設定してグダグダ言うつもりもありません。(不確実な情報をもとにして人を煽るのはよくない)
ただ、釣り人の振る舞いが周囲に悪い印象を与えているのは想像に難くないこと。実害がでている場所もあったと思います。有料釣り場以外で釣りをすることにより、釣り人がその場所にどんなメリットをもたらすかと問われれば答えに困ります。住宅地が中心の南芦屋浜においては特に。私自身ぐうの音も出ません。
閉鎖中の南芦屋浜ベランダも釣り人による不法侵入や迷惑駐車があったようで、自治体や地域住民からの心象は決して良くないはず。改修工事完了後、なしくずしに釣りが禁止となる可能性もゼロではない。
公的な情報で今後の計画や方針が示された
しかし護岸改修工事について進捗状況などを発信する公的なサイトが2019年末に公開され、そこに今後の釣りに関する情報も記載されました。
http://minamiashiyahama-gogan.jp(工事終了後にドメインは失効しています)
当初は2020年の8月31日で工事が終了する予定となっていましたが、工事内容に変更が生じた影響で半年ほど終了時期が延び、2021年3月末が暫定的な工事完了となりました。そして2021年8月末ですべての工事が終了してベランダ護岸が開放される、と兵庫県が出した資料で告知されていましたが、その予定はたびたび延期されていました。
しかしようやく2022年の10月28日より一部が試験的に開放されています。
開放後、またあの場所で釣りをしていいのでしょうか?
これからも南芦屋浜ベランダで釣りができる!ただし夜間は閉鎖
工事完了後も引き続き釣りが可能
工事完了後も以前のように釣りができるかどうか。まず結論として当初からこのように告知がありました。
護岸改修工事完了後は引き続き釣りが可能
出典:ビーチ護岸、南護岸、東護岸(南)の護岸改修工事後の護岸利用について(※削除されています)
工事完了後は引き続き南芦屋浜ベランダで釣りをしてもいい。兵庫県と芦屋市が作った資料にはっきりとそう書かれています。よかった!(※2022年10月現在、上のリンク先にあった資料は削除されているようです 代わりにこちらの資料をご確認ください)
そして2022年の10月末からは、南芦屋浜ベランダの一部が試験的に開放されるようになりました。あくまで試験的な開放なので、これは永続的な開放にならない可能性もあります。
実はこの記述を見てちょっと驚きました。
公的な文書で「ここで釣りをしてもいい」ということが明文化されていたからです。釣り公園などを除き、京阪神地域の護岸で釣りが可能とはっきり明記されている公的資料は非常に珍しい。
そりゃまあテレビ番組で釣り場として紹介されているし、誠実さの化身のような伊丹さんもニッコニコで「サヨリの聖地!」っておすすめしてるし。釣りをしてはいけない場所じゃないことは分かっていました。でもはっきり「釣りOK」という根拠を今までに見たことがなく。
これからの時代、沖、釣り公園、海上釣り堀や管理釣り場以外の場所では堂々と釣りが出来ないのかと思っていたところ、思わぬところからの福音です。
ただしこの資料にこんな記述もあります。
夜間閉鎖が導入されている
台風被害以前は、イベント開催時を除き24時間365日自由に出入りできた南芦屋浜ベランダ。工事完了後はいままで無かった制限が加えられます。それがこちら。
原則として夜間は閉鎖
出典:ビーチ護岸、南護岸、東護岸(南)の護岸改修工事後の護岸利用について(※削除されています)
工事終了後は、以下の時間帯において夜間閉鎖されます。
20時から翌朝8時(※)まで護岸が閉鎖され立ち入り禁止
つまり朝の8時から夜の20時までは護岸が開放されて釣りができるということになります。
(※従来は朝6時からとなっていましたが試験開放中の2022/12/15より変更となります)
駐車場の利用時間は開放時間より短いので注意
周辺の公営駐車場については、ベランダの開放より短い朝の8時から夜の19時まで駐車できる(※試験開放中の12/15より7時から8時へ変更)ようです。その時間外は駐車場の周辺道路も含めて閉鎖。これは迷惑駐車やオープン待ちのアイドリング防止策だと思われます。
閉鎖になる以前も8時に駐車場がオープンしていた記憶がありますが、駐車場のゲート直前まで進入することができていました。そのせいで、民家の真横かつ駐車禁止エリアにも関わらず早い時間に車を路上放置しオープン時間に慌てて入庫するということが一部の人の間で常態化していました。動かない車に向かって怒鳴ったりクラクションを鳴らすなど、それが原因のトラブルもよく見かけました。
今後は取り締まりも厳しくなるでしょうしリスクも迷惑も大きいので絶対にやめるべき。一般常識のある人にはそもそも関係のない話ですし、駐車場周辺道路は当然のように駐車禁止区域です。しっかり道路標識を確認しましょう。路駐なんてもってのほか、車を置いて場所取りだけしに行くとかバカなことは絶対にしないでください。シンプルに違法行為だし大迷惑です。
なお、駐車場の退出に関しては20時までとの記述があります。それ以降は朝まで出庫できないと解釈すべきでしょう。
夜間閉鎖について情報を図にまとめるとこのようになります。参考までに朝夕マズメの時間も入れてみました。
ここ数年湾奥では不漁が続いているものの、南芦屋浜でのタチウオ最盛期は例年11月ぐらい。そしてその時期の日没は17時ごろ。
このまま予定通りの閉鎖時間になれば夕まずめのタチウオは今までどおり狙えます。冬が近くなると17時前には日が沈むので、駐車場の閉鎖時間を加味しても夕まずめは余裕で射程範囲内といえます。
朝まずめ狙いは潔く諦めましょう。試験開放中からしばらくは6時オープンだったので可能でしたが、残念ながら諸問題の影響で8時となりました。周辺地域への影響を考えたらこれで良かったんだと思います。
南芦屋浜名物のサヨリ釣りは昼間が狙い時なので問題なく継続できそうです。残念ながらかつて出来ていた夜通しの釣りは今後できなくなります。
住宅街に近いベランダは仕方ないにしても、周辺がほぼ緩衝帯の緑地で人家が遠いビーチまでもが夜間閉鎖となり、これにはやはり異議を唱えている方もおられ、署名活動が展開されていました。
しかし夜間閉鎖は決定事項として2021年4月からビーチの運用に先行導入されています。現状は夜間にビーチへ入ることができません。しばらくこれで運用して見直しの余地もあると明記されていましたが、現段階では不確定要素です。
早朝の釣り人が迷惑というのは理解できるのですが、人家から遠いビーチで早朝に散歩すらできないというのは疑問が残ります。
夜間閉鎖の是非について
「えーっ夜中に釣りが出来なくなるの?あれこそタチウオ釣りの醍醐味、南芦屋浜の風物詩だったのに。」
そう思う人は多いだろうし、私も本音ではそうです。夜通しタチウオ釣りの電気ウキを眺めていたい。浮いたり沈んだりするウキを見つめてヤキモキしたい。
ただ、あの釣り場を取り巻く環境を考えれば夜間閉鎖自体は妥当だし仕方がないことだと考えます。いろいろな立場の意見があると思いますが、私の見解を書かせてください。
立地条件を考えると夜間閉鎖は仕方がない
なんとなくリゾートっぽい雰囲気がありますが、南芦屋浜自体は住宅をメインとして開発されたエリアです。その中でもベランダは住宅街と近接しています。
閉鎖前に行ったことがある人は一歩引いた目で思い出してみてください。数十メートル背後には閑静な住宅街が広がっていたはずです。
Googleマップで計測したところ、中央のトイレ付近で住宅と40メートル程度しか離れていません。道路が蛇行しているためもっと近いエリアもあります。仮にメタルジグを投げたなら余裕で届く距離。釣りをするならその距離感が分かるでしょう。もちろん声も届く距離といえます。
釣り場と住宅地が近接している。この立地条件が近隣の釣り場と大きく異なるところです。
かつては開発中で空き地だらけでしたが、着実に住宅街として完成しつつあります。閉鎖されていたこの数年の間にも状況は変化しています。近隣と比較してもこんなに住宅地が近い海の釣り場は思い当たりません。こんなの都市計画の失敗だろうといえばその通りかもしれませんが、今さらどうしようもない。
釣り人のマナー違反もさることながら、そもそもこの特殊な立地条件が夜間閉鎖の大きな要因だと推測されます。住宅街から離れた北側や西側の護岸についても工事が進んでいましたが、そちらは夜間閉鎖や釣りの禁止について全く明言されないまますんなりと開放のスケジュールが決まったことからもそれが伺えます。
でもベランダは今まで夜通し釣りができてたじゃないかと思ったりもしますが、早い時期から住まれていた近隣住民は迷惑をこうむっていただろうと容易に想像がつきます。
今までは住宅も少なかったからお目こぼしで許されていただけと考えたほうがいいかもしれません。「ゴミの放置とかマナー違反をしてきたやつらが夜間閉鎖の原因だ!あいつらのせいだ!」と”あいつら”をスケープゴートにすれば感情のはけ口ができて楽ですけど。
そもそも夜間閉鎖の目的としてこのように明記されており、特に釣り人だけを対象にしたものと受け取ることができません。
今回の高潮対策による防潮堤の建設により海側は死角の多い閉鎖的な空間となり、特に夜間は暗がりとなることから、これまでの警備体制では安全・安心な住環境や利用者の安全を確保できない恐れがあるため…
引用:芦屋市ホームページ「南芦屋浜における高潮対策」(※削除されています)
試験開放中に住宅側から護岸をみましたが、確かにほとんど死角であり、壁の向こうで何が行われているのか全くうかがい知れません。不気味に感じることもあるでしょう。
もちろんマナー違反をするやつらを許容するということではありません。規制の大きな原因になっている可能性は確実でしょう。率直に言って〇〇〇〇です。(お好きな言葉を入れてください)
しかし夜釣りをしていた以上、いくらマナーを守ってるといっても真夜中や早朝に住宅街のすぐ近くでゴソゴソと活動していたわけであり、「あいつらは悪で自分たちは善」ときれいに線引きできないと思います。一切の音を立てずに釣りなどできません。「マナーを守らないあいつら」と「品行方正な私たち」は地続きです。外部から見ればなおさらその違いは見えません。もちろん大きな差はあるんですけど、興味がない分野なんて外からみたらそんなもんでしょ?
自分に置き換えて想像してみましょう。毎日24時間、自宅のすぐ先で知らない人がたむろしていると。近隣にコンビニも駐車場もあるから住宅街に人の往来もある。昼間ならまだしも、就寝時間にそんな状況だったら私は耐えらないです。
釣りをしていると感覚が麻痺しますが、深夜や早朝に真っ暗な公共の場で活動するということはかなり特異なことです。周りに人のいない場所ならまだしも人家の近くならなおさら。
有料化が様々な問題解決につながるのではないか
じゃあ有料化して釣り公園にすればいいじゃないかという意見も一理ありますが、それは釣りのことしか見えていないエゴな考えかもしれません。
あそこは釣り公園ではなくあくまで一般的な公園。散歩したい人も夕日を眺めたい人もいるわけで、有料化は釣りに関係ない人を排除することになる。
入場料とは違う形で釣り人が料金を払ってそれがあの場所の維持管理に繋がるなら個人的には大歓迎です。
料金を払ってまで釣りをしたい人と一銭も払わずに釣りをしたい人。その間には意識の壁があり、それがマナーを守れる人か否かのフィルターとしても機能するはずです。料金にゴミ処理の費用が含まれていればゴミ問題も大幅に解決するはず。人口密集地周辺の釣り場で起きている問題の解決には有料化がベストだと私は思っています。
南芦屋浜からも比較的近い神戸六甲アイランドのマリンパークで、「海釣り検討」の実証実験があり私も参加しました。参加者アンケートでは有料化についての設問もありました。この実証実験がどのような展開になるのか今はまだ分かりませんが、有料化による釣り場解放の先駆けになればと願っています。
夜間閉鎖は受け入れざるを得ない
自治体や地域住民にとって南芦屋浜ベランダで釣りをさせることのメリットはほぼゼロだといえます。今の仕組みではゼロどころかマイナスになる可能性すらあります。例えば私なんて芦屋市はおろか兵庫県外の住人ですし、そこの税金で維持管理されているであろう場所にただ乗りしていると考えると肩身が狭い。
工事の資料中には「釣り利用による迷惑行為の防止」という項目があることから、釣り人はそもそも迷惑な存在として地域から認識されています。マナー違反する人もマナーを守る人も同じ目で見られている。不本意だろうがどうだろうが、これはしっかり意識しておくべき。
また芦屋市のホームページ上には、護岸の利用に対しての意見募集と回答などが掲載されていますが、そこにも釣り人に対する憤りや苦言が散見されます。
【資料】ビーチ護岸、南護岸、東護岸(南)の護岸改修工事の予定と工事後の護岸利用にかかる意見募集で提出いただいたご意見の概要と対応
https://www.city.ashiya.lg.jp/bousai/documents/ikengaiyou.pdf
釣り人の立場から発せられたであろう意見もいくつかあり、なるほどと思う意見もあれば理想論やちょっと都合良すぎないかと思う意見も。これだから釣りをするやつは…と思われかねないような意見もちらほら。
にも関わらず「ここで釣りをしてもいい」という可能性を行政が残してくれてるわけです。
夜間閉鎖に不満を持つ人がいるだろうしそれも分かりますが、釣り人に対してかなり譲歩してくれている。はなから迷惑な存在と認識されている以上、釣り人の立場から夜間閉鎖反対の意思を表明するのは無理筋です。少なくとも今は。
気を悪くされたら申し訳ないですが、夜間閉鎖が発表された直後にSNSで閉鎖反対の気運が高まったタイミングがありました。エスカレートするうち、そもそも南芦屋浜に行ったことが無いであろう人まで反対の意思を示し始め、これは危ういと思ったのが正直なところ。日中の開放にすら影響しかねない。
そしてそれがこの記事自体を書いたきっかけです。港湾施設や漁港の釣り禁止とは事情が大きく異なることをご理解ください。
工事完了後の釣り場はこうなる
南芦屋浜ベランダでの釣りについて、現時点で分かっていることを再度まとめます。
さらに工事の進捗と釣り場としての開放スケジュールを時系列でまとめます。
- 2021年4月13日一部工事完了
中壁まで入れるようになるが、一部で工事が続くため岸壁まではアクセスできず釣りも不可
- 2021年6月末以降
南面で釣り可能に南面の中壁より海側が開放され釣り可能となる※延期 - 2021年8月末以降
ベランダ全面開放東面の護岸が開放されベランダで全面的に釣り可能となる※延期 - 2022年3月以降ベランダ以外の堤防嵩上げ工事開始
南芦屋浜の北側、西側、東側でも堤防の嵩上げ工事が始まり、工期は約1年を予定
- 2022年10月ベランダの一部が試験開放
10月28日よりベランダの一部が条件付きで試験開放
- 2022年12月試験開放時間の変更
マナー悪化を受けて12月15日より試験開放時間のスタートが朝6時から8時に変更
- 2023年4月ベランダ以外の護岸も順次開放
4月から10月にかけて北側、西側、東側の護岸が順次開放予定
- 2023年5月中旬
今後のベランダ運用方針が決まる試験開放の結果をもって今後の運用が決まり、最悪の場合閉鎖となる - 2023年8月3日ベランダの釣り可能エリアが設定される(10月初旬まで)
護岸が全面開放されるが、東西で釣り可能エリアと禁止エリアが設定される
変更が多くて把握できないかもしれないですが大丈夫です。書いてる私も同じです。
スケジュール通りいけば、2021年は数年ぶりにベランダでのタチウオ釣りが楽しめそうです…と当初は期待していたのですが、2021年9月1日の公式発表でなぜか未定となり、工事終了予定から1年経った2022年の夏になっても未だ何の見通しも立たない状況でした。
そんな中、ようやく2022年の10月28日より一部が試験的に開放されることになりました。マナーなどの利用状況が悪ければ来年5月後半をめどに閉鎖するという厳しい条件付き…でしたが、6月が過ぎ7月に入っても今後についての発表がありませんでした。
7月末に新たな方針が発表され、護岸自体は従来の利用時間内において全面開放されるものの、東半分が釣り可能エリア、それ以外は釣り禁止エリアとなりました。釣り可能エリアの広さ自体は従来と同じ広さのようです。これも10月初旬までという期限が設定されているので、この利用状況をもって最終的な判断がなされるのではないかと推測されます。
開放がスムーズに進まなかった理由は、兵庫県議会の会議録(令和4年5月16日)および芦屋市議会の会議録(令和4年6月14日)を見てもらえれば背景が想像できるかもしれません。これについて私からは何も言えません。
現在工事中の北側、西側、東側については、来年春ごろより順次開放予定となっています。こちらに関してはベランダとは立地条件が異なるので、開放と釣り可能は確定と考えて問題ないと思われます。
ここからは工事完了後どんな釣り場になったのか見ていきたいと思います。
防潮堤が2段構えで設置される
言うまでもなく改修工事の目的は釣り人排除ではなく高潮対策です。
21号の台風被害で南芦屋浜の住宅街が水浸しになり、周辺の港から漂流したコンテナが海岸に打ち寄せられました。
高潮被害というと教科書に掲載された白黒写真でしか見たことがなかったのですが、よもや自分の知っている場所で起きようとは。
その高潮から街を守るため、南芦屋浜ベランダの東西を横断する巨大な防潮堤が築かれました。しかも2段構えで。松林の近くに後壁として低い防潮堤が1本、海に近いスペースの後ろに中壁として高い防潮堤が1本。
こちらが岸壁の真後ろにある中壁です。
この写真では比較対象がないので分かりにくいですが、高さは3メートル程度でかなりの存在感。まるで要塞のような物々しさですが、強大なパワーの波に耐え、海からの海水侵入を防ぐためのものだから当たり前かもしれません。なお、根本がえぐられた形状になっているので日除けになったり多少なら雨宿りもできそうです。
そしてこちらが後壁。
景観が確保できるように、水族館の大水槽で使われていそうな分厚い透明アクリル板がところどころはめられています。
以前からトイレがあった中央付近に大きな防潮扉が設置され、夜間や非常時はそこが閉じられるようになっています。さらに何ヵ所か小規模な防潮扉が設置されていますが、こちらも夜間は閉じられています。開放時間になると警備の方がこられて順次開放していくかたちです。
不法侵入したら捕まるよマジで
難攻不落な中壁と比較して後壁の高さは低く、大人の身長なら胸の位置ぐらい。
ここだけの話、アクリル板設置個所を足場にすれば簡単に乗り越えられる高さです。また、その先にある中壁はかなり高いので、岸壁まで行ってしまえば周辺道路や近隣の住宅などから釣り場の様子は一切見えません。
じゃあ夜中にこっそり入って釣りが出来るのではないかと思うじゃないですか?
それは甘い。なぜなら以前はなかったこんな設備があるから。
360度撮影できそうなドーム型監視カメラとスピーカーがセットになった設備、これが何ヵ所にも設置されています。死角はありません。バレずに侵入して釣りをするのは不可能です。記録にも残るはずです。
そしてさきほど載せた看板にも書いてありますが「夜間の侵入者を発見しだい警察に通報」というシンプルかつ強力な警告があります。夜中はスピーカーでの警告もできないでしょうから、サイレントに通報されて御用です。
つまり夜間の閉鎖時間中に不法侵入すれば即犯罪者となり得ます。捕まるよマジで。
よく考えてください。ここ以外でも立ち入り禁止の場所で釣りをする光景を見かけることがありますが、釣りってそんな社会的リスクを負ってまでやるものでしょうか?たかが趣味で?
絶対やめろ。見つかったら逃げようったって、城壁みたいに堤防の切れ目が数か所しかないから無理やで。
中央付近に売店ができる
これはちょっとびっくりしたんですが、ベランダ中央付近のトイレがある場所あたりに有人の売店ができるということが資料に記載されていました。設置目的は「釣り利用者のマナー向上」や「ゴミ箱管理」など環境改善のためとあります。ソースはこちらを参照してください。
現段階では何を売る売店なのか分かりませんが、少なくとも飲み物の販売ぐらいはあるんじゃないかと思います。けっこう遠くの自販機まで行かないと手に入らなかったので、そうであればありがたい。
果たして釣具やエサの販売は行われるのか、どこの誰が運営するのか、期待しつつその日を待ちたいと思います。地元釣具屋との連携という話がちらほらと議員さんの発言にあったりしたので、順当に考えればあの釣具屋だろうなという見当がつきますが詳細は不明。
なお試験開放中の売店営業は無いようで、早くともこれができるのは2023年夏以降と考えたほうがよさそうです。さらに最新の資料には記述がなくなっているので、そもそも開設されない可能性もでてきました。
海底の地形が変わって浅くなる
工事内容の中には「被覆ブロック据付工事」という工事も行われました。
被覆ブロックというのは、捨石をカバーして流出を防ぐ目的を果たすブロックのようです。
形状にバリエーションがあるようですが、いずれにせよ比較的隙間が多くできるブロックのようなので、そこにエサとなる生き物が増えれば魚も増えるはず。これによって生物の多様性が広がり、今まで釣れにくかった魚が増えているかもしれません。例えば根魚が増えるとか。
ネガティブに考えれば根掛かりが増える原因になるかもしれません。
工事概要の説明資料を参照すると、構造物が増えて護岸の重量も増えたため耐震工事として海底の捨石を拡張する、つまり積み増しするように見受けられます。その捨石を覆って保護するのが被覆ブロックというわけです。
ということは従来より水深が浅くなったのは確実です。概要図の精度がどこまで正確か分かりませんが、それを参照する限りは1メートル程度の捨石が積み増しされそう。加えてそれを覆う被覆ブロックは2t製という記述があり、これは70センチ程度の厚みがあるようです。
かつての南芦屋浜ベランダ足元付近の水深は平均して4ヒロ程度、つまり6メートル程度でどちらかというと浅い釣り場だといえます。それがさらに最大2メートルほど浅くなるかもしれない。潮が澄んだ日の干潮だと底が目視できるぐらいかも。となると足元のサビキ釣りなどは今まで通りにいかないかもしれません。
工事の進捗状況を伝える画像を見ていると、その被覆ブロックらしきものが見える画像がありました。
画像下部分、海底にうっすら見える規則正しく並べられたブロックがそれだと思われます。まだ新しくて海藻や苔が生えていないため明るく目立つのかもしれませんが、かなり海底が近くなったようにも見えます。
試験開放中にマーカー付きのPEラインで測ってみたところ、中潮の満潮時で足元の水深が6m程度でした。浅いといえば浅いんですが思ったほど石の積み増しはされていないようなので、なんとかサビキ釣りが成立する水深かなと思います。
さしあたり今わかっている釣り場の状況は以上です。
釣り場を釣り場として残すために
昨今の全国的な釣り場事情から、マナー違反が横行すればここも釣り禁止になる危うさをはらんでいます。実際に試験開放中のマナーが悪ければ開放を取りやめる可能性があるという強い警告があります。
そうならないために、釣り場を釣り場として未来に残すために、釣り人はもちろんのこと釣り業界自体も意識して動いていかなければならない段階だと感じます。未来の釣り人たる子どもたちに釣り場を残さねばいけません。
少なくともゴミは持ち帰ろう。もうこんな光景は見たくない。
再開後はゴミ箱が設置されるという案内がありますが(※試験開放中は設置されません)、少なくとも車で来ている人はそれを使わずなるべく持ち帰りたいものです。もちろん強制はしませんが、私自身はそうするつもりです。
2016年前後だったと思いますが、南芦屋浜ベランダにほんの一時期だけ大型のゴミ箱が設置されていたことがありました。中央にあるトイレ付近がその設置場所で、ちょうど上の写真でゴミが積み上げられている場所だったと記憶しています。しかし残念ながら全くキャパ不足でたびたびゴミが溢れ、捨て方自体も酷いもんでした。夏場の悪臭も凄まじかった。そのせいかわずか1シーズンで撤去された経緯があります。
車で来てるならゴミ袋にまとめてポンと積むだけでしょ?持って帰ろうぜ!余裕があれば落ちてるゴミも無理ない範囲で拾ってちょい足ししよう。そして釣具屋やメーカーはもうちょっと釣りゴミの回収や省パッケージ化について本腰を入れてほしい。釣りゴミを持ってきたらポイント還元をするとか、長い目で見てお店の利益に繋げる方法もあると思う。
個人的な思いですが、ここ南芦屋浜ベランダは私が20年ぶりの釣りを再開した思い出深い場所です。さかのぼること10年前、2014年のことでした。これがまさにその瞬間のツイート。
ここで20年ぶりのサビキ釣りをしてカタクチイワシを釣り、マアジを釣り、タチウオを釣り、新しくサヨリ釣りを覚えました。汚くて死んだ海だと思っていた大阪湾が意外と海産資源豊富な海だということが分かりました。魚の美味しさを改めて知ることができました。
今こうしてこのブログを書いているのも南芦屋浜ベランダという釣り場があってこそ。混雑するから避ける人も多いと思いますが、私には大切で特別な場所です。
何十年先もここで釣りができるように、皆さんでちょっとずつ頑張りましょう。